知ってますか?ペットボトル水と水道水 ーここが同じ!ここが違う!ー

違いをわかって賢く選ぶ(イメージ/フリーイラストを著者が加工)

インスタ映えするボトルと給水スポットはどちらがクールか

 若者を中心に「インスタ映え」するボトルに入った飲料水が流行っている。ボトルを片手にまちを歩く姿もいまでは珍しくない。さまざまな飲料があるなかでペットボトル水(ミネラルウォーター)は好調だ。一般社団法人日本ミネラルウォーター協会によると、2018年のミネラルウォーター国内生産量・輸入量は合計400万957キロリットルで過去最高、日本人1人当たり31.7リットル消費している。

 一方で、水道水を水筒などに入れて飲む動きにも注目が集まる。

 5月29日、「Refile Japan」(主催:水Do!(スイ・ドゥ)ネットワーク)が立ち上がった。まちなかに給水スポットを設置してペットボトルなど使い捨て容器入り飲料の利用を減らし、環境負荷の少ないまちづくりを推進する。キックオフには日本初となる水道直結式の仮設給水装置も登場した。この夏、各地のイベント会場で目にすることになるだろう。

蛇口直結式の仮設給水機(撮影/著者)
蛇口直結式の仮設給水機(撮影/著者)

 給水スポットをつくる動きは少しずつ広がりを見せている。プラスチックペットボトルの利用を減らし、プラスチック廃棄物の削減を促す目的だ。

 だが多くの人は、ペットボトル水と水道水をイメージで選択しているのかもしれない。いったいどこが同じで、どこが違うのだろうか。

 味を決める要素である硬度、温度、殺菌方法、価格、エネルギー使用量などの視点から考えてみたい。

水道水もペットボトル水も硬度は通過した土壌で決まる

 水の味を決める要素の1つが硬度だ。これはミネラルがどれくらい溶けているかを表したもの。溶け具合は、水がどのような土壌を、どのようなスピードで通ってきたかで決まる。

硬度の違いができる理由「水の科学」(橋本淳司著/ベレ出版)
硬度の違いができる理由「水の科学」(橋本淳司著/ベレ出版)

 たとえば、ヨーロッパの大地は、多くが石灰岩層からなり、水がなだらかな地形をゆっくり流れるあいだに、たくさんのミネラルを溶かす。一方、火山国である日本の大地は多くが火成岩で、まして山から海岸までの傾斜が大きいため水の流れるスピードも速く、ミネラルが溶けにくい。だから一般的に、ヨーロッパの水はミネラルの多い硬水が多く、日本の水はミネラルの少ない軟水が多い。

 水に溶けているミネラルのうち、カルシウムとマグネシウムの量を数値化したものが硬度。数値が高いものを硬水といい、低いものを軟水というが、その基準は図のようにさまざまある。

硬水・軟水の基準はさまざま(「おいしい水きれいな水」(橋本淳司著/日本実業出版社)
硬水・軟水の基準はさまざま(「おいしい水きれいな水」(橋本淳司著/日本実業出版社)

 日本の水は7割程度が硬度50以下に入る。だから多くの地域の水道水も国産のペットボトル水も軟水が多い。とはいえ、硬度は水が通ってきた土壌で決まるので、場所によっては硬水も湧き出す。

 水道水の原水の場合、石灰岩層など通過すれば硬度の高い水となる。サンゴ礁の島の地下水は硬度が高い。ただ、水道水については、硬度300以上の水は、法律で供給できないことになっている。なぜなら家庭でせっけんを使うときに泡立ちにくくなるから。原水の硬度が高い場合、硬度を低くする装置で処理してから供給される場合もある。

 ペットボトル水の場合も、通過した土壌によって硬度が変わるという点では、水道水の原水と同じ。たとえばフランス産のコントレックスは硬度1500、ヴィッテルは硬度300だ。だが、日本で最も売れているボルヴィックは硬度50なので、このくらいの硬度を日本人が好むのかもしれない。

 なかには「超軟水」の「ミネラルウォーター」というものもある。これは厳密に言えば、「ミネラルウォーターを名乗ってはいるけれど、実際にはミネラルをほとんど含まない水」ということになる。

価格は水道水のほうが安い

 水道水とペットボトル水では価格がまったく違う。総務省の「小売物価統計調査」(2018年)によると、ペットボトル水2リットルの平均価格は99円だった。1日に必要な飲み水は2リットルとされるから、これをペットボトル水でまかなうと、1日99円、1か月2970円、年間3万6135円となる。

 一方、水道料金は各水道事業者によって違うが、大阪市を例に考えてみよう。大阪市水道局は1リットルは0.1円と公表している。飲み水を水道水でまかなった場合、1日0.2円、1か月3円、年間73円になる。

 このケースで比較すると、ペットボトル水の値段は水道水の495倍だ。

管理している役所、法律、基準が違う

 ペットボトル水は農林水産省が食品衛生法という法律で管理している。

 農林水産省は1990年に「ミネラルウォーター類の品質表示ガイドライン」を発表した。それによると、日本のミネラルウォーター類は、「ナチュラルウォーター」「ナチュラルミネラルウォーター」「ミネラルウォーター」「ボトルドウォーター」の4種類に分けられる。

・ナチュラルウォーター……特定の水源から取水した地下水を、加熱やろ過で殺菌や除菌をしたもの。自然水ではあるがミネラル成分はほとんど含まれていない

・ナチュラルミネラルウォーター……ナチュラルウォーターのうちミネラルが地下で自然に溶け込んだもの

・ミネラルウォーター……ナチュラルミネラルウォーターと同じ地下水を、加熱やろ過で殺菌や除菌をした後、複数の地下水を混ぜたり、人工的にミネラルに加えたもの

・ボトルドウォーター……水道水や河川水、蒸留水、純水などの飲用に適した水を原料としたもの

 多くの人が考える「ミネラルウォーター」のイメージに近いのはナチュラルミネラルウォーターだろう。ほとんどミネラルが含まれていない「ナチュラルウォーター」、いくつかの水をブレンドしたり、ミネラルを人工的に添加した「ミネラルウォーター」、水道水や河川水、蒸留水、純水などの飲用に適した水をボトリングした「ボトルドウォーター」もミネラルウォーター類である。

