「イライラしている自分」が冷静になるための外在化法

(写真:アフロ)

誰にでもついイライラしてしまうということはあるものです。誰かの具体的な振る舞いにイライラする場合もあれば、暗黙のルールやマナー違反のような漠然としたものについてイライラする場合もあります。

筆者は技能者の育成にたずさわっていますが、指導する人と指導を受ける人の双方から、イライラのエピソードをうかがうことがあります。

そもそもイライラとは何?を感情心理学からとらえてみると、大きな括りでは「怒り」というネガティブ感情の一種です。生後6ヶ月までに獲得する一次的で基本的な感情であり(ルイスの感情発達モデル、図1)、「自分がしたいことを邪魔するものに対して向けられる外向きの感情」とされます(文献1)。つまり、イライラは自分がしたいことや理想の実現というある種の目的があり、そのための障害をとりのぞくよう私たちを動機づけるといえます。

図1
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イライラのポジティブな側面

何かのきっかけで(注1)イライラに火がつくと、我慢してぐっとこらえる場合もあれば、ストレートに原因となった人に向かったり、八つ当たりのように他の人や物に当たる行動に転換されることもあります(文献3)。

イライラの火が大きいと、過剰で不適切な発言や行動がえらばれやすく、それらが自己正当化されやすいため(文献2)、ぶつけられた相手にとってはもちろん、ぶつけた人自身にとってもあとあと大きな不利益となりえます。

その一方で、イライラにはポジティブな側面もあります。

先ほどイライラは「自分がしたいことを邪魔するものに対して向けられる外向きの感情」であると述べました。「邪魔」を「問題」と言い換えると、自分がしたいことのために問題を解決する感情ととらえることもできます。社会問題への抗議活動や解決行動などはその例といえます。

イライラの持つこうした問題解決的な側面は大事にし、かつその火が大きくなりすぎないようにしたいところですが、なかなか難しいものです。

写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

イライラの火を調整する外在化法

イライラの火をコントロールする方法はアンガーマネジメントの分野で紹介されていますが(文献4)、その目指すところをざっくりと一言で表現するなら、「感情から距離を取り、自分を客観視する」ことではないかと考えています。

例えば、こんなケースがあります。

理不尽な対応を人からされてイライラの火が燃え上がった人が、その出来事を人に話しているうちにだんだん落ち着きを取り戻しました。最初はどうなってもいいからイライラをぶつけて理不尽な対応に抗議しようとしていたのですが、落ち着きをとりもどしたことで、「○○は困るのでこうしてもらえますか?」と冷静に伝えられました。

当初はイライラの火が強すぎたのですが、それが問題解決に適した強さになり建設的な問題解決の行動を後押ししたケースです。

上記の場合、自分の気持ちを人に話すことで、感情と距離ができ、イライラを客観視することにつながったと考えられます。

ではイライラの火がついたときに、話を聞いてくれる人がそばにいなかったらどうすればいいのでしょうか。

ここで紹介したいのが、外在化という方法です。

外在化とは、自分の内側にある目に見えない感覚に名前をつけたり喩えたりして、感覚を客観視する方法です。あたかも感覚を自分の内側から外にだして眺める様子から、外在化とよばれます。

例えば、本記事では「(自分が)イライラしている」を、「イライラに火がついている」と表現していますが、これも外在化の一つです。「イライラしている」場合はイライラ=自分ですが、「イライラに火がついている」は自分の中に「イライラの火」があり、まるで焚き火をながめるように、イライラをながめるイメージとなります。

写真:アフロ

イライラの火を焚き火のように眺めることができれば、火が大きくなりすぎないよう調整したり、「いまイライラするのは自分の目標や理想の実現にプラスだろうか?」や「他のやり方はないだろうか?」などと冷静に考えたりするなど、イライラの持つ問題解決的な役割を活かすことも可能かもしれません。

また、外在化にちょっとしたユーモアを加えると、視点を切り替えやすくなる可能性があります。ユーモアに関する研究では、ユーモアを感じているときの人の脳の活動は、実際に体を動かして視点を変えたときの脳の活動とおなじなのだそうです(文献5)。つまり、ユーモアは視点が切り替わる効果をもつといえます。

イライラを外在化するとして、上の画像と下の画像では、私たちが受ける印象は変わります。上はより真剣な印象ですが、下の画像は少しクスッとなる感じでしょうか。

提供:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート

イライラの火が大きすぎてそういった余裕も持てない場合もあるかもしれません。

そのときは文献4で紹介されている「カウント6」(怒りが高まったときに頭の中で6まで数字を数える方法)や、一旦その場を離れる、水を飲む(ついでに頭の中で火に水をかけるイメージもする)などの代替行動でイライラの火を燃料となる原因から離してみることも、有益でしょう。

まとめ

イライラしてしまうことは誰にでもあります。自分がイライラすることもイライラしている誰かを見ることも、心地よいものではありません。しかしイライラそのものは必ずしもネガティブで避けるべきとは言い切れません。私たちが問題解決し、何かを実現するための原動力となる場合もあります。

イライラする背景には、もちろん単純な不快感もありますが、思い通りにならないことをどうにかしたいというケースもあります。そんなとき、過剰で不適切な発言や行動をえらばないよう、イライラの火を小さくする必要があります。もし近くに話をきいてくれる人がいればよいですが、いない場合に外在化は有効な方法です。

私たちの感情にはそれがネガティブなものであっても何かしらの意味があります。その特徴を知って、よい距離感をつかむことができれば、良いパートナーとなってくれるはずです。

注1

イライラの火が付きやすいシチュエーションには以下のような特徴があります(文献2〜4)。

  1. 自分の立場が悪くなるような出来事・発言があったとき
  2. 追い求めている目標が邪魔されたとき
  3. 自分の道徳観と反する行為を目にしたとき
  4. 時間や体力に余裕がないとき
  5. 身体的な脅威を感じたとき

参考文献

  1. 遠藤 利彦・佐久間 路子・徳田 治子・野田淳子. (2011). 乳幼児のこころ 子育ち・子育ての発達心理学. 有斐閣アルマ.
  2. 大平英樹(編). (2010). 感情心理学・入門. 有斐閣アルマ.
  3. P.エクマン, WVフリーセン著., 工藤力訳. (1987). 表情分析入門 :表情に隠された意味をさぐる. 誠信書房.
  4. 中島美鈴. (2016). 悩み・不安・怒りを小さくするレッスン. 光文社新書.
  5. 池谷裕二.(2017). できない脳ほど自信過剰. 朝日新聞出版.