レジ袋の次はペットボトル。欧州で進むプラスチック削減の動き

川を流れるプラスチックゴミ(著者撮影)

プラスチックが地質年代を変える

 プラスチックごみの削減に向け、環境省は、買い物の際に配られるレジ袋の有料化を法律で義務づける方針を固めた。

 プラスチックの存在は地質年代まで変えようとしている。

 地質年代区分は「代」「紀」「世」に区分される。現在は1万1700年前に始まった「新生代」「第四紀」「完新世」という時代と考えられていた。

 しかし、1950年前後に完新世は終わり、新たな地質年代に突入しているとする学説が検討されている。

 新たな地質年代の名は「Anthropocene」(アントロポセン)。

 日本語では「人新世」と書く。

 「人類の時代」という意味で、人類の活動が、小惑星の衝突や火山の大噴火に匹敵するような地質学的な変化を地球に刻み込んでいることを表わしている。

 なぜ1950年前後なのか。それはこの時代を境に、完新世と区別できる地質学的証拠が豊富に存在するからだ。たとえば、放射性物質、アルミニウム、コンクリート、そして、ここで取り上げるプラチスックである。

プラスチックスープの海

 太平洋などの外洋で、海流の真ん中の無風地帯に、プラスチックごみが大量に集まっている。

 中でも、マイクロプラスチックという微細(5ミリメートル以下)なプラスチック粒子による海洋汚染が深刻だ。

 東京農工大や京大の調査によると、東京湾で捕獲したカタクチイワシの8割近くからマイクロプラスチックが見つかった。カタクチイワシは、吸い込んだ水を、「えら」でろ過してプランクトンを食べるため、餌と一緒にマイクロプラスチックを飲み込んでいる。

 マイクロプラスチックは有害な化学物質を吸着しやすく、魚がマイクロプラスチックを食べることによる生態系への影響のほか、その魚を人間が食することの影響などが懸念されている。

 マイクロプラスチックは私たちの日常生活から発生する。たとえば、

・洗顔料や歯磨き粉のスクラブ材などに使用されている、もともとマイクロサイズで製造されたもの

 (原材料を見ると、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリメチルメタクリレート/ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ナイロン/ポリアミド(PA)などと書かれている)

・化学繊維の洋服を洗濯した際に出てくる糸くずなど

・もともと大きなサイズで製造されたプラスチック製品が、自然環境中で破砕・細分化されてマイクロサイズになったもの

 ポイ捨てされたペットボトル、プラスチック製のカップ、コップ、ストロー、レジ袋。

 まちの規則に従って出したのに、カラスが散らかした家庭ゴミ。

 ボロボロになった三角コーン、人工芝。

 これらが雨や風で側溝に流れ、下水処理場で捕捉されずに河川や海に流出したり、豪雨時に川を下って海に流出したりする。

ヨーロッパで進む対策

 今回の「レジ袋の有料化」は1つの対策ではあるが、他にもプラスチック製品はあふれているため、当然ながら、これだけで十分というわけではない。むしろ「やりやすいところからやった」に過ぎず、今後の施作が大切だ。

 その点、ヨーロッパでは、使い捨てプラスチックの削減に関する取り組みが加速しており、ヒントとなることが多い。

 フランスでは、2015年にエネルギー転換法が成立し、低炭素社会にシフトする施策の1つとして廃棄物の削減を定めている。

 この法律を元に、2017年1月からプラスチック製レジ袋の提供が禁止された。禁止されたのは堆肥化可能なものを除くプラスチック製の袋(厚さ25ミクロン以下。それ以上の厚さのものはリユースされると見なされて禁止にはなっていない)。2020年1月からは、使い捨てのプラスチック製カップ、皿の提供が禁止される(堆肥化可能なプラスチックや包装容器は規制の対象外)。

 また、2016年には生物多様性・自然景観回復法において、化粧品などに含まれるマイクロビーズを使った商品と、プラスチック製綿棒の販売が禁止されることになった。ヨーロッパでは綿棒や生理用品をトイレに流すことが多く、海ごみのトップ10に入っている。

 関連して思い出したのが、「オムツをトイレに流す」という国土交通省で検討中のプロジェクトだ。紙おむつとは名ばかりで、実態はプラスチック(高分子吸収剤や結合剤等有機化学物質)。安易に流せば、下水道管の詰まりを増やし、いきものの体内で膨張する可能性もあり、マイクロプラスチックを抑制する動きに反している。

