年末年始クルマに乗る人へ 「降雪なくても知っておくべき雪対策」

16日に起きた関越自動車道の立ち往生の様子(ドライバー提供)

今月16日からの大雪により、関越自動車道で発生したクルマの「立ち往生」。

最長52時間、上下線で最大約2100台が巻き込まれる事態となり、改めて日本の道路の自然災害に対する脆弱性が浮き彫りになった。

そんな中現在、30日ごろから年明けにかけて、広い範囲で再び大雪の予報が出されている。

コロナウイルス感染拡大によって、年末年始に帰省する人は例年より少ないと思われるが、公共交通機関を避けたマイカーでの帰省や、年内最後の買い物でクルマに乗るドライバーも少なくないだろう。

そこで今回は、筆者の過去の経験や、普段から雪道を走り慣れているトラックドライバー、16日の関越道の立ち往生に巻き込まれた人の話を交えながら、冬にクルマに乗る際の準備物と、立ち往生に巻き込まれた時の対策を紹介していきたい。

<「毛布」は使える>

立ち往生に巻き込まれないためには、当然ながら「不要不急の外出を避けること」が最大の対策になる。しかし、それでもやむを得ず外出せねばならない場合は、出発前に以下の準備をしてほしい。

1.燃料を満タンにしておく

今回、関越道の立ち往生に巻き込まれた30代の男性に、「経験者として今後雪に備えて何かしたほうがいいと思ったこと」を聞いたところ、やはり「高速に乗る前に燃料は満タンにしておくべき」という答えが返ってきた。

雪国のトラックドライバーからも、「晴天時に近距離を走る場合でも、まず燃料を満タンにして向かう」「大雪の予報が出た前日は、走る予定がなくても念のため給油しにいく」という声を多く聞く。

いわずもがな、公道を走るのは自分だけではない。スタッドレスタイヤをはいた自車にどれほど高い雪道の走行能力があったとしても、周りが止まれば自分も止まる。

立ち往生中に燃料が切れれば、走行はおろか、その間、暖を取ることさえもできなくなることを忘れてはならない。

ちなみに、「脱ガソリン車」によって昨今その台数を急激に増やす電気自動車(EV車)は、現状でいうとこうした有事に弱いといえる。

ガソリン車の場合、携行缶で運んだ燃料を入れればすぐにクルマは動くが、長時間の充電が必要なEV車の場合はそうもいかないからだ。

さらに、こうした寒冷地での立ち往生は、リチウムイオンバッテリーそのものの性能も低下させる。

停電時、「非常用電源」として使えるEV車だが、自然災害の多い日本における「クルマそのもの」の能力としては、はまだまだ課題が多いクルマだということを改めて感じる。

2.数日分の非常食を常備しておく

トラックドライバーが常備している食材(読者提供)
トラックドライバーが常備している食材(読者提供)

車内にいる時間が長い長距離トラックドライバーは、冬に限らず常時3-5日分の食料をストックしている人が多いが、雪道を走る際は、普段以上に食料のことを気にするという。

あるトラックドライバーは、「降雪地域を走る時は、たとえ雪の予報が出ていなくても、車内に即席めんやパスタなど、保存の利く食べ物を改めてストックし直す。水も2Lのペットボトルを10本ほどは必ず入れておく」という。

実は長距離トラックドライバーには、車内に湯沸かしポットや冷蔵庫、電子レンジなどの電化製品を備え付けている人が多く存在する。中には鍋やカセットコンロといった調理器具をも常備し、車内で簡単な自炊をする人も。

「一般ドライバーの場合、即席めんなどは不向きだけど、保存の利く非常食やお菓子、水などは常に数日分入れておくといい。その際、一緒にお箸やスプーン、お手拭きなども忘れずに」(同40代雪国ドライバー)

また、準備物として見落とされがちなのが「」だ。

特に持病があり、定期的に薬を服用している人は、数日分の持薬を常に車内に入れておくようにする。

今回の関越道での立ち往生は既述通り、最長52時間。慣れない環境のもと、これほど長い時間いつもの薬が飲めなくなるのは、命取りになることもある。

3.雪道での立ち往生時に役立つ道具を載せておく

2014年横浜での立ち往生の様子(トラックドライバー提供)
2014年横浜での立ち往生の様子(トラックドライバー提供)

雪道で立ち往生した時、非常食以外で必要になるのが、「スコップ」だ。

今回話を聞かせてくれた前出の関越道の立ち往生経験者も、「スコップは冬の間クルマに積んでおいた方がいいと感じた」と話す。

詳しくは後述するが、ガソリン車はマフラーの周囲に積もった雪により、一酸化炭素中毒を起こすことがある。雪かきがこまめに必要になるため、スコップはトランクに必ず1つ入れておこう。