 一方、水道水は、厚生労働省が水道法で管理している。

 水道水は水道法の「水質基準に関する省令」によって51の水質基準項目がある。ミネラルウォーターの基準を定めているのは前述したように食品衛生法で、清涼飲料水という大分類の下に入っており39の水質基準項目がある。それぞれに共通する基準値7項目を比較してみると水道水のほうが厳しい。

水道水とペットボトル水の水質基準(著者作成)
水道水とペットボトル水の水質基準(著者作成)

水道水は塩素殺菌、ペットボトル水の殺菌方法は数種類

 水道水の殺菌に塩素が使われている。これがペットボトル水を選ぶ要因になっていることもある。

 20世紀初頭、塩素による水の殺菌方法が開発され、素早く大量の水を供給できるようになった。塩素は水に入ると、さまざまな化学変化の結果、単体の酸素を放出する。単体の酸素は酸化力が強く、それが殺菌に利用される。

 河川の汚れのひどかった米国では、水を殺菌するために積極的に塩素をいれた。以来、「塩素が入っているから安全」という考えが広がった。日本でも、個別の浄水場では明治時代から塩素消毒が始められたが、国として使用が義務づけられたのは1957年の水道法制定からだ。

 塩素消毒の結果、水道水を媒介とする消化器系伝染病は激減し、公衆衛生は向上した。厚生省(当時)は高度経済成長期の産業の発達や生活の変化にともなうさまざまな水質汚染に対し、塩素消毒を強化し、水道水の水質基準を見直してきた。

 しかし、原水に含まれている有機質の一種であるフミン質などと遊離塩素が反応してできるトリハロメタンや、そのほかの有機塩素化合物が、発癌性物質として問題になり、使用量は抑制されるようになった。現在では河川環境が回復していること、浄水方法が発達したことなどにより、使用される塩素は微量になっている。

 一方、ミネラルウォーターは殺菌方法によって4つに分けられている。

・無殺菌(殺菌処理も除菌処理もせず、地下の水源から空気に触れることなくボトリングする)

・フィルター除菌(セラミックや中空糸膜などのろ過フィルターで除菌処理)

・非加熱殺菌(オゾンや紫外線殺菌)

・加熱殺菌

 ヨーロッパではナチュラルミネラルウォーターは無殺菌と決まっている。その理由は、水に含まれるミネラルが減少したり、おいしい水に欠かせない酸素や二酸化炭素が失われることなく、自然に近いおいしさが味わえるから。

 一方、日本では、上記のような何らかの殺菌が行われるのが一般的だ。

水の温度は提供環境に左右される

 水の味を決める要因の1つの温度だ。

 軟水であれば、夏は7~12度、冬は15~18度、硬水であれば夏は7~10度、冬は12~15度がおいしく感じるとされている。

 ペットボトル水は自動販売機やコンビニの冷蔵庫に入っているので常においしい温度に管理されている。

 一方、水道水は夏場は気温の影響でぬるく感じる。そのような水でも冷蔵庫で冷やせばおいしく感じる。ただ、冷蔵庫内は1~5度に設定されているから、長時間入れっぱなしにすると冷えすぎてしまう。冷蔵庫から出して少し置いてから飲むと、よりおいしいと感じる水を飲むことができる。

エネルギーはどのくらい使われているか

 現在の水道システムには、多くのエネルギーが使用されている。水源からポンプで取水し浄水場まで導水する、浄水場で浄水処理する、ポンプで各家庭まで送水・配水する過程で使われる電力は、年間約80億キロワット/時。

 おいしい水をつくるために、東京や大阪では高度浄水処理を行えば、オゾン殺菌などに、より多くのエネルギーを使う。

 また、ポンプで水を送る時にもエネルギーが必要だ。アップダウンの激しい地形で、低い場所から高い場所へ水を送ったりするとエネルギーはよりかかる。

 ペットボトル水はより多くのエネルギーを使う。

 ペットボトル水ができる過程を考えてみると、水道水よりも手間がかかっている。具体的に言えば、容器を製造する、詰める、運送する(外国産ならより多い)、冷やして販売する、ごみを処理またはリサイクルするなどのプロセスのなかで、水道水に比べて大量のエネルギーを使う。外国産のペットボトルに入ったミネラルウォーターを飲んだ場合と、水道水を水筒に入れて飲んだ場合のCO2排出量は約50倍ある(東京大学・平尾研究室による試算/出所:水Do!(スイ・ドゥ)ネットワークWEBサイト)。

 さらに、日本ではペットボトルのリサイクル率が8割と高いため、環境負荷は少ないと思う人もいるかもしれない。しかし、実際には海外に輸出して処理されていたものもある。そうしたものは、中国がプラスチック輸入を規制したり、マレーシアが輸入プラスチックごみを、元の国に送り返す措置を発表したりするなかで行き場を失っている。ペットボトル水を利用すればするほど廃棄物が増えていくというのが現状だ。

 このようにペットボトル水と水道水にはさまざまな違いがある。

 個別の銘柄や特定の地域の水道水となると、その違いはさらに明確になる。

 目の前の容器のかっこよさや、水の味だけに注目するのではなく、「この水はどこからどうやってやってきたのか」「その後どうなるのか」を考えてみると、水選びが変わるだろう。