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福島第一原発1号機を眼前に見て感じた、廃炉作業に関心を持つ困難さと、関心を保たないことの怖さ

原田謙介政治の若者離れを打破する活動を10年以上

3月9日(月)に福島第一原子力発電所を視察させていただいた。

Yahoo!ニュース個人のオーサーの一人として、Yahoo!社向けの視察への参加依頼をいただき、実現した。何度も映像では見ているのだが、実際に眼前に福島第一原発1号機から4号機があるという状況になれば、何を感じるのか。それを知りたいというのが今回の福島第一原発視察にあたっての最大の動機だった。(記事中の写真はすべてYahoo!ニュース個人オーサー代表撮影)

1:今後に残るであろう強い思いを自分の中に視察中には感じなかった。

貴重な経験であったことは間違いないということを前提にではあるが、今後に残る強い思いは視察中にはなかった。

防護服を身につけ半面マスクをつけ、線量計を装着した2時間。福島第一原発1号機から4号機を目の前に見て思うことはあった。状況はどんどん改善はしているがまだ大変な状況に原発はある。そして、この場所が4年前のあの日以来幾度と無く映像で目にした場所であり、今もまだ廃炉に向けた作業が続けられている場所であると実感し、まだ制御されていない状態の燃料がその中にあることに対して、少し恐ろしい気にもなった。日々300トンが流入を続ける汚染水対策についても色々と知った。汚染水の流入量を減らす陸側遮水壁と海への流出を防ぐ海側遮水壁の工事の現場、汚染水の浄化を進める高性能多核種除去設備、無数の汚染水タンクを見た。東電の方より丁寧な説明を受け、いくつか質問をさせていただいた。原発の現状や廃炉へ向けた取り組みについて多く知ることはできた。

でも、それだけである。現場を見て知識を得て貴重な体験をしたという事実が残るのみ。視察に行った自分ですら今後数十年続く廃炉作業の間関心を保てるかどうか確信を持てない。

福島第一原発1号機
福島第一原発1号機

2:増え続ける汚染水タンクの数は唯一目に見えるもの!?

原発の内部の状況はわからず、遮水壁も埋まってしまえば見ることができない。そんな原発の中で唯一目に見えて、原発の事故が収束していないことを知る事ができるものは汚染水タンクの数である。年度内に80万トンの保有水量を確保し最終的には100万トンまで増やすと計画されている。それまで林やグラウンド出会った場所を整地しタンクを設置している現状。視察中の話の中ででた、「もし、福島第一原発のように平地ではなく、女川原発のように山間部にあったら汚染水の貯蔵は相当困難だろう」という東電職員の発言。しかし、計画によれば今年の11月に100万トンまで増やし、そこが上限のようだ。となると、良いことではあるがタンクの数が目に見えて増えていく状況もあと数ヶ月のみ。

増え続ける汚染水タンク
増え続ける汚染水タンク

3:わからなく、関係がなさそうなものへ関心を持つことの難しさ。

歴史上に残るとてつもない事故がおきたこと。自分の住んでいた場所に帰ることができない人や大変な思いをしている農業・漁業関係者がいること。30年から40年後まで廃炉作業は続くことは重要な事である。しかし、専門的な話はわからないし、そもそも原発が廃炉に向かっていっていることは一部の人を除きほとんどの人の日常にとって関係がない話である。震災前に原発に関心を持っている人などほとんどいなかったことと近いかもしれない。しかし、事故を契機にエネルギー政策、電力会社のあり方、“安心”とは何かなど多くの議論が巻き起こったこともこのままだと一緒に忘れ去られていっても良いのだろうか。

4:作業に携わる人を知り、変化を目にすることで関心が起こる

なんとか、自分の中で関心を保つための方法をひねり出そうとしている。効果的かどうかは分からないが、自分は以下の2つを意識していこうと思う。

1つは原発の作業に従事する人を知るということ。

どのような想いで防護服を来て現場に出ているのか。その中で日々何を感じているのか。今回の視察では技術的な説明をのぞき、広報の方以外の話を聞くことはできなかった。技術に関心はわかないが、人の想いを知ると人は心が揺さぶられる。保安面での危惧からも、現場の作業員の方が軽々に話をすることはできないと思うが、仕事しての広報やHPでの情報発信などに比べれば多くの人に伝わるのではないかと感じる。広報というものは会社として伝えたいものを伝えたいように出しているものとも言える、必要ではあるが人の想いは入っていない。今後作業員の方の手記なども出てくると思う。そのようなものを目にしたら積極的に読むことにする。

もう一つは変化を目にすること

現状を知ることはもちろん必要だが、それでは動きがない。震災直後と比べ現場の状況はどう変わったのか。1ヶ月前と比べ、どのような進捗があったのか。現場の労働環境はどのように変わったのか。常に状況をウォッチしてない自分が現状のニュースだけを知ることにどこまで意義があるのか。数十年に渡って続く作業であるので変化を知り、廃炉作業は進行中であることを意識して行こうと思う。

金属製のベストを着て作業する作業員
金属製のベストを着て作業する作業員

5:関心を持たなければ改善するということはない。

原発の状況に関心を持たなければならない。なぜ、あの事故が起き、何が問題だったのか?そして、何が改善され、どの問題が残っているのか。東電・政府・マスメディア・自分自身のことをきちんと考えなおすタイミングにする必要がある。“無関心”という状況ほど怖いものはない。視察の直前に、汚染された雨水の情報を数ヶ月に渡って公開していなかったことが明らかになった。自分も含めて人々の関心が薄れたから隠してもばれないと思ったのではないかとも思えてくる。厳しい目が向けられれば改善する。過去に水漏れを起こしたボルト式の汚染水タンクは溶接式の汚染水タンクへと変わっていっている。評価するほどではないが改善ではある。

原発をこの時期に視察するという貴重な体験をできたことを活かすために、関心を持ち続けるように工夫をしてみようと思う。

そして自分の関心を広げる発信も行いたい。

政治の若者離れを打破する活動を10年以上

1986年生まれ。岡山在住。愛媛県愛光高校、東京大学法学部卒。「学生団体ivote」創設。インターネット選挙運動解禁「OneVoiceCampaign」。NPO法人YouthCreate創設。「若者と政治をつなぐ」をコンセプトに活動。大学非常勤講師や各省有識者会議委員などとして活動を広げていく。18歳選挙権を実現し、1万人以上の中高生に主権者教育授業を行う。文科省・総務省作成「政治や選挙等に関する高校生向け副教材」の執筆者でもある。2019年参議院選挙・2021年衆議院選挙に立候補し敗れる。元岡山大学非常勤講師。元グローバルシェイパー東京代表。元中野区社会福祉評議会評議員

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