「関西電力第三者委員会」をどう見るか

但木敬一弁護士(元検事総長)(写真::長田洋平/アフロスポーツ)

昨日(10月9日)、関西電力は、八木誠会長と岩根茂樹社長が辞任すること及び但木敬一弁護士(元検事総長)を委員長とする第三者委員会を設置したことを発表した。

多額の金品受領について「被害者的な言い訳」に終始し、続投を表明した10月2日の記者会見の時点で、辞任を表明するのが当然であり、辞任表明は、遅きに失したものだった。この一週間で関電という企業が失った「社会からの信頼」はあまりに大きい。

問題は、この日設置が発表された第三者委員会を、どう見るかである。

一言で言うと、現時点では、肯定も否定もできない。

まず、委員会のメンバーは、委員長の但木氏をはじめ、裁判所、弁護士界という法曹の世界のキャリアという面では「申し分のない人達」である。中立性・独立性や、私が【関電経営トップ「居座り」と「関西検察OB」との深い関係】で問題にしていた「関西検察OBの世界」との関係性という面でも問題となる人は含まれていない。

しかし、76歳の但木氏をはじめ、いずれも高齢であることに加え、少なくとも、不祥事の事実調査という面で経験がある人はいない。

検事総長にも「現場系」の人(ロッキード事件で活躍した故吉永祐介氏が筆頭、最近では、大阪地検不祥事を受けて辞任した検事総長の後任として急遽検事総長となった笠間治雄氏が現場経験の豊富な検事総長だった。)と、「法務官僚系」の人とがいる(数的にはこちらのほうが多い)が、但木氏は、典型的な法務官僚系であり、現場での捜査・公判での経験は、任官後の2、3年だけで、ほとんどないに近い人だ。

検察不祥事を受けて設置された「検察の在り方検討会議」では、検察出身者の委員が二人選ばれたが、一人が、陸山会事件などで厳しく検察を批判していた私、もう一人が但木氏だった。

但木氏は、現場経験には乏しくても、頭脳明晰で理解力に優れ、かつ包容力がある人だ。検討会議の際も、会議外でいろいろ話をする機会が多かったし、その後も何回かお会いしているが、基本的にスタンスが異なる私の意見もよく聞いてくれる。そういう意味では、但木氏は、社会的重要性が極めて大きい今回の関電問題の第三者委員会の委員長に相応しい人物と言える。

しかし、問題は、この委員会の構成からは、誰が中心となって調査を実行し、事実を解明していくのか、どのような調査を行うのかが、全く見えないことだ。

但木氏自身は検事としての捜査経験がほとんどないし、奈良道博氏は、元日弁連会長であり弁護士としてのキャリアは申し分ないが、自ら調査を行った経験があるようには思えない。元東京地裁所長の貝阿彌誠氏も、民事裁判官だった人であり、自ら証拠収集をする調査を行った経験はほとんどないと思われる。

15人の弁護士による調査チームが編成されるとのことだが、その調査を総括するのが誰なのかが明らかにされていない。

そして、何より問題なのは、第三者委員会の調査という方法によって、今回の問題の事実解明が可能なのかということだ。

金品を受領した関電幹部の側の話だけを聞く「調査」であれば、既に1年以上前に行われ、「言い訳」を並べた調査報告書は、遅ればせながら、前回の10月2日の記者会見の際に公表されている。

真相に迫るためには、多額の金品を提供した森山栄治氏や、同氏が顧問を務めていた吉田開発の関係者から話を聞くことが不可欠だが、森山氏は既に死亡しており、吉田開発関係者を第三者委員会の聴取対象にするのかどうかも不明だ。

一般的には、第三者委員会の調査での聴取対象は、設置した企業等の内部者が中心だ。私が委員長を務めた九州電力第三者委員会では、やらせメールの発端となった佐賀県知事の発言に関して、佐賀県関係者も聴取対象にしたが、この場合は、九州電力と関係の深い自治体だったからこそ、協力を得ることができたのであり、今後も、関電との取引関係が続くとは思えない吉田開発側が、聴取に応じるかどうかもわからない。

これらの聴取ができないということになると、「違法ではない」との関電側の主張を崩せるかどうかについては、関電の原発関連工事の発注に関する独禁法違反などの成否がポイントとなる。しかし、この点は公共調達法制や、独禁法の専門知識がないと、関電側の言い分を崩すことは容易ではない。この分野に関しては、検察を含め法曹関係者に精通した人材が極めて少ないことも事実だ。調査チームの弁護士が、その点について十分な能力を持っているのか、法学者の中では公共調達法制のほとんど唯一の専門家である上智大学の楠茂樹教授のブログ記事【関西電力発注の原発関連建設工事:独禁法違反の成否は?】も参考にし、必要に応じ、楠教授による専門的知見によるサポートを受けることも検討すべきであろう。

いずれにせよ、今回の問題は、最終的な法的判断がどうなるかは別として、問題の性格上「犯罪的な実体を持った行為」であり、企業等の組織の不祥事に関して、責任追及や犯罪捜査とは離れた、原因究明・再発防止策の策定を目的とする第三者委員会による調査になじむのかどうかも疑問である。

今回公表された関電の第三者委員会は、緊急のオーダーを受けて、豪華な法曹キャリア「てんこ盛り」の“無色透明の皿”を出してきたというに等しく、これだけでは、この極めて根深い問題の真相解明、違法性の有無の判断ができるのか、全くわからない。