ゴーン氏勾留延長却下決定が検察に与える衝撃 ~根本原因は“不当な再逮捕”にある

(写真:Rodrigo Reyes Marin/アフロ)

 今日(12月20日)が、ゴーン氏、ケリー氏の再逮捕事実での10日間の勾留期間の満了日。検察官は、東京地裁に勾留期間の延長を請求したが、却下決定が出されたと報じられている。

 勾留延長請求は、やむを得ない事由がある場合にのみ認められる。延長請求が却下されたり、延長期間が短縮されるということは、一般の事件では、たまにある。しかし一般的には、日本の刑事裁判官の判断は、検察官寄りで、特に、捜査段階での身柄拘束の問題について、特捜部の主張が認められないということはほとんどなかった。勾留延長請求の却下は、検察にとっては衝撃であろう。

 ゴーン氏は、当初の逮捕事実(5年間の虚偽記載)で起訴され、起訴後の勾留が続いているので、現時点では、起訴後の勾留と再逮捕(直近3年間の虚偽記載)の勾留が重なっている状態であり、再逮捕事実での延長請求が却下されても、ただちに釈放されるわけではない。今後、再々逮捕されることがなければ、起訴後の勾留については、保釈請求が可能となる。

 検察としては、現在の勾留事実(直近3年間の虚偽記載)以外に逮捕できるような事実があれば、それで新たに逮捕しているはずなので、これで捜査終了となる可能性が高い。

 そもそも、今回の事件で、特捜事件では異例の「勾留延長請求却下」に至ったのは、【ゴーン氏「直近3年分再逮捕」なら“西川社長逮捕”は避けられない ~検察捜査「崩壊」の可能性も】でも述べたように、検察が、ゴーン氏らを「直近3年の役員報酬40億円過少記載」で再逮捕するという、常識に反するやり方を行ったことに根本的な原因がある。

 有価証券報告書は毎年度作成・提出するものなので、本来は、年度ごとに「一つの犯罪」が成立する。2011年3月期から2018年3月期までの8年分の有価証券報告書のすべてに虚偽があるのであれば、8個の犯罪が成立することになるが、ゴーン氏の「退任後の報酬の合意」についての容疑は、そのような一般的な有価証券報告書の虚偽記載とは態様が異なり、ゴーン氏と秘書室長らとの間で、毎年、役員報酬の一部について、退任後に別の名目の支払に回すことの「覚書」が作成され、それが日産の総務・財務部門には秘匿されて、密かに保管されていたというのであり、毎年の有価証券報告書の作成・提出は、そのような「覚書」の合意とは無関係に行われていたことになる。

 この8年間にわたる「覚書」の作成は、同一の意思で、同一の目的で毎年繰り返されてきた行為なのであるから、仮に犯罪に当たるとしても、全体が実質的に「一つの犯罪」と評価されるべきものなので、それを、古い方の5年と直近の3年に「分割」して逮捕勾留を繰り返すというのは、同じ事実で重ねて逮捕・勾留することに他ならない。

 このようなことから、裁判所は、形式上は「別個の犯罪」だということで、勾留請求は認めたものの、そのような当初の逮捕事実と実質的に同一の事実で、さらに勾留期間を延長してまで捜査しなければならない事情は認められないとの判断で、勾留延長請求を却下したのだと考えられる。

 これまでの特捜事件であれば、裁判所は、検察官の請求に疑問を持っても、それを受け入れてしまっていたが、今回は、国際的な事件で、不合理な決定を出せば国際社会から批判を浴びるということで、慎重な判断を行ったのであろう。

 次の問題は、弁護側のゴーン氏らの保釈請求に対して裁判所がどのように判断するかである。

 検察官は、ゴーン氏が事実を否認していることから、「罪証隠滅のおそれ」があるとして、強く保釈に反対するだろう。しかし、これまでも繰り返し述べてきたように、ゴーン氏が起訴された罪状は、犯罪の成否にも疑問があり、また、投資判断に与える影響と言う面では凡そ悪質・重大な事件とは言えない。しかも、ゴーン氏、ケリー氏の側が主張しているのは、「退任後の別の名目での支払は確定していない」、或いは「役員報酬とは言えない」という「評価」の問題なので、罪証隠滅の余地はほとんどない。保釈請求が認められる可能性は高いと言えよう。

 西川氏らのクーデターによって代表取締役会長の地位を奪われたとはいえ、取締役の地位に残っているゴーン氏が、保釈後に、日産にどのような「反撃」を開始するのか。事件は、新たな展開を迎える。