「脱使い捨て」「脱炭素」へ向け、自治体は給水スポットをつくる
「脱使い捨て」の肝は「レデュース」
世界的にプラスチックの「脱使い捨て」が進んでいる。「脱炭素」の流れが「脱化石資源」を促した。フランスでは2020年2月に「無駄との闘いと循環経済に関する法」が成立。使い捨てプラスチックに関する規制を新法に一本化し、「2040年に全廃」「2030年までに使い捨てペットボトル半減」「2025年までにプラスチックごみ100%リサイクル」など野心的な目標を掲げる。
日本のプラごみ排出量は年間800万トンを超える。コロナ禍の巣ごもり需要で、家庭から出るプラごみは増えている。
また、日本のプラごみの処理方法にも課題がある。製品原料などリサイクルに回るのは25%にすぎない。焼却熱を発電などに使う「熱回収」が61%を占めるが、この方法は温室効果ガスを排出する。それ以外は埋め立てなどで処分されている。ただ、処分場の確保に頭を悩ませている自治体は少なくない。
企業は3Rのレデュース(削減)、リユース(再利用)、リサイクル(再生利用)のうち、リサイクルに軸を置くが、資源を使うという点では、根本的な解決策ではない。
肝心なのは「レデュース」「リユース」なのである。そんなことを考えるシンポジウムが開かれた。
「給水スポット」を広げ環境負荷の低減と魅力的なまちづくり
そうしたなか、3月18日、Refill Japanシンポジウム「もっとリフィルを!さらなる脱使い捨て社会へ!」が開催された。
「Refill Japan」(運営事務局:水Do !ネットワーク)は、2019年5月設立。誰もが気軽に喉を潤し、マイボトルに補充(リフィル)できる「給水スポット」を日本中に広げることで、環境負荷の低減と魅力的なまちづくりを推進してきた。
シンポジウムでは、基調講演「脱使い捨ての潮流とその先」(国立環境研究所/田崎智宏氏)、基調報告「Refill Japanの3年間と新たな展開」(水Do!ネットワーク事務局長/瀬口亮子氏)、全国各地のRefillの活動報告、給水スポット大賞2021の表彰などが行われた。また、パネルディスカッションでは、多様な立場の人々が「脱使い捨て」「脱炭素」社会に向けた意見交換を行った。
昭島市、名古屋市、大津市が受賞
自治体(小規模)部門最優秀賞は、東京都昭島市が受賞した。同市の水道部は深層地下水100%の「おいしい」水道水を供給。
環境部はプラスチックごみの削減に取り組む。給水スポットづくりのプロジェクトは、水道部と環境部の連携で行われ、「脱炭素」、「脱使い捨て」政策の一環として行われている。給水スポットは「ちかっぱー」という河童のキャラクターのデザインで多くの人に親しまれている。
自治体(大規模)部門最優秀賞は、名古屋市が受賞した。同市は木曽川の水を水源に使用し「おいしい水道水」と評判の地域だが、冷やした水道水のおいしさを体感してもらうため「金鯱水(きんこすい)」という給水器を2000年代後半から設置。
2020年夏からは、マイボトル対応型の給水器「名城金鯱水」を設置した。このプロジェクトは2R(リデュース・リユース)の推進とも連携している。名古屋市は、レジ袋有料化が法制化される以前から、全市で協定参加店による有料化を実施。環境事業のための還元基金をつくり、その一部が給水機の設置に使われた。さらに市内21か所に無料給水器を設置したマイボトル・マイカップキャンペーンも行っている。
審査員特別賞は、滋賀県の大津市企業局が受賞した。2021年9月、琵琶湖畔のなぎさ公園に給水スポットを設置。デザイン性に優れ、さまざまな公園利用者に数多く利用されている。数々の動画を制作する意欲的な情報発信も評価された。
給水スポットにとどまらないRefill(詰め替え)活動へ
Refill Japanはこの3年間、給水スポットを広げる活動、マイボトルを持参し水道水を上手に飲む活動の普及啓発を行ってきた。
おさらいすると、ペットボトル等の使い捨て容器に入った飲み物は、製造・輸送・冷蔵販売・リサイクルといった製品の一生で多くの資源を使い、CO2を排出する。また、一部のポイ捨てされたペットボトル等のプラスチックごみは、山、川、海を汚染し、生態系を脅かす。こうしたことにRefill Japanは「レデュース」「リユース」の面から取り組んできた。
来年度から給水スポットにとどまらず、Refill(詰め替え)活動を広げていく。マイパッケージを持参した食品購入、地域リフィルの拡大、リフィル推進宣言自治体の広がりなどを行っていく予定だ。