情報技術の進歩に伴い、人の生活はより効率的で便利になっているはずだが、それは同時に各人に要求される時間的な拘束がより強まることをも意味している。当然、個人が覚えるストレス、いらいら感もより一層の高まりを見せる。今回は統計数理研究所による定点観測的調査「日本人の国民性調査」(※)を基に、その「いらいら感」の実情を確認していくことにする。

今回焦点を当てるのは、「1か月の間にいらいらしたか」との設問に対する答え。1993年以降の調査結果が確認できるので、それを確認する。

↑ この1か月の間に「いらいら」したか
↑ この1か月の間に「いらいら」したか

地味ではあるがほぼ確実に増加傾向にあり、いらいら感が募る状況にあるのが分かる。1993年から2018年の25年間で14%ポイントの増加。2013年以降は「いらいらした」人が「していない」人を上回る形となっている。

これを年齢階層別に見ると、全体的な「いらいら」感の底上げは、各年における若年層、特に20代から40代によるものであることが分かる。ただし年齢階層別のデータは現時点で直近2018年分が開示されておらず、前回の2013年分までの値の動向を示したものとなる。

↑ ”この1か月の間に「いらいら」したか”で「はい」の回答
↑ ”この1か月の間に「いらいら」したか”で「はい」の回答

1993~1998年ではすべての階層で増加しているが、1998年以降は「50代以降は横ばい」「40代以下は急勾配で上昇」しているのが分かる。つまりこの10年間において、「40代まではいらいら感が増す」「50代以降はこれまでと変わらない」社会的な変化が起きたと考えてもおかしくはない。また年齢階層別の直近2013年では上昇層に50代が加わる一方で、60代以降は逆にわずかではあるが減少する動きさえ示している。いらいら感の二分化、そしていらいら感ありの若年層の年齢的区切りが少しずつ上昇している雰囲気を覚えさせる。

その「変化」に関するヒントとなりうるのが、2008年分の調査結果において「結果のポイント」として特記解説されていた、他の項目とのクロス集計結果(クロス集計そのものは原則非公開で、普段の公開データのみでは推し量る事はできない)。

↑ 「いらいら」の回答と関係する要因の例(2008年)
↑ 「いらいら」の回答と関係する要因の例(2008年)

経済面の不満・仕事や職業への満足感・生活全体への満足感の3項目で、不満・不安度別に「いらいら」を感じたか否かを再集計したものだが、見事に各項目で不満や不安を多く抱える人ほど、いらいらを覚える割合が高まっている。今調査の報告書では「またこのような関係は、程度の差こそあれ、どの年齢層でも認められる」とあるが、結果として「いらいら」感の推移が一つ上のグラフに出ている通りである以上、少なくとも経済・職・生活全体の面において、20~40代、直近ではそれに加えて50代の間に、不平不満が高まりを見せていると考えてよさそうだ。そしてその感情が「いらいら感」というシグナルの形で表れているのだろう。

今件はあくまでも特定母体に対する調査結果のため、世間全般に対する傾向と完全に一致すると断定することはできない。とはいえ類推するための材料としては十分以上に確証度は高い。

前世紀末期以降若年層から中年層の間に増加する「いらいら」が、何に起因するものなのか。同じ時代を生きているにもかかわらず、「いらいら」率が増えない50代以降、直近ならば60代以降との違いを探せば、そして最後のグラフに掲げた3項目について考え直せば、おのずから結論は導き出せるに違いない。

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※日本人の国民性調査

統計数理研究所が1953年以降5年ごとに実施しているもので、各回ごとに微妙に細部は異なるものの、基本的に20歳以上の男女個人を対象にした標本調査。層化多段無作為抽出法で2254人から6400人の標本を抽出し、個別面接聴取法で実施している。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。