Yahoo!ニュース

【速報】日本代表ZETA敗れる、しかし日本勢史上最高の世界大会3位

平岩康佑eスポーツアナウンサー
円陣を組むZETA DIVISION(提供: RIOT GAMES)

VALORANTの世界大会「2022 VALORANT Champions Tour Stage 1 - Masters Reykjavik」の敗者トーナメント決勝戦が24日未明に行われ、日本代表のZETA DIVISIONがOptic Gaming(アメリカ)と戦い0−3で敗れた。しかし、日本代表として世界大会ベスト3は同ゲームでは初の快挙。深夜から未明にもかかわらず76万人以上の視聴者が見守り、都内のパブリックビューイング会場には多くのファンが集った。

掴みどころのないアメリカの強豪

試合に敗れた瞬間、ここまでチームを引っ張ってきたZETAのLAZは両手で顔を覆った。15日以来、実に9日ぶりの敗戦だった。

勝てば決勝戦、負ければ帰国という一戦、相手はアメリカ代表のOptic Gaming(以下: Optic)。日本でも人気のCall Of Duty部門は世界チャンピオンであり、チームとしての獲得賞金は3億円に迫る。

今大会初めての3本先取で行われた試合、相手が選んだマップ: ヘイブンからのスタート(それぞれのマップは13本先取、3つのマップを取れば勝利)。

ここまでの勢いそのままに、先制したのは日本代表のZETA DIVISION(以下: ZETA)だった。アメリカ代表Optic相手に5連取でスタートダッシュを決めると、前半を7-5のリードで終えた。

しかし、そこからOpticの反撃が始まる。エースのyay(イエイ)を中心に掴みどころのない流れるような攻撃で後半に入りすぐさま逆転。ZETAも取り返す激しい接戦で延長線に入るが、最後はOpticが15−13で勝ちきった。

OpticはZETAが想定できないようなタイミングで近接戦闘に有利なショットガンを持ち込むなど、自らの戦略でゲームをコントロールしていった。試合後のインタビューでもLAZは「Opticが強かった、相手のスタイルを崩さず貫いていくところに苦戦した」と振り返った。

アメリカの強豪Optic Gaming (提供: RIOT GAMES)
アメリカの強豪Optic Gaming (提供: RIOT GAMES)

2つ目のマップは日本代表の選んだフラクチャー。ZETAは前半こそとって取られての接戦で7−5で折り返したが、後半は防戦一方の展開で一本もゲームを取れずに6連取を許し、5-13で2連敗。2つめのマップにして、相手に追い込まれてしまう。

あとがなくなった日本代表のZETA。どこからでも選手が顔を出すような展開で翻弄される展開が続き、4−8とビハインドで後半を迎える。後半は日本代表CROWのクラッチ(逆転)などもあり、なんとか食らいつくZETA。しかし、精度の高い相手の射撃に阻まれ8−13で試合終了。0−3のストレート負けを喫し、長かったZETAの世界大会が終わった。

歴史を作ったXQQコーチと選手たち (提供: RIOT GAMES)
歴史を作ったXQQコーチと選手たち (提供: RIOT GAMES)

世界に証明した日本代表の実力

11日から始まった今大会、2週間に渡る日本代表ZETAの世界大会が終わりを告げた。日本勢初の決勝進出は逃したが、すべての下馬評を覆しての世界大会第3位だった。先日もお伝えしたが”最弱の地域”という汚名を返上するどころか、世界の強豪の仲間入りを果たす最高の結果となった。長らく苦しんできた日本のFPS業界に”世界3位”という素晴らしい結果をもたらし、大いなる可能性を示してくれた。

日本中を巻き込んだ#ZETAWIN

今回は、VALORANT大会史上最大のシンデレラストーリーを演じたということもあり世界中で多くの注目を得たが、日本国内でも地上波テレビなど多くのメディアで注目を浴びた。日本テレビやTBSは、情報番組でZETAの快進撃を報じ、ゲーム画面も日本中に流れた。また、試合中継で実況を務める岸大河さんが出演し見どころを伝えた。

会場となったアイスランドとは9時間の時差があるにも関わらずネット配信では常に数十万人が声援を送った。Twitterでも#ZETAWINが連日世界のトレンド入りを果たし、誤ったつづりの”ZEATWIN”がトレンド入りする珍事まで起きた。大変恐縮ではあるが、小生の記事もYahoo!ニュース上でゲーマーのみならず本当に多くの方に連日読んで頂いた。

世界で戦う選手たちに声援を

ZETAが世界大会を戦う姿を通じて、数年前には想像すら出来なかったゲームの盛り上がりを見せてくれた。オリンピックやサッカーワールドカップのように、日本中がひとつになるようなそんな気持ちになれたのではないだろうか。

そして、これを機に、ぜひ様々なタイトルの世界大会も応援してもらえればと思う。実は、来週にはスウェーデンでAPEX LEGENDSの世界大会が控えており、日本韓国地域の予選を勝ち抜いた10チームが初めて世界の強豪に挑む。同タイトルは、日韓が世界トップレベルの地域とも言われており活躍が期待される。

また、5月にはLeague of Legendsの世界大会"MSI 2022"が韓国で開催される。こちらには、前回の世界大会出場で日本勢初のグループステージ突破を果たしたDetonatioN FocusMeが出場する。

すでにプレイしている方々はもちろん、内容が分からなくてもぜひ一度、日本を背負って全力で戦う選手たちを見てほしい。私は、多くのプロゲーマーと普段から接するが、いまだに"ゲームに人生を捧げていること"に自信を持てない選手も存在する。どんな競技だろうと、努力して、世界に挑むことを応援しない理由があるだろうか。ゲームへの偏見なしに、日本代表を応援してもらえるならば、これほど嬉しいことはない。

初の海外渡航で高額賞金のかかった試合に臨む選手も少なくない (提供: RIOT GAMES)
初の海外渡航で高額賞金のかかった試合に臨む選手も少なくない (提供: RIOT GAMES)

ZETAが目指すもの

少し脱線してしまったが、ZETAは息付く間もなく、次回の世界大会Masters2、そしてその先の最終決戦VALORANT CHAMPIONS出場を目標に再始動する。試合後のインタビューでLAZは「正直、世界3位には満足はしていない、次回の目標は優勝」だと語った。これまでの社交辞令的な優勝というワードではなく、世界一が見えたからこその本気の一言に思えた。”世界のZETA”の挑戦はまだ始まったばかりだ。

11日からアイスランドで行われている世界大会もいよいよ明日25日が最終日、LOUD(ブラジル)とOptic(アメリカ)の世界一決定戦が行われる。

VALORANT(ヴァロラント)とは

アメリカのライアットゲームズによる基本無料のPC向けFPSタイトル。5対5でのシビアな撃ち合いを軸としたタクティカルシューターだが、そこに各エージェント(キャラクター)のアビリティが大きな影響を与える。それゆえ、戦略性の高さやチームワークが勝敗の鍵を握る。最新のデータでは月間1400万人のアクティブプレイヤーがおり、前回の世界大会の決勝戦は100万人以上の視聴者が見守った。

eスポーツアナウンサー

1987年東京生まれ、朝日放送にアナウンサーとして入社しプロ野球や女子プロゴルフなどの実況を担当。2017年には高校野球の実況が評価され、ANNアナウンサー賞 優秀賞を受賞。2018年に退社し、株式会社ODYSSEYを設立。アナウンサーのマネジメント事業やコンサルティング業を展開し、自らも日本最大級のeスポーツイベントRAGEやCRカップなどで実況を担当。テレビ朝日「ReALe」レギュラー、著書に「人生の公式ルートにとらわれない生き方」

平岩康佑の最近の記事