親がいない、家がない、それよりも辛いこと~学校に行きたくないあなたへサヘル・ローズさんのメッセージ~

今年もまもなく夏休みが明けます。

先日の自殺総合対策推進センターの発表では、子どもの自殺のピークは夏休み後半とのデータが明らかになりました。この8月下旬から9月上旬にかけては子ども支援について大いに注意を要する期間です。

この数年様々な方から「命を絶つくらい辛いなら、学校に行かなくても大丈夫だよ」というメッセージが出されていて、私もそれに賛同する一人です。例えば学校に行けなくなった子たちを受け入れてくれる教育センターなどもありますし、私たちのような放課後施設もあります。他にも相談できる選択肢は色々とあるので、ぜひ子どもが一人で抱え込まないでほしいと思っています。

先般、タレントや女優として活躍をされているサヘル・ローズさんから、ハッとさせられるお話をお聞きしました。

○いじめを乗り越えたサヘル・ローズさんの決意

サヘルさんの人生は非常に壮絶なものでした。

イラン・イラク戦争のあった1985年に、サヘルさんはイランで生まれました。多くの子どもたちや大人が家や家族を奪われていた時代でした。サヘルさんも4歳の時に居場所を失い児童養護施設に行くことになります。施設での日々はとても孤独なものでした。誰かの愛情をいつも求め、感情を失うこともたびたびあったそうです。

サヘルさんは元々の名前や生年月日はいまだにわかりません。サヘル・ローズという名前はまだ当時大学生だった引き取り手、養母のフローラさんが7歳のサヘルさんにつけてくれたお名前です 。

高い身分でもあったフローラさんの家族はサヘルさんを養子にすることに反対、フローラさんとサヘルさんは家から追い出され、知り合いを頼って日本に来ることになりました。フローラさんは、本当はご家族に許してほしかったそうですが、叶わず日本に来るまでの飛行機の中でずっと泣いていたそうです。サヘルさんが8歳の時の出来事でした。

日本に移り住んだサヘルさんとフローラさんでしたが、残念ながら同居していた方にサヘルさんが虐待されるなどの目にあってしまい、家を出て公園の土管で寝るホームレス生活に陥ります。食べるものもない、家もない、小学生には相当きつかったと思います。その生活を救ってくれたのは学校の給食調理員の方でした。毎日同じ服を着ているサヘルさんに気付き、自分の家に住まわせてくれて、アパートのお世話までしてくれました。人生の恩人だそうです。

さらに小学6年生での転校を機に、学校でのひどいいじめが始まりました。イラン人や中東の人に対するイメージが悪かった時期であり、その後中学生になってもいじめはエスカレートし続けていきました。帰宅途中に泣くこともしょっちゅうでしたが、家では母を心配させまいと、笑顔で明るく振る舞う姿を演じていました。しかしその我慢も限界に近づきます。

ある時サヘルさんは学校を早退して部屋で自殺することを考えました。しかしその時に部屋に帰るとなぜか働きに出ているはずのフローラさんがいました。サヘルさんは「もう疲れた、、」と母に告げると、「私も、、、」と母も泣き始めたそうです。そこで母と抱き合うとフローラさんが思いのほか痩せこけていて、しわで手がゴワゴワになっていることに気づきました。そこでサヘルさんは思いました。「自分のために全てを捨てて生きた母がこんなに年老いている、そして自分はその母にまだ何も恩返しができていない。それなのに“死にたい”と考えて、なんて身勝手なんだ」と。そして「お母さんを幸せにするために生きたい」と生きる希望を取り戻します。その後も続くいじめをこの決意を支えに乗り切ったのです。そして高校から大学、そして声優の専門学校を卒業して、今のタレント・女優としての仕事に就くことになります。ちなみに「芝居をするならちゃんとした日本語を」と猛勉強したサヘルさんの日本語は本当に完璧で美しいものです。

○過酷な経験をしたサヘルさんが最も人生で辛かったこと

サヘルさんから話をお聞きして、最も印象に残った言葉がありました。

「児童養護施設、虐待、ホームレス、親がいない、お腹が減ったなど様々なとても辛い経験をしたのですが、最も辛かったのは『友達に無視されたこと』でした。」

改めて思い知らされました。クラスでいじめられる辛さ、そして毎日その場である学校に行く厳しい現実を。

このような生きづらさを抱えている子が世の中にはいます。そして多くの子が夏休み明けのこの時期に悩んで強く苦しんでいます。

サヘル・ローズさんからも思い悩む子どもたちにメッセージをいただきました。

生きづらさを感じている君へ。

居心地の悪さを感じているアナタへ。

大丈夫、何かをいきなり変える必要はない。

いま心が割れそうなら、

思いっきり泣き叫んでいい。

コップの中の水を捨ててしまっていい。

我慢をして自分を壊すより

自分の中でアナタに語りかけてくれている

小さな君自身を見つけてごらん。

泣きたい時は泣こう。

泣けばいい。思いっきり。

でもね、

ちゃんと最後は涙を拭いて空を見上げてごらん。

空って広いでしょう?

どこまでもどこまでも広い空。

それだけの人々が空の下にはいる。

つまり、人生は今が全てじゃない。

大逆転は何度でも起こせる。

大人になればなるほど人生は面白くなるものです。

中学時代は腐りきってる大人社会を睨んでいた私。

いまではあの時の痛みがいい財産になっています。

無駄な人生なんてない。

意味のない人なんていない。

みんな生まれてくる価値があって

みんな生きる権利を持っているんだ。

隣の芝生は、お隣のもの。

アナタは、

君は、

自分を信じてあげて前を見てごらん。

世の中にはまだ出会っていない

素敵な人で溢れてる。

まだ出会っていない奇跡の出会いを

ちゃんと掴みに行こう。

その一つがアナタと私の出会いかもしれないよ。

サヘル・ローズさんは「お母さんを幸せにする」という目的を持つことで、生きる希望を持つことができました。「誰かのために」という目的は非常に強いものです。そして誰でもいつかそれを持てる可能性があります。だから、悩む子がいたらぜひ諦めずに「いつか誰かのために」を求めて生き続けてほしいと思います。

学校以外にもたくさん生きる場があります、どうか思いつめないで相談できる人を探しましょう。サヘルさんにとっての給食調理員の女性のように、社会には必ず助けてくれる人がいます。

今年も夏休みが明けます。

どうかこの問題がいつかなくなることを心から願っています。