こんなにひどい話は滅多にあるものではない。

 これがもし逆の立場の人物、たとえば左翼の活動家であったり、野党の政治家が、同じような立場に置かれたら、朝日新聞などのメディアは、やれ「人権問題」だ、やれ「冤罪事件」だと大騒ぎするだろう。

 元TBS記者山口敬之氏が「伊藤詩織」と名乗る女性にデート・レイプドラッグを混入した酒を飲ませ、強姦したとされる件だ。

 2017年5月『週刊新潮』が「安倍総理べったり記者の準強姦逮捕状」というタイトルで“スクープ”。

 その直後、「伊藤詩織」なる女性(彼女の経歴などはほとんど不明)が司法記者クラブで会見、「山口氏から性的暴行を受けた」と主張した。後には『ブラックボックス』(文藝春秋刊)という本まで出して山口氏を告発している。

 だが、実はこの件、すでに2016年に検察は不起訴処分。女性は検察審査会に不服申立てをしたが、4ヵ月余りの審理の末、ここでも「不起訴相当」、つまり不起訴処分は妥当と結論を出しているのだ。山口氏は冤罪なのだ。

 メディアはこんなことはとっくにわかっているのに、その後も、あたかも「伊藤詩織」が、被害者であるかのように報じ続けている。

 たとえば朝日新聞。今年2月27日の「『声あげる女性、黙れ』の空気」という特集記事で、声をあげた女性として「伊藤詩織」を取り上げている。

〈詩織さんは声をあげたがバッシングが待っていた。いったい何なのか〉

「伊藤詩織」を完全に性被害者扱い。

 こんなひどいことがあるだろうか。繰り返すが、山口氏は検察が不起訴にし、検察審査会も不起訴が妥当としているのだ。

 小林よしのりさんは昨年『SAPIO』8月号「ゴーマニズム宣言」の中でこの件を取り上げた。

 山口氏そっくりに描かれた人物が、女性を強姦するシーンに、こんな説明を加えた。

〈山口敬之はジャーナリスト志望の女性の酒に、睡眠薬を混ぜ、意識を朦朧とさせ、ホテルに連れ込んでレイプ行為に及んだ。〉

〈この事件には、逮捕状まで出ていたのだが、山口が北村滋(内閣情報官)に相談し、中村格(警視庁刑事部長)が捜査に介入して逮捕状を取り下げさせ、事件を握りつぶしてしまった〉

レイプ行為に及んだ、とハッキリ断定。

 明らかに名誉を毀損している。

 小林さんはいったいどうしてしまったのか。いくらマンガだと言っても、描いていいことと悪いことがある。

 小林さんは、そんな区別もつかなくなっているのか。

 もっと不可解なのはこんな、明らかに山口氏の名誉を毀損しているマンガを掲載した『SAPIO』編集部の姿勢だ。こんなマンガを載せたら問題だとは思わなかったのだろうか。

『週刊新潮』(4月18日号)は山口氏が「伊藤詩織」を訴えたことを批判的に記事にした。そのなかで小林さんはこんなコメントを。

「いったい、山口氏はどういうつもりで反訴したのだろうか。ちょっと常識に反していると思わざるを得ない」。

常識に反しているのは小林さんの方だろう。

 山口氏にも妻子がいる。こんなマンガを目にした時の山口氏の家族の気持を小林さんや『SAPIO』『週刊新潮』は思ったことがあるのだろうか。

 ゴーマンかましちゃいけない。