Yahoo!ニュース

「不満でも何もしない」は39%に増加…政治に対する意識変化の実情をさぐる

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
選挙に対する国民の意欲はどのような状況にあるのだろうか(写真:アフロ)

国民を代表し、国の施策を執り行うのが政治家であり、その政治家を選出するのが選挙である以上、政治への関心はそのまま選挙への関心に直結することになる。選挙に対する意欲はどのような状況にあるのだろうか。統計数理研究所による定点観測的調査「日本人の国民性調査」(※)の結果を基に、その実情を探ることにする。

まずは複数の設問から政治意向に対する項目を抽出し、賛成意見の回答値を集約し、一つのグラフにまとめることにした。

↑ 政治意向に関する問題(該当項目から抽出、賛成意見回答値)
↑ 政治意向に関する問題(該当項目から抽出、賛成意見回答値)

気になるのは「支持政党なし」、いわゆる「無支持派層」と言われる存在。公開上のデータは1998年以降の5回分しかないが、2008年当時には報告書の「結果のポイント」ページで1953年以降のデータが反映されたグラフがあり、それによると1953~1958年は20%、1973年以降30%強に上昇し、1993年には40%・1998年には上記グラフ上の57%にまで急上昇している。

↑ 政治をめぐる意識の変化(「結果のポイント」2008年当時の報告書から取得)
↑ 政治をめぐる意識の変化(「結果のポイント」2008年当時の報告書から取得)

この動きは政党区分での政治への無関心度の高まりを意味しているが、直近の2018年では58%と過去最高値の60%に近づく値。その動きと連動する形で漸減を続けていた「何をおいても投票する」比率だが、1988年の34%を底値に、それ以降は40%内外の横ばいへと動きを変えつつあったが、2018年では33%にまで下落。選挙への無関心派や投票への忌避感の増加は前世紀末でストップがかかっていたものの、2018年で再び増加の動きとなったようだ。

また「社会に不満がある時でも何もしない」が減るとともに、「いくらよさそうに見える政治家でも、任せきりはよくない。国民同士の論議が必要だ」「不満なら選挙で考慮する」意見が増加していた。投票行動で政治を、社会をよい方向にかじ取りしようという流れがあった。しかし直近の2018年では、「社会に不満がある時でも何もしない」の値が大きく増え、「不満なら選挙で考慮する」が減っている。投票行動から距離を置く、そして政治への無関心を表す動きが見えている。

注目したいのは若年層の意向変化。衆議院総選挙の時の投票意向で見ると、世間一般に言われている「若年層の投票離れ」がひと目で分かるグラフとなっている。なお年齢階層別の値は現時点で直近2018年分が開示されておらず、前回の2013年分までの値の動向を示したものとなる。

↑ 衆議院総選挙時の投票意向(「何をおいても投票する」回答値)
↑ 衆議院総選挙時の投票意向(「何をおいても投票する」回答値)

若年層と表現できる年齢階層、40代は少々厳しいが一応入れて20~40代について太い線・率の表記を行ったが、若い年齢階層ほど投票意向が低い。最も低いのは1998~2003年で、20代は10%・30代は17~23%しか「衆議院総選挙の際には、何をおいても投票する」という回答者がいない。70代以上の6割前後、60代の5割内外と比べれば大きな違いだ。

しかしながら今世紀に入ってから、40代は減少傾向が続くものの、20代から30代には反転の流れが確認できる。30代はさすがに2008年の伸び方が急だったこともあり直近の2013年には再び減少したものの、それでも2003年と比べれば5%ポイントの増加。40代との差はわずか4%ポイントに縮まっている。さらに20代にいたっては2008年比で9%ポイント増の21%にまで増加している。意識の変化以外に単なる底打ち、との見方もできるが、ともあれ若年層における投票意欲の増加の動きが見られるのには違いなく、今後の動向に注目したいところではある。投票への忌避の動きが見られた2018年において、具体的にどの年齢階層が距離を置こうとしているのか、非常に気になるところなのだが。

■関連記事:

【若者の政治への関心度、日本は他国と比べて高い? 低い!?】

【5割強は「ネット選挙運動解禁で若者の政治への関心度が高まる」、では自分自身は?】

※日本人の国民性調査

統計数理研究所が1953年以降5年ごとに実施しているもので、各回ごとに微妙に細部は異なるものの、基本的に20歳以上の男女個人を対象にした標本調査。層化多段無作為抽出法で2254人から6400人の標本を抽出し、個別面接聴取法で実施している。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事