もう1つ、立ち往生の際に大いに役立つのは「毛布」だ。

防寒としてはもちろんだが、毛布には様々な使い道がある。

あるトラックドライバーは、「男性は立ち往生の際、その辺で用を足そうと思えば足せるが、女性の場合は難しい。以前、横浜で立ち往生した際、自分のトラックの寝台にあった毛布で、用を足す場所を塞いで隠してあげた」と話す。

また、雪道やぬかるみにタイヤがハマってしまった際に毛布を噛ませることで脱出アイテムにもなるため、是非トランクなどに常時1,2枚載せておくといい。

これら含め、下記に「立ち往生時にあると便利なもの」をまとめておいたので、参考にしてほしい。

●立ち往生時に役立つものリスト●

非常食 飲料水 持薬 スコップ 毛布 ブースターケーブル 懐中電灯 軍手 携帯簡易トイレ ダウンジャケット スノーブーツ 使い捨てカイロ 生理用品 マスク メモ帳 本数冊 カードゲーム ビニール袋 スマホのバッテリーなど

<立ち往生に巻き込まれたら>

実際、万が一立ち往生に巻き込まれたらどうすればいいのか。

1.身近な人への報告

まずすべきは、家族や同僚にできるだけ詳しい位置情報を知らせ、現状を伝えておくことだ。これを後回しにすると、スマホのバッテリーが切れた場合に音信不通になり、周囲をより不安にさせてしまう。

寒い場所ではスマホのバッテリーの減りが早くなることも知っておいた方がいい。

2.マフラー周辺の雪かき

立ち往生した際、外に出ずエンジンを掛けたままの車内で待機し続けていると、最悪の場合、死に至ることがある。

原因は「一酸化炭素中毒」だ。

クルマの周囲に積もった雪がマフラーの排気口を塞ぐことで、排ガスが車内に逆流。知らぬ間に一酸化炭素中毒を起こし、意識不明になったまま死亡するケースがこれまでも多く発生している。

とりわけ、エンジンを掛けたままの仮眠は非常に危ない。

症状も軽度の場合だとめまいや頭痛などのみなので、「環境のせいだろう」と気付きにくい。

こうした一酸化炭素中毒防止のためにも、立ち往生時は基本的にエンジンは切っておいたほうがいい。

が、クルマが動けなくなるほど雪が降っているということは、やはり車内は非常に寒いはず。

どうしてもエンジンを掛けたいというときは、斜め同士(運転席+後部座席左側 or 助手席+後部座席右側)になる窓を数センチ開けて換気をし、さらに前出で紹介したスコップで、マフラーまわりの雪かきを忘れないようにしよう。

3.「足上げ」&「軽い運動」

ドライバーの足上げ。見た目は悪いが、座りっぱなしのトラックドライバーにとってはエコノミークラス症候群対策になるため理に適った体勢なのだ(読者提供)
ドライバーの足上げ。見た目は悪いが、座りっぱなしのトラックドライバーにとってはエコノミークラス症候群対策になるため理に適った体勢なのだ(読者提供)

トラックドライバーがハンドルに足を上げて休憩しているのを見たことがある人も多いだろう。

通称「足上げ」と呼ばれるあの行為は、傍から見ると非常に格好の悪いもので、荷主や運送会社からも「商売道具に足を上げるべきではない」という意見があるが、終日座りっぱなしのトラックドライバーにとっては非常に楽な体勢で、何より「エコノミークラス症候群対策」に効果がある。

一般車のハンドルは、トラックより高い位置にあるので足上げが難しいかもしれない。車内空間に余裕がある場合はシートを倒すなどすれば体も動かしやすいが、もし定員が乗っている場合は、順番に体勢を変えるなどしてできるだけ足を高く上げる工夫をしよう。

また、天候や周囲の様子を確認しつつ、車外で軽い体操をすることもエコノミークラス症候群対策には効果的。精神的にも気分転換になる。

4.周囲とコミュニケーションを取る

もし立ち往生してしまった場合は、周囲のドライバーとのコミュニケーションも取れるといい。

今回の立ち往生に巻き込まれた前出の男性も、「近くのトラックドライバーさんとお話しました」とのことだった。同じ境遇にいるドライバー同士、他人であっても励まし合うことで気持ちに余裕ができる。

また、複数車内にいる場合は互いの状況を確認し合えるが、1人で立ち往生に巻き込まれた場合は、自分が1人でいることを周りのドライバーに伝えておくことは非常に大事なことだ。

先日の関越道立ち往生では、幸いなことに死者は出なかったが、クルマに1人しかいない時の立ち往生は、雪道でなくとも思った以上に危険が多い。

特に深刻な持病をもつ人は、立ち往生が始まったら躊躇せず周囲のドライバーへ知らせるか、119番に電話し、自身の存在を早めに知らせるようにしよう。

※前回記事:「将来はごみ収集車の運転手」2歳からの夢を叶えた、ある作業員の話

https://news.yahoo.co.jp/byline/hashimotoaiki/20201223-00213939/

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