4月末からの改元祝福ムードのなかで、朝日新聞の譲位、即位に関する報道は、やはり突出して異常だった。

 最も驚いたのは4月25日朝刊の天声人語。

 敗戦の年、国民は陛下の命令だから忍び難きを忍んで負けようと言ったが、それは歴史的な大欺瞞。われら国民は戦争をやめたくてしかたなかったではないか――という坂口安吾、『続堕落論』の一節を引き、

〈天皇が元首だった当時とは違い、象徴と位置づけられる現代である。それでも似たような精神構造をどこかで引きずってはいないだろうか〉とまず疑問を投げかける。

 そして、上皇陛下の戦地慰霊の旅を「加害の歴史を忘れないようにという試み」ととんでもない解釈をしたうえで、結論は、

〈すごく大事なことを「象徴の務め」にまかせて、考えるのを怠ってこなかったか。天皇制という、民主主義とはやや異質な仕組みを介して▼世襲に由来する権威を何となくありがたがり、ときに、よりどころにする。そんな姿勢を少しずつ変えていく時期が、来ているのではないか〉

 つづめて言えば「世襲に由来する」天皇制をやめろ、と言っているのだ。

 驚くべき一文ではないか。

 日本共産党ですら最近は、天皇制(共産党用語だから使いたくないのだが)批判を控えている。

 それにしても朝日新聞がここまで踏み込んで書くとは。

 ぼくがもっと驚いたのは他の主要メディア(産経も含む)がこの「天声人語」を少しも問題にしない点だ。右翼の連中が朝日新聞に抗議したとも聞かない。

 その4日前の4月21日には、「退位『一代限り』への問い」と題して1面トップで、秋篠宮さまが、皇位継承について語ったという言葉を報じた。

「兄が80歳のとき、私は70代半ば。それからはできないです」

 一昨年6月、退位を実現する特例法が成立した直後に秋篠宮さまが、そう発言したというのだ。

 考えようによっては「早く譲れ」と仰っているとも受け取られかねない問題発言だ。

 匿名の「関係者」が聞いたという発言だが、そう軽々しく報じていい話ではあるまい。

 そして3面に記事は続く。

 見出しは「退位の自由 終戦直後も議論」「『内閣の奴隷』三笠宮さま主張」。

 1947年、現在の皇室典範の成立過程で、「退位の自由を認めよ」という意見が出たが、「ならば即位拒否の自由も認めるのか」という反論が出て導入されなかった。

 その時に三笠宮さまが、退位の自由を認めないならば「天皇は全く鉄鎖につながれた内閣の奴隷と化する」と主張したというのだ。

 4月29日には17面1ページの大半を費やした「記者解説」で「剣璽等承継の儀」は「政教分離への疑問が残る」として、

〈国事行為にするのであれば、宗教色のある剣璽は使用しない。剣璽を使うのであれば、国事行為ではなく皇室行事として、国費を支出しない――。このどちらかを選ぶのが筋のはずだ〉

 譲位から改元、そして即位と、一連の行事を若い人たちが意外なほど歓迎し、4日の一般参賀に14万人が集まった。想像以上の皇室人気に、朝日新聞が焦っているのが、これらの記事で手に取るようにわかる。