Yahoo!ニュース

正規職員・従業員かパート・アルバイトか…年齢階層別就業地位区分の実情(2022年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
日本の働き人の就業上の地位の実情は(写真:アフロ)

5年に一度実施される国勢調査では多様な切り口で日本の実情を推し量る内容が調査され、その結果が公開される。2022年5月に発表された2020年分調査における就業状態等基本集計の確定報を基に、産業構造や雇用市場、そして景況感の変化でこれまで以上に注目を集めるようになった、就業者の就業地位と就業者数比率の現状を確認する。

2020年における15歳以上の就業者は男性3150万1307人、女性2614万1918人。この就業者という区分には、一般雇用者(雇われている人)以外に役員、雇人のある業主(個人事業主など)、雇人の無い業主(ライターなど一人で活動している個人事業主)、家族従業者などがある。その区分は次の通り。

・雇用者…会社員・工員・公務員・団体職員・個人商店の従業員・住み込みの家事手伝い・日々雇用されている人・パートタイムやアルバイトなど、会社・団体・個人や官公庁に雇用されている人で、次にいう「役員」でない人

・正規の職員・従業員…勤め先で一般職員または正社員と呼ばれている人

・労働者派遣事業所の派遣社員…労働者派遣法に基づく労働者派遣事業所に雇用され、そこから派遣されている人

・パート・アルバイト・その他…(1)就業の時間や日数に関係なくも「パートタイマー」、「アルバイト」又はそれらに近い名称で呼ばれている人

(2)専門的職種に従事させることを目的に契約に基づき雇用され、雇用期間の定めのある「契約社員」や、労働条件や雇用期間に関係なく、勤め先で「嘱託職員」又はそれに近い名称で呼ばれている人

・役員…会社の社長・取締役・監査役、団体・公益法人や独立行政法人の理事・監事などの役員

・雇人のある業主…個人経営の商店主・工場主・農業主などの事業主や開業医・弁護士などで、雇人がいる人

・雇人のない業主…個人経営の商店主・工場主・農業主などの事業主や開業医・弁護士・著述家・家政婦などで、個人又は家族とだけで事業を営んでいる人

・家族従業者…農家や個人商店などで、農仕事や店の仕事などを手伝っている家族

・家庭内職者…家庭内で賃仕事(家庭内職)をしている人

・「不詳」…未回答などで従業上の地位が判定できない場合

いわゆる「非正規雇用」は「パート・アルバイト・その他」「労働者派遣事業所の派遣社員」が該当することになる(「契約社員」は「労働者派遣事業所の派遣社員」内に区分されていることに注意)。

それでは早速、男女別・年齢階層別で人口比率のグラフを作成する。「不詳」は除いて再計算しているので注意すること。

↑ 就業上の地位別15歳以上就業者比率(男女別・年齢階層別)(2020年)
↑ 就業上の地位別15歳以上就業者比率(男女別・年齢階層別)(2020年)

ざっと見で確認すると、男性は2/3近くが正規社員(正規職員・従業員)、1割強が非正規社員(派遣事務所の派遣社員やパート・アルバイトなど)。残りは役員や個人事業主、家族従業者。女性は正規社員4割強・非正規社員4割強と両者の割合がほぼ同じだが、これは20代後半以降に割合が漸増するパート・アルバイトなどが多数を占めている。

男女別に精査すると次の通り。

●男性

・働き盛り(20代後半~50代前半)の正規社員率は約8割、非正規社員は1割足らず。

・30代後半から個人事業、役員の割合が増加の動きを見せる。

・60歳以降は正社員として残っている人は多くなく、嘱託などで在職する人、役員として勤める人、個人で事業をする人など人それぞれの職模様が見て取れる。

●女性

・正規社員率は20代後半がピーク。あとは漸減。

・20代後半以降は、いわゆる結婚退職などで派遣社員として勤めたり、パートやアルバイトに就く人が増加する。

・派遣社員率は20代後半がピークで、あとは漸減。一方パート・アルバイトは30代前半から増加を続け、60代前半でピークとなる。

・65歳以上は役員が1割足らずの他、個人事業主として活躍するなど、男性同様の職模様がかいまみられる。ただし家族従業者の比率が2割近くと多く、夫の手伝いをしているものと想定される。

などの特徴が見えてくる。20代前半はともかく、20代後半以降の非正規社員比率が想像以上に低く、やや驚かざるを得ない。世間一般には下にあるような、全体・男性・女性区分のグラフが示され(場合によっては全体のみで男女別の区分すら無い)、正社員率の低さが示されるからだ。

↑ 就業上の地位別15歳以上就業者比率(男女別)(2020年)
↑ 就業上の地位別15歳以上就業者比率(男女別)(2020年)

しかし上の図と合わせて見ると、男性は正規社員率が2/3近くに違いはないが、非正規社員率は1割強で、残りは役員や自営業。女性は正社員率が4割強でしかないものの、非正規社員のカウントの大部分は中年以降のパート・アルバイトでなされているのが理解できよう。

最後にオマケ的な図ではあるが、最初のグラフを比率ではなく人口換算で、積上げ式のグラフにしたのが次の図。女性のパート・アルバイト率の高さがあらためて見て取れる。

↑ 就業上の地位別15歳以上就業者数(男女別・年齢階層別、地位不詳者のぞく、万人)(2020年)
↑ 就業上の地位別15歳以上就業者数(男女別・年齢階層別、地位不詳者のぞく、万人)(2020年)

また、男性高齢層の独立独歩な姿勢(オレンジ色部分が年齢とともにに増加していくようす)も確認できる。

なお今件は就業者を対象としており、比率計算も就業者がベースとなっている。当然失業者などは含まれていないので、その点を確認した上で見定めていただければ幸いだ。

■関連記事:

【2021年は137万人、前年比で1万人増加・フリーターの推移(最新)】

【正規・非正規就業者数の詳細(最新)】

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事