朝ドラのアジア戦略~ニッポン女子力に勝ち目あり?!

朝ドラをきっかけに「日本へ行きたい」と思う世界の視聴者がいる。(写真:アフロ)

好調の朝ドラ、世界でも根強い人気

終盤戦に入ったNHK連続テレビ小説『とと姉ちゃん』が好調を維持する。同シリーズ最高平均視聴率23.5%を記録した前作の『あさが来た』と比べると話題性に欠けるも、初回から20週連続で週間平均視聴率20%超えを記録している。

こうした国内での実績は、世界市場で紹介される場合もうたい文句となる。数字で示される視聴率はわかりやすい判断材料になるからだ。好調さも強みに、これまで多くの朝ドラが世界で放送されている。なかでも、言わずと知れた『おしん』は最も多くの国と地域に輸出され、無償提供などを含めてその数は68の国と地域に上る。聞けば、ひとつの国で5~6回もリピート放送されることもあり、「初回放送から30年以上も経た今もなお根強い気がある」という。

近年の作品では世界で活躍するデザイナー、コシノ三姉妹の母親、小篠綾子さんをモデルに、尾野真千子さん、夏木マリさんが主演した『カーネーション』の人気が高い。『おしん』に次ぐ規模の19の国と地域で放送されている。国際交流基金の協力を受けて、中央アジアのウズベキスタンやアフリカのザンビアなど、朝ドラ初進出エリアもある。NHK担当者は「途上国では生活の中にある足踏みミシンのシーンが身近に感じてもらっているようで反響が高い」と話す。

しかし、『マッサン』のような国内で好評だった作品でも海外展開が厳しい場合がある。国によってはタブーな内容が含まれていると放送できないからだ。イスラム国では飲酒シーンがNG。タイや中華圏の一部では不倫を描くものは許されないといった話がある。

また市場のニーズにも大きく左右される。例えば、フィリピンでは昼ドラのようなメロドラマが好まれ、自国のタレントが出演するドラマが支持されている。朝ドラが入る余地はなく、過去に『おしん』が視聴率不振により、途中で打ち切りになってしまったこともあるという。ここにきてようやくチャンスが巡り、25年ぶりに『あまちゃん』の現地語による吹替え版が放送されたところだ。

中国、トルコ、韓国ドラマに対抗

アジアの中でベトナムも朝ドラ進出が遅れている国のひとつだ。理由は韓国の映画やドラマ、K-POPが深く浸透しているからだ。先日、足を運んだ首都ホーチミンの街中では韓国のCJやロッテグループが運営するシネマコンプレックスが点在しているのを目にし、韓国タレントのような独特なヘヤスタイルの男性にもよく出くわし、それを実感した。

そんなベトナムで今年、『ごちそうさん』が公共放送局のホーチミンテレビで放送された。「同時間帯には中国やトルコ、韓国の競合ドラマが並んでいましたが、視聴率は1.8%とベトナムの基準ではなかなかの好成績です」とNHKの担当者は説明する。

またNHKが独自に行ったアンケート調査(2016年1月29日~2月9日/ベトナム・ホーチミン/年齢18~69歳までの男女500人)では、興味深い結果も出た。

『ごちそうさん』に対して最も評価が高かった項目は「文化性」。次に「ストーリーの面白さ」だった。さらに、韓国の医療ドラマ『ホジュン』、中国の宮廷ドラマ『The Cage of Love』、トルコのオスマン朝歴史ドラマ『壮麗なる世紀』との評価比較でも「ストーリーの面白さ」が各国のドラマよりも高い評価を得た。日本のドラマは全般的に「脚本のクオリティの高さ」に定評があり、この調査でもそれが証明されたと言える。

予想以上の効果もみられた。ドラマ視聴後に「日本に行きたいと思った」と答えた視聴者は6割近くに上り、各国のドラマ比較でも「舞台の国へ行きたい」と答える回答が『ごちそうさん』に多く集まった。

入り込めなかった地域でのこの好結果は評価すべきだろう。しかし、更に攻めてもいいのではないか。プロモーション不足など攻めが甘いところが、日本の番組が海外進出する際の弱点でもある。映像ストリーミングサービスのアジア進出も進み、競争はますます激しくなっているが、膨大にある作品群の中で、「時代を生き抜く健気でたくましい日本女性」を描く朝ドラシリーズは差別化できる。宮廷ドラマにもラブコメにもない、リアリティを重視したストーリーは、経済成長によって生き方が多様化するアジア女性の心にも刺さるところがあるはずだ。

1975年生まれ。2003年から放送業界専門誌の放送ジャーナルでテレビ、ラジオ担当記者。国内外のドラマ、バラエティー、ドキュメンタリー番組制作事情をテーマに、テレビビジネスの仕組みについて独自の視点で解説した執筆記事多数。東洋経済オンライン、オリコン、マイナビ、日経クロストレンド、WIRED、講談社ミモレなど。得意分野は番組コンテンツの海外流通ビジネス。仏カンヌの番組見本市MIP取材を約10年続け、日本人ジャーナリストとしてはこの分野におけるオーソリティとして活動。業界で権威あるATP賞テレビグランプリの総務大臣賞審査員や、業界セミナー講師、行政支援プロジェクトのファシリテーターも務める。

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