水出し飲料は水の違いで味が変わり、水質は水出し飲料で変わる

クーラーポットで水出し麦茶をつくる(著者撮影)

水の硬度による違いを比較する

 夏になるとクーラーポット、水筒などに、「水出し飲料」を入れて飲む人も多いだろう。水出し飲料は使用する水によって味に差が出る。そこで定番とも言える「麦茶」で考えてみた。

 水道水、水道水(浄水器使用)、ペットボトル水(軟水)、ペットボトル水(硬水)を使って、水出し麦茶をつくってみた。水温はすべて20℃に揃え、つくり方は水出し麦茶の指定(1リットルの水を用意し、水出し麦茶を1時間入れたらできあがり)に従った。

4つの水でつくった麦茶
4つの水でつくった麦茶

 まず、硬度という視点で見てみよう。硬度とは水のなかのカルシウムイオン、マグネシウムイオンの量を示したもの。今回使った水の硬度は、

  水道水         55ミリグラム/リットル

  水道水(浄水器使用)  55ミリグラム/リットル

  ペットボトル水(軟水) 23ミリグラム/リットル

  ペットボトル水(硬水) 300ミリグラム/リットル

 硬水の場合、麦茶の色が少し濃くなった。また、できあがってから時間がたつと表面に薄い膜が張った。

硬水でつくった麦茶の表面の膜(著者撮影)
硬水でつくった麦茶の表面の膜(著者撮影)

 これは、お茶の成分であるタンニンが、硬水に多く含まれるカルシウムやマグネシウムと結合したためだろう。(※水出し飲料ではないが、カルピスを硬度の高い水で割った場合も、カルピスの成分とカルシウムやマグネシウムが結合して、沈殿物が生じる場合がある。)

 味については個人差はあるものの、実験の参加者10人のうち7人が苦みや渋みを感じた。

 水道水でもペットボトル水でも、軟水の場合は、こうした変化が起きなかった。日本の水道水は硬度30~80ミリグラム/リットルの軟水が多い。軟水と一言でいっても、厳密には硬度はさまざまで、住んでいる地域によって異なる。

 水道水、水道水(浄水器使用)、ペットボトル水(軟水)でつくった麦茶の味については、参加者10人のうち9人が「差異が感じられない」と回答し、1名が「軟水でつくった麦茶は濃く感じる」と回答した。硬度の低い水はお茶の成分を溶かしやすいとされるので、この人はそれを感じ取ったのかもしれない。

水出し麦茶は塩素を除去する

 水道水の中には、微量の塩素が含まれる。これは水道水を各家庭まで安全に届けるために必要なことだ。水道水は、衛生面から塩素による消毒を行い、蛇口での残留塩素濃度を0.15ミリグラム/リットル以上保持することが水道法で定められている。

 原水となる川の汚染の激しかった時代には大量の塩素が使われていたが、水質が回復し、浄水技術も高度になった現代では塩素の使用量は少なくなっている。東京都水道局では「おいしさに関する水質目標」を独自に定め、残留塩素濃度を必要最低限の0.15ミリグラム/リットル以上0.45ミリグラム/リットル以下としている。

 今回使用した水道水の残留塩素濃度は、

  水道水         0.4ミリグラム/リットル

  水道水(浄水器使用)  0ミリグラム/リットル

 一般的に、塩素はお茶の成分のビタミンと反応する。水の中に大量の塩素が入っていれば、お茶の味にあきらかな変化が出る。塩素がお茶の香りやあまみを減らしてしまうので、塩素を抜いた水を使うとよいとされる。

 別の言い方をすれば、水出し麦茶のパックを入れると塩素は中和できる。

 今回、水道水でつくった麦茶の残留塩素濃度を測定してみると0になっていた。それも、ひとつまみ程度の量の麦茶をコップに入れると10秒後に中和され、残留塩素濃度は0になっていた。これはお茶に含まれるカテキンの還元作用が、塩素の酸化作用と反応したためだ。

硬度や残留塩素濃度を検査する(撮影/著者)
硬度や残留塩素濃度を検査する(撮影/著者)

 同じようにレモンの輪切りを1枚クーラーポットに入れるだけでも、ビタミンCの還元作用が、塩素の酸化作用と反応し、分解される。カフェで水にレモンの輪切りが入っていることがあるが、これはビタミンCが塩素を除去する効果と、レモンの風味で爽快感を与える効果を狙ったものだろう。

 参加者10名に水道水と水道水(浄水器使用)でつくった麦茶の味を比べてもらうと、8名は「差異を感じられない」、2名は「浄水器を通したほうがあまみを感じられる」という意見だった。

 水道水、水道水(浄水器使用)、ペットボトル水(軟水)、ペットボトル水(硬水)で水出し麦茶をつくってみたわけだが、それぞれの水質によって若干の味の差は出る。

 ただ、コストパフォーマンスという視点で見ると、水道水がいちばん高い。

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 クーラーポットや水筒に水道水を入れ、水出し麦茶を入れれば塩素も取り除ける。そのまま数時間冷やして「おいしく感じる温度(7~12度)」にするといいだろう。

お金をかけずにおいしくするには

 最後に、お金をかけずに水道をおいしくする方法について考えみよう。

 塩素の臭いが気になる場合、やかんなどで沸騰させれば塩素は揮発する。ただ、水を「おいしく」する成分である酸素、二酸化炭素も揮発してしまう。湯冷ましがおいしくないのはこのためだ。

 そこで湯冷ましをクーラーポットに移し、冷蔵庫で冷やす。すると二酸化炭素が溶け込む。

 湯冷ましをそのまま置いておいても二酸化炭素は自然に溶け込むが、二酸化炭素は水温が低いほどよく溶ける。だから冷蔵庫で一晩寝かしているうちに口当たりのよい水ができる。

 夜寝る前に湯冷ましをクーラーポットや水筒に入れ、そこに水出し麦茶を入れる。

 好みにもよるが、塩をひとつまみ入れてもよいだろう。その量は、水の0.1パーセント程度。水筒やクーラーポットに1リットルの水が入るなら、塩は1グラム。

 熱中症対策では水分+ミネラル+塩分を摂ることが大事。

 体の熱を冷ます効果が期待でき、ミネラルを含む麦茶は夏におすすめの飲料水。

 これで翌日の外出準備は万全だ。

 <まとめ>

 1)クーラーポットや水筒を用意する

 2)水道水を入れる

 3)水出し麦茶を入れる

   ※水の量や、水出し麦茶を入れておく時間は、水出し麦茶の説明書に従う

 4)冷蔵庫で一晩冷やす

 5)1日で飲みきる

 (水道水の塩素が気になるなら)

 ・上記の2)に湯冷ましを使う(水道水を沸騰させたのちに冷ます)

 (熱中症対策として)

 ・水1リットル当り1グラム程度の塩を加える(味の好みがあるので注意)