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断水時に水をいかに確保するか、いかに利用するか

橋本淳司水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表
フリーイラスト(いらすとや)を著者が構成

断水時の水確保

 台風15号の影響で、千葉県など各地で断水が続いている。

 今回の断水の原因は停電だ。停電によって浄水場が作動しなくなる、ポンプが動かなくなり、水が汲めなくなったり送れなくなったりする。

 マンションなどの集合住宅の場合、水道の給水管から屋上などにある貯水槽に水をポンプアップするが、それが停電で止まっている。さらにエレベーターが止まってしまうため、上層階にお住いの場合、水を買いに行くのも買った水を家まで運ぶのも困難になる。各家庭用の電源と共用スペースの電源が異なるため、家の電気はついても、水道は止まっているというケースもある。

画像制作:Yahoo! JAPAN 原案:橋本淳司
画像制作:Yahoo! JAPAN 原案:橋本淳司

水道局の給水が基本

 水確保の基本は水道局の給水。まず、水道局のHPなどで給水に関する情報を確認する。

 (参考)千葉県内の各水道事業の情報

 

 給水時にはポリタンクを利用するのがよい。容量10リットルのタイプを両手にもつと運びやすい。キャリーバックに入れて運ぶこともできる。非常時なのでポリタンクがない場合は、2リットルのペットボトルなど、フタの閉まる容器であればよい。こちらもキャリーバックに入れると便利だ。

 給水したら、タグやセロテープなどを容器に貼り付け、いつ給水したものか、マジックペンなどで書いておく。暗く涼しい場所におけば3日間は飲用できる。ただし、直接口につけると雑菌が混入するので注意。

雨水を生活用水(飲用ではない)に活用する

 降り始めの雨は空気中や屋根の汚れを含むが、30分程度降り続いた雨の水質は蒸留水に近い。雨樋からバケツに入れたり、直接タライやポリバケツなどで雨水を集め、トイレを流す、洗濯、体をふく、食器を洗う水などに使う。

きれいな湧水を生活用水(飲用ではない)に活用する

 きれいな湧水の見分け方は以下の図のとおり。

きれいな水の見分け方(拙著『おいしい水 きれいな水』(日本実業出版社)
きれいな水の見分け方(拙著『おいしい水 きれいな水』(日本実業出版社)

 しかし、きれいに見えても雑菌などに汚染されている場合があるので、沸騰消毒や簡易殺菌を行う。

●簡易ろ過する

簡易的な浄水装置の作り方(拙著『おいしい水 きれいな水』(日本実業出版社)
簡易的な浄水装置の作り方(拙著『おいしい水 きれいな水』(日本実業出版社)

1)図の要領で自家製の浄水器をつくる。

2)浄水器でろ過し、簡易ろ過水をつくる。

3)自家製浄水器は2つつくり、2段に組み合わせてつかう。

●簡易消毒する

 簡易ろ過では、水に溶けているものは除けないし、細菌除去も不完全だ。そこで最後に浄水場で行っているような次亜塩素酸ナトリウムによる滅菌を行う。

簡易殺菌の方法(著者が商品写真、フリーイラスト(ポリタンク、いらすとや)などから作成)
簡易殺菌の方法(著者が商品写真、フリーイラスト(ポリタンク、いらすとや)などから作成)

1)簡易ろ過した水を、別に用意したペットボトル(2リットル)3本に詰める。

2)ペットボトル3本のうちの1本に塩素系漂白剤(浄水場での殺菌剤と同じ成分)を2、3滴入れる。塩素系漂白剤は「ブリーチ」「ハイター」などがよい。「キッチンハイター」は洗剤が入っているので使用不可。

3)塩素系漂白剤を入れたペットボトル水を、ほかの2本のペットボトル水と混ぜて塩素をうすめる。漂白剤の薄め方に注意。

節水しながら健康状態を保つ

 人は生きていくのに1日2リットルの水が必要だ。暑い日にはそれ以上の水が必要になる。飲用の水3リットルをまずは確保し、それ以外の水使用を工夫する。浄水施設によっては貯水量が少なくなっているケースがある。節水方法を以下にまとめる。

<トイレの節水>  

・断水していても下水道が壊れていなければ手動で流せる。バケツ7リットル程度の水で流す。

・ダンボールに砂、おがくずなどを入れて簡易トイレをつくれば水を節約できる

<手洗いの節水>

1)爪をきる

2)指の間やシワについた泥を落とす

3)ジョーロなどで水をかける

4)石けんで入念に手を洗う

5)ジョーロなどで水をかけてすすぐ

<口の中のケアで感染症や誤嚥性肺炎を予防>

1)歯ブラシで歯や歯間をきれいに

2)歯ブラシの汚れはティッシュで拭き取る

3)少量の水で2、3回うがい

4)歯ブラシがない場合は、清潔なタオルで歯垢を拭き取り、うがい

<熱中症対策>

1)日陰で風通しのよい場所にいる

2)体育館の窓に網戸がなくて開放できない場合は、虫が入ってこないよう網目のものをつける

3)水を30分~1時間に1回補給

<屋外作業時の熱中症対策>

※断水時には極力避けるべきだが、必要に迫られるケースもあるだろう。

1)帽子、タオル、日焼け止めクリームなどで陽射しを避ける

2)作業開始前には水を飲み、ストレッチを行う

3)速乾性のタオルを水で濡らし首に巻く(乾きにくいタオルだと冷えすぎることがある)

4)30分ごとにアラームをならし、水分補給、塩分補給

5)体調が悪い人は弱音をはく、がんばりすぎない

6)周囲の体調の悪い人のサインを見逃さない

7)ほてり、だるさ、頭痛を感じたら、日陰で風通しのよい場所へ。衣服をゆるめる。首の後ろ、腕や脚の付け根を冷やす

<経口補水液の作り方>

 水1リットル、砂糖40グラム、塩3グラムの割合で混ぜる

<洗濯>

 洗濯板など使って洗濯する

<食器洗>

 食器は汚さないようにラップをしてつかう。紙皿でもよい。

<バケツ1杯(約7リットル)で体を洗う>

1)頭からスタートする。バケツから小さな容器(ペットボトルを半分に切ったものなどを活用)でお湯を汲み、頭を濡らす。このとき頭の下に洗面器をおき、流したお湯が洗面器に入るようにする。洗面器が流したお湯でいっぱいになったら、洗面器にたまったお湯をすくって頭を濡らす。そのお湯も洗面器に受ける。

2)シャンプーで頭を洗い、洗面器にたまったお湯を容器にくんで、すすぐ。ある程度すすげたら、仕上げにバケツのきれいなお湯ですすぐ。

3)バケツから容器でお湯を汲み体を洗い、流す。

 最後に、みなさまのご健康と、一刻も早い復旧をお祈りします。

水ジャーナリスト。アクアスフィア・水教育研究所代表

水問題やその解決方法を調査し、情報発信を行う。また、学校、自治体、企業などと連携し、水をテーマにした探究的な学びを行う。社会課題の解決に貢献した書き手として「Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2019」受賞。現在、武蔵野大学客員教授、東京財団政策研究所「未来の水ビジョン」プログラム研究主幹、NPO法人地域水道支援センター理事。著書に『水辺のワンダー〜世界を歩いて未来を考えた』(文研出版)、『水道民営化で水はどうなる』(岩波書店)、『67億人の水』(日本経済新聞出版社)、『日本の地下水が危ない』(幻冬舎新書)、『100年後の水を守る〜水ジャーナリストの20年』(文研出版)などがある。

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