【検証】和歌山市が断水回避。よかった?悪かった?断水は全国で起きる?

和歌山市企業局の「断水のお知らせ」(同局WEBサイトより)

漏水発見、断水決定、断水回避までの流れをふりかえる

 和歌山市が漏水していた配水管を交換するために計画していた「長期断水」を回避した。

 和歌山市民に話を聞くと「断水しなくてよかった」という声が多いが、「この機会に老朽化している配水管を交換したほうがよかったのではないか」という人も少なからずいた。

 尾花正啓市長は「断水を回避できたとはいえ、市民の皆さまには多大なご迷惑をおかけした」と謝罪したうえで、管路の老朽化や漏水への対策として、管路破損箇所の探索技術を向上すること、優先順位を決めた老朽管の更新などを上げた。

 断水しなかったことの良し悪しを論じるときに、短期的な視点と長期的な視点がある。短期的に見れば、断水回避は市民生活にとって好ましい。一方、長期的に見ると水道持続性が危ういという実態が浮かび上がる。そして、これは和歌山市に限ったことではない。

 まずは、今回の漏水発見、断水決定、断水回避までをふりかえってみたい。

 1月8日 漏水の発見

 和歌山市内、国道24号線の直下に埋設された水道管からの漏水判明。漏水管は直径800ミリの配水管とされた。

水道管の種類(厚生労働省資料)
水道管の種類(厚生労働省資料)

 上の図で見るとおり、水道管は役割ごとに名前が違う。

 導水管…原水(河川水や地下水)を浄水場まで送る管

 送水管…浄水場できれいになった水道水を配水場まで送る管

 配水管…配水場から各家庭に水道水を送る管。一般的に公道の下に埋められている

 給水管…配水管から各家庭に水道水を送る管

 配水管はメインで水を送る基幹(口径が太い)と、そこから分かれる枝管(口径が細い)に分類される。和歌山市で漏水していると見られた配水管は、直径800ミリの口径の太い基幹管路で1962年敷設された。敷設から58年が経過し老朽化が進んでいた。

 1月16日午後5時 断水の発表

 直径800ミリの配水管の修繕方法には、断水させないまま工事を行う方法と、断水させて行う工事がある。一般的に前者は工期が長くコスト高、後者は工期が短くコスト安。今回は、漏水によって道路陥没が起こる可能性があると考え、断水し、開削による緊急工事を行うこととした。

 1月19日夜から22日夜の3日間の断水を、HP、SNS、郵便で周知開始した。和歌山市企業局のHPには

「国道24号花山交差点内に埋設されている基幹配水管から漏水しています。交通量が多いこの交差点で、今後漏水量が増える可能性があること、水圧で地盤が崩壊することで道路が陥没するおそれがあることから、やむを得ず断水を行い修繕工事をすることにしました。」

 とある。

 これによって影響を受けるのは、市全体の5分の1にあたる約3万5千世帯(約8万人)。市民は飲料水を買い求めスーパーなどに殺到。飲食店や宿泊施設も相次ぎ休業を決めるなど混乱が広がった。年配者のなかには「3日間では準備ができない。発表から実施までが短い」という声もあった。

 一方、和歌山市企業局では、断水中の応援給水を、和歌山県内、大阪府、奈良県の水道事業者に要請した。断水に備えた市民の中には給水車が用意されることを知らず、「3日間すべて自前で水を確保しなければならない」と考えていた人もいた。

 1月17日午後1時 市長を本部長とする対策本部を設置

 断水に備え、医療基幹に給水車を常時配備を行うため、給水車の応援要請を拡大した。

 1月18日 地下を探索

 試験掘削や路面音聴調査により、道路の下で、幅約1.9メートル、長さ約1メートル四方に2カ所の空洞がある可能性を確認。19日午後10時から予定していた道路の規制を早めた。

 同時に、該当する直径約800ミリの配水管から、150ミリの細い管が枝分かれしていることが判明。

 

 1月19日午後7時 漏水現場の道路開削開始

 現場の掘削を始めたところ、800ミリの配水管ではなく、150ミリの細い管での漏水が判明。

 1月20日午前2時 修繕工事が終了

 

 1月20日午前5時 断水取りやめを発表

 断水を回避したことで市民には安堵の気持ちが広がった。一方で、水道管が老朽化しているという問題は放置されたままだった。それが、「この機会に老朽化している配水管を交換したほうがよかったのではないか」という声につながっているのだろう。

 だが、これは和歌山市だけの問題ではない。今回の件は、全国の自治体で起こりうる。理由は「老朽化した水道管が放置されている」「水道管の図面をもっていない自治体がある」「水道技術の継承ができていない」の3点だ。

老朽化した水道管が放置されている

 老朽化した水道管の破裂事故は、毎年1000件を超えている。多くは細い配水管、給水管で起きているので、私たちが不便を感じることなく修繕されているのだが、今回のような基幹管路で起きる可能性はある。

 水道は高度経済成長期を中心に整備され、水道管が古くなっている。法定耐用年数40年を経過した管路(経年化管路)は15超%あり、法定耐用年数の1.5倍を経過した管路(老朽化管路)も年々増えている。

 本来、和歌山市で漏水が疑われた800ミリの配水管は、敷設されてから58年が経過した老朽化管路である。重要な基幹管路なのだから、すでに交換されているか、重点的に点検されているべきだった。

 理由としてあげられているのが財政難である。

 生活用水使用量の減少、人口減少によって水道水の使用量が減り、料金収入が減少している。

 それに加えて地方自治体は公共事業を運営するための資金を、企業債(借金)を発行して賄う。2016年の発行額は全国で2兆3000億円で下水道事業が49%、水道事業が18%。借金が経営を圧迫している。

 ただし、水が何日も止まるというのは命に関わることだ。それは今回、医療機関専用に給水車を配置されたことからもわかる。財政難で片付けず、管路の重要度を見定めて、更新計画を進めるべきだった。

水道管の図面をもっていない自治体がある

 今回、漏水していたのは、当初疑われた800ミリの配水管ではなく、そこから枝分かれした150ミリの管だった。この細い管の存在がわかったのが、断水決定より後であることに、違和感を覚える読者は多いだろう。

 じつは、敷設されたすべての水道管を把握していない自治体がある。

 厚生労働省の調査では、全国の38パーセントの自治体が正確な図面をもっていない。自治体の行政文書保存の期限を過ぎて捨てられてしまったり、小規模事業者では「図面はベテランの脳内にある」というところもある。

 基盤強化を掲げた改正水道法では資産管理の徹底がうたわれているが、小規模事業者では日々の業務に追われて、台帳整備に手が回らない。民間のコンサルタントの活用がうながされているが、事業が赤字で費用の捻出が難しいケースもある。そのため基盤強化の第一歩が踏み出せない。

水道技術の継承ができていない

 和歌山市の漏水発見から、断水の決定、断水の中止に至るプロセスのなかで、疑問に感じることがある。

 まず、これまで点検がどのような体制で行われてきたのか。

 漏水している管をなぜ800ミリの管と思い込んでしまったのか。

 断水決定の前に確かめることはできなかったのか、などである。

 もちろん道路陥没などの恐れもあり、緊急事態の中の行動であり、経験もなかったのであれば、しかたがないと言えるかもしれない。今回のことをつまびらかにし、市民や他の自治体と情報共有すべきだろう。今後同様なことが起きた場合、どのような対処法がよいのかの学びになる。

 一般論として、水道技術の継承は危うい。

 1980年に全国に7万6000人いた水道職員は、2014年には4万7000人になった。これにともない水道事業から専門性の高い技術が失われつつある。たとえば、漏水管を修繕し、有収率を上げようという意識や漏水箇所を見つける技術にも水道事業者によってばらつきがあるし、今回のような緊急時、災害時などの深刻な事態に即応できない状況も生まれている。

 水道専門の職員をおかず、異職種間の人事異動を実施している事業体では、問題の先送りという事態も起きている。

 人口が減り、水道施設がボロボロになっていくという事実は変わらない。

 それでも、市民は水が止まったら生活することができないのである。水道事業者は責任と誇りをもって仕事をして欲しい。

現状を市民と共有する

 本来なら「自分のまちの水道をどうするか」というビジョンを立て、行動していくことが大切だ。

 まちの人口減少に合わせて、施設・設備を再度計画し、更新や長寿命化をはじめとする経営の「見通し」を立てることが急務だ。

 そのためにも水道の現状をいかに地域で共有するかが重要になる。目先の断水が回避されたことに安堵すべきではない。自分の住むまちの将来をイメージし、どのようなサービスが必要か、どのくらいの負担が可能かを、行政と市民が議論していくべきだ。