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二人以上世帯では平均7.4年…パソコンは何年で買い替えられているのだろうか(2022年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
会社業務や複雑な作業では今でもパソコンは欠かせない。その買い替え年数は(写真:アフロ)

少しずつ延びていくパソコンの買い替え年数

さまざまな計算処理をこなしインターネットへの窓口としても大いに役立つパソコンだが、最近ではスマートフォンにその立場を奪われつつある。現状ではパソコンは何年で買い替えされているのだろうか。内閣府の消費動向調査(※)の結果から確認する。

まずは長期時系列データが用意されている二人以上世帯におけるパソコンの買い替えについての推移をグラフ化し、その現状を確認する。なお今件におけるパソコンは、デスクトップパソコンとノートパソコン双方が対象となる。かつては同一視されることもあったタブレット型端末は対象外。

↑ パソコン買い替え年数(二人以上世帯、年)
↑ パソコン買い替え年数(二人以上世帯、年)

多少のぶれはあるものの、全般的には赤い破線による補助線の動向からも分かるように、パソコンの買い替え年数は延びる傾向を示している。もっとも古いデータの2002年から始まる3年間では平均4.2年ほど、直近3年間となる2020~2022年では平均7.1年ぐらい。3年近く延びた計算になる。パソコンそのものの高性能化で買い替えの必要性が薄れたこと、OSのサポート期間延長などで「OSの入れ替えが面倒なので新機種へ買い替え」といった買い替え動機が減少したようだ。

2014年に限ると、2014年4月からの消費税率改定に伴う駆け込み需要、さらにはWindows XPのサポート終了に伴うOS入れ替えの必要性から生じるパソコンそのものの買い替えと、大きな買い替え要因が2つもほぼ同時に発生している。これらの要因で、従来ならもう数年維持できるパソコンを前倒しで買い替えてしまおうとする雰囲気が生じ、買い替え年数が短くなることも予想された。しかし少なくとも年数の上ではそのような事態は生じていない。また2017年ではWindows Vistaのサポートが同年4月11日に終了したが、それに併せる形での前倒し買い替えによる年数短縮も見受けられない。

2021年では新型コロナウイルス流行による在宅勤務の促進により、パソコンの買い替えが必要になる機会が少なからず生じたものと考えられる。以前から考えていたパソコンの更新を