ペットボトル削減の動き

 世界の各地で使い捨てプラスチックの削減の取り組みが進められる中、ペットボトルはレジ袋とともに、トップターゲットアイテムとされる。

 今年2月、ロンドンで「ワンレス・キャンペーン」を展開するフィオナ・シュウェリンさん(ロンドン動物学協会 海洋プロジェクトマネージャー)が講演を行った(「水Do!フォーラム2018~海ごみから考える脱使い捨てと水のエシカル消費~」主催:水Do!ネットワーク、2018年2月22日、プラザエフ(主婦会館)クラルテ(東京都千代田区))。

フィオナ・シュウェリンさん(水Do!ネットワーク提供)
フィオナ・シュウェリンさん(水Do!ネットワーク提供)

 ワンレス・キャンペーンは2016年にスタート。ロンドン市から海に入るプラスチック製ペットボトルの数を減らす活動で、個人、コミュニティ、企業、NGO、政策担当者が連携して行っている。

 平均的なロンドン市民は、毎週3.37本のペットボトル入りの水を購入し、これらの多くはテムズ川に流れ、海に流れ出す。

 ワンレス・キャンペーンは、以下の6つのコンセプトを掲げて展開されている。

1)使い捨てのペットボトルではなく、詰め替え可能な水筒を使うように人々の行動を変えること

2)ペットボトル入りの水の販売を止めた場合、ビジネスにどのような影響が出るのか、また、事業を成立させるためにはどのような代替案が考えられるのか、ビジネスモデルを考える

3)リフィル可能な水飲み場がロンドン市内に十分確保できるのか、飲み水のインフラの整備

4)飲み水を提供する形(新たなデザイン)の創造

5)国および自治体レベルにおける国策と対策

6)ペットボトル入りの水に対する社会基準自体の変更

 フィオナさんは「活動全体のデザインの工夫が大切」と語る。「ロンドンをペットボトルを使っていない世界初の首都にする」という刺激的なヴィジョンを掲げながら、さまざまなステークホルダーが納得しながら行動できるしくみをつくっている。

 日本ではペットボトルはリサイクルされているから問題ないと考える人が多い。

 自治体の中には水道水をペットボトルに詰め、おいしい水のPRにつかったり、販売したりする動きがある。

 こうしたペットボトルは1回使用したら廃棄され、リサイクル・・・される?

 リサイクルにはコストがかかる。ペットボトルの場合、とくに収集コストが高い。分別収集や自治体の中間処理施設での異物の除去などのための人件費だ。自治体が安易にペットボトル水の販売に踏み切るのは、自治体でゴミとその処理コストを増やしている行為ともいえる。

 そして実際には国内ではリサイクルされず、かなりの割合で中国に輸出されていたが、中国が輸入を取りやめたため行き場を失っている。

 ペットボトルに頼らなくても、自治体の水道水は、水飲み場を設置することでアピールできる。

 たとえば、東京オリンピックの際、東京都がペットボトルに詰めた水「東京水」を配布した場合、公式スポンサーであるコカコーラ社からクレームを受ける可能性がある。

 それよりも各所に水飲み場をつくって無料で提供すればよい。

給水スポットをスマホで検索(RefillプロジェクトHPより/https://refill.org.uk/)
給水スポットをスマホで検索(RefillプロジェクトHPより/https://refill.org.uk/)

 独自に設置するのがむずかしい場合には、イギリスの「Refill」というプロジェクトが参考になるかもしれない。

 西部の都市ブリストルには、地元の飲食店やホテルらの協力のもと、誰でも無料で利用できる給水スポットが200カ所以上に設置されている。

 水道水を便利に補充できる“給水スポット”を街中に増やすことで、ペットボトルの消費を抑制し、環境負荷の軽減につなげようという「Refill」の趣旨に賛同する事業者が、水道を一般に無料で開放し、給水スポットとして登録。

 利用者は、専用のスマホアプリで現在地近くの給水スポットを検索し、持参した水筒などに水道水を補充できる仕組み。

 ペットボトルの削減、プラスチックの削減は、工夫次第でまだまだいろいろできる。