暗闇から世界が変わる~ダイアログ・イン・ザ・ダークとは?

「ダイアログ・イン・ザ・ダーク」略して、DIDというイベントがある。

1988年、ドイツで始まったソーシャル・エンタテイメントだ。

ドイツ人、ハイネッケという哲学博士が発案した。

「完璧な暗闇」の中で1時間程度の時間を数人のグループで過ごす。

そう、完璧な暗闇。

そんな場所はおそらく自然界にはないだろう。

大阪では現在、グランフロント大阪北館にある

積水ハウスの「住ムフムラボ」で開催されている。

先日、体験してきた。

「完璧な暗闇」では目が慣れることはない。

つまり、ずっと何も見えないままだ。

ではどうエンタテイメントして楽しめるのか?

案内役がいる。「暗闇のエキスパート」である、

視覚障碍者がアテンドとなってサポートしてくれる。

DIDは、視覚障碍者でないとできない、

全く新しい「職能・職域開発プロジェクト」でもあるのだ。

真っ暗闇の中でアテンドは、まるで見えているかのように動く。

靴を脱いで、その部屋に上がったのだが、

部屋の中に置いてあった丸テーブルを囲んで座った際、

お茶を「普通に」出してくれた。

帰り際、私の靴の前にきちんと誘導してくれた。

「ふうさん、もう少し左です」

「座って下さい」

言う通りに動いたら、そこに私の靴があった。

「見えているかのように」は、我々側の感想であり、

アテンドにはそれが普通のことなのだ。

そう、視覚障碍者には、暗闇が普通。

私は訊いてみた。

「どういう認識の仕方をしているのか?」

すると、「慣れです」と答えてくれたが、感心するしかなかった。

暗闇の中では声が頼りになる。

アテンドの指示、私のからの質問、一緒に参加したメンバーの言葉。

声によって相手の位置を確認しようとしたが、かなりずれていた。

距離感はまったく違ってた。

この暗闇で語りをしてみたいと思った。

短い文章や単語を参加者に投げかけることで、

聴いた者が、どんなイメージをしたかを知りたいと思った。

暗闇の中で発する言葉や声の力を知ってみたいと思った。

暗闇で響く声のパワーを知りたいと思った。

今回のテーマは「対話のある家」。

上がり框と縁側のある家のようだったが、

自分がどこを歩いているのか、結局、自分では認識できずじまいだった。

初めての体験。

暗闇の持つ可能性とでも言えばいいだろうか。

視覚が閉ざされた中で話す、触る、捉えようとすることで、

感覚・感性は研がれるだろう。

それは頭では解っていること。それなりの闇での経験もあるだろう。

しかし、完璧な暗闇ではそんな経験・理解もどこかへ飛んでしまう。

視覚に頼り過ぎている今だからこそ必要な場所だと思った。

暗闇で対話をすれば、互いの理解も深くなるかもしれない。

表情に惑わされず、表情や態度で訴えようとせず、

「理解してもらいたい」と「理解したい」が

素直に交換できるかもしれない。

そして何より、暗闇では我々が助けられる立場に変わる。

それを知ることが必要だ。

「暗闇から世界が変わる~ダイアログ・イン・ザ・ダーク・ジャパンの挑戦」

(志村真介著・講談社現代新書)という本も手に取ってもらいたい。

そして是非、体験してもらいたい。

ダイアログ・イン・ザ・ダーク。

その暗闇には、実は色んな光が差し込んでいるのだと思う。