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3月は離婚のハイシーズン⁈3月に離婚が多い理由を弁護士が解説

後藤千絵フェリーチェ法律事務所 弁護士
(写真:アフロ)

1 3月は離婚のハイシーズン

一般的に、3月は別れの季節と言われています。

卒業式や転勤などのイベントが多いのが理由ですが、実は1年で離婚が最も多いのもまた3月なのです。

写真:イメージマート

私は兵庫県西宮市で家事事件を中心に扱う法律事務所を経営している弁護士ですが、現場感覚として、1年を通じて3月は離婚の成立が一番多い月という印象があり、3月は離婚のハイシーズンだと実感しています。

実際に厚生労働省のデータを見ても、3月の離婚件数が最も多いことが確認できます。

※人口動態統計速報(令和2年12月分)

https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/s2020/dl/202012.pdf

特に女性は、何が何でも3月末までに離婚を成立させたいといった方が多く、弁護士としてはかなりプレッシャーになりますが、その反面、スムーズに離婚成立となるケースも多いのが3月なのです。

2 3月に離婚が多い理由

写真:アフロ

3月に離婚が多いのは、お子さんを連れて離婚される方が学年の変わる前に離婚したいと考えるため、つまりお子さんの環境が変わることに対する配慮が一番の理由です。

子連れ離婚の場合は、お子さんに少しでも負担が少なくなるように住環境を決めたいと思うもの。

転校する場合には、4月の新学期に合わせた方が学校になじみやすいですし、苗字を変更する場合も入学時期や新学期に合わせた方が目立ちにくく、お子さんの負担も減ります。

ただ、学年が上がる時期に合わせて転校や氏の変更をするためには、遅くとも3月中旬頃までに離婚をして離婚届を提出し、法律的に必要な手続をする必要があります。

今回は、法律的なことに絞って解説したいと思います。

【離婚後の氏と戸籍の変更手続】

① 氏について

結婚により改姓した場合は、離婚後は旧姓に戻るのが原則です(「復氏」と言います。)。

ただし、お子さんのいる女性の場合は、お子さんの生活への影響を考慮して、離婚後も元夫の氏を名乗ることを選択する方もいるでしょう。

その場合は、離婚日を含めて3ヵ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」を自分の本籍地の市区町村役場に提出する必要があります(※戸籍謄本と届出人の印鑑が必要です。)。

なお、お子さんの氏については、母親が親権者となった場合には、お子さんの氏を母親と同じ氏に変更する手続をする必要があります(「子の氏の変更許可の申立て」と言います。)。

これは母親が結婚中の氏を引き続き使用する手続を行った場合でも同様です。

子の氏の変更許可の申立てをし、申立てが認められると、審判書謄本が1週間程度で自宅に届きます。

② 戸籍について

女性の場合、離婚が成立すると結婚前の戸籍に戻りますが、お子さんがいる場合は新戸籍を作成する必要があります。

また、氏と同じく、新戸籍に子供を入籍させるためには、お子さんの戸籍も変更手続をする必要があります。

子の氏の変更許可の申立てが認められ、審判書謄本が届いたら、お子さんの戸籍を母親の戸籍に移動させます(「入籍」と言います。)。

これらの入籍手続を完了すれば、お子さんに関する氏と戸籍の手続が終わります。

子供の入学前や新学期が始まるにこれらの手続を完了することが重要です。

3 3月に離婚成立するためにはいつから準備すべきか?

写真:アフロ

3月に離婚をするためには、離婚を切り出すタイミングを半年以上前に遡る必要があります。

離婚相談を受けている中で一番多いケースが、夏から秋にかけて、離婚を考えていますと言って法律相談に来られるパターンです。

その時はまだ決意が固まっていない方が多いのですが、相手の財産を把握するなどの準備期間を経て決意を固め、年末までに離婚を切り出す方が多いようです。

ただ、年末に離婚を切り出した場合、離婚の際に決めなければいけない親権、養育費、財産分与、面会交流などを話し合っていたら、結果的に3月には間に合わなかったというケースは多いです。また、12月に離婚すると税金の控除の関係で夫が損をすることから、夫から年明けにして欲しいと頼まれるケースもあります。

一方、3月に絶対に離婚をする!という強い意志を持った方は、かなり強引に離婚を成立させてしまうケースがあるのも事実です。

ただ、十分な話し合いをしないまま強引に離婚を成立させると、条件面で損をしたり、後々紛争が再燃して苦労することにもなりかねません。

そのようなことのないように早めに計画を立てて、大まかなスケジュールを立てておきましょう。1年~半年前から準備するのがベストです。

お子さんが転入学する場合は学校のリサーチも必要になってきますし、ひとり親家庭ではどのような福祉のサポートを受けられるのかを知っておく必要があります。離婚後は、児童手当の振込先を変更したり、携帯電話やクレジットカード決済も相手名義になっていたら解約や名義変更の手続をしなければいけません。離婚の前後はやることが山のようにあります。

4 おわりに

写真:アフロ

お子さんのためにも、離婚をするなら絶対に3月に離婚をしたいという方は早めに準備をするに越したことはありません。

下準備として、離婚に対する最低限の知識を得ることも重要です。

離婚の準備は早めが鍵となります。

ベストタイミングでの離婚を考えておられる方は、離婚を切り出すタイミングや準備の方法等を含めて、早めに専門家に相談することをお勧めします。

フェリーチェ法律事務所 弁護士

京都生まれ。大阪大学文学部卒業後、大手損害保険会社に入社するも、5年で退職。大手予備校での講師職を経て、30歳を過ぎてから法律の道に進むことを決意。派遣社員やアルバイトなどさまざまな職業に就きながら勉強を続け、2008年に弁護士になる。荒木法律事務所を経て、2017年にスタッフ全員が女性であるフェリーチェ法律事務所設立。離婚・DV・慰謝料・財産分与・親権・養育費・面会交流・相続問題など、家族の事案をもっとも得意とする。なかでも、離婚は女性を中心に、年間300件、のべ3,000人の相談に乗っている。

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