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3組に1組が離婚の日本人夫婦、それよりも高いと言われる「国際結婚の離婚率」その理由は

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:イメージマート)

1 はじめに

日本において国際結婚は離婚率が高いとされており、「日本では3組に1組が離婚、国際結婚は2組に1組が離婚」などとも言われています。

私は兵庫県西宮市で家事事件を中心に扱う法律事務所を経営する弁護士ですが、実際に定期的に国際離婚のご相談をお受けしています。

国際離婚は手続きに通常の日本人同士の結婚とは異なる点もあり、難航するケースも珍しくありません。

写真:西村尚己/アフロ

2022年7月7日に、日本人の妻が別居の際に子供を連れて行ったのは「子供の連れ去りにあたる」としてフランス人の夫が訴え、国際的に問題となった夫婦の離婚訴訟の判決が東京家庭裁判所で言い渡されました。

https://news.yahoo.co.jp/articles/0b5379483fb079c50e3536f6e469591b2d27586a?page=2

これは日本人の妻が、フランス人の夫に対する離婚と、その後の子供の親権等を東京家庭裁判所に訴えていた事件です。

妻が子供を一方的に連れ去ったとしてフランスでは妻に逮捕状が出されており、フランスのマクロン大統領も日本政府に問題提起するなど、注目を集めていましたが、東京家庭裁判所は子供の親権を日本人の妻に認める判決を言い渡しました。

しかし夫の母国フランスでは、妻の行為は違法とされ逮捕状が出ているわけですから、フランスで審理が行われていれば夫に有利な判決が出された可能性が高いでしょう。

どちらの国の法律が適用されるのか、またどちらの国の裁判所で裁判するかによって全く逆の結論になり得ることも、国際離婚が難航する理由の一つです。

共同親権制度の導入についての審議は法務省や自民党の法務部会で進められていますが、すでに先進国のほとんどが共同親権制度を採用しています。

日本は、今のところ、離婚後は単独親権一択しかないため、今回は妻に親権が認められ、一方で妻がフランス人の夫との面会交流を妨げているのは問題であるとの指摘がなされました。

実際に離婚しようと思っても手続上難航するケースもある国際離婚-。

それでも、国際離婚の離婚率は日本人同士の離婚率よりも高くなっています。

今回は、なぜ国際離婚の離婚率が高いのかについて解説していきます。

2 国際結婚した夫婦の離婚理由は?

写真:イメージマート

国際離婚の理由として考えられるのは以下となります。

① 価値観の相違

日本人同士の結婚であっても、価値観の相違は離婚につながります。

しかし外国人との結婚では、さらに明確な文化の違いが壁となる場合があります。

例えば、食文化の違いはかなり深刻です。

お互い当たり前のように食べて来たものが食べられないのは大きなストレスとなります。

それが毎日積み重なれば、亀裂が決定的となることもあり得るのです。

また、仕事や働き方に対する考え方も国によって大きく異なります。

家庭や子育てについての、文化や考え方の違いも問題になることがあるでしょう。

性生活やスキンシップも、国によって大きく変わります。

日本はセックスレス大国と言われていたりしますので、そこにも上手く行かなくなる要因があるでしょう。

また、お金の使い方や貯蓄に対する考え方の相違も、国民性によるところがあります。

② 義理の両親との関係

意外に多い原因が、義理の両親とのコミュニケーションが上手く取れないことによるストレスです。

日本人同士の離婚理由でも「家族関係」は常に上位に入っていますが、国際結婚ではより顕著に表れるようです。

実際のところ、家族関係が年々希薄になっている日本人に対し、ファミリーとしての絆が強い外国人の家庭に違和感を持つケースが散見されます。

③ コミュニケーション不足

いわゆる「言葉の壁」の問題です。

関係が良好であれば、多少のトラブルは乗り越えられますが、問題が深刻化した時には、真意を上手く伝えられないがために、どんどん悪い方向へ進んでしまうことがあります

その結果、極度のコミュニケーション不足の状態に陥り、関係が破綻してしまうことは十分考えられます。

④簡単には帰国できない

母国から遠く離れて日本で暮らしているケースでは、親兄弟や友人とはなかなか会うことができず、それが大きな精神的ストレスとなります。

電話やスカイプなどでは話せても実際に会って話すのとは大きく異なり、ちょっとした日々の不満や愚痴を言える相手がいるのといないのとでは、全くストレスの溜まり方が違います。

日々のストレスが積み重なると、場合によっては重度のホームシックのような状態になりますので、離婚の原因となることも十分考えられます。

⑤ その他一般的な離婚理由

モラハラ、DV、不倫、金銭問題など、一般的な離婚理由に該当するようなケースは当然発生します。

つまり、一般的な離婚理由に加えて国際結婚特有の離婚理由があるため、日本人同士の結婚に比し、離婚する割合が高いのは当然だと言えます。

3 おわりに

写真:イメージマート

国際結婚をして幸せに暮らしているカップルはたくさんいらっしゃいます。その一方で、日本人同士の結婚に比し、国際結婚のカップルは離婚する割合が高いのも事実ですし、離婚手続きに難航するケースも実際に多いです。

国際結婚においては、より相手の文化や習慣を理解し尊重する気持ちが大切です。

離婚時にも、冒頭にあげたフランス人夫と日本人の妻のケースのように、単独親権、共同親権などの両国の法制度の違いが争いの原因となるケースもありますので注意が必要です。

特にお子さんがおられる場合は、親子間の断絶という悲劇にもつながりかねませんので、今後、日本で共同親権を導入した場合でも、お子さんにとって最適な形での導入が望まれるところです。

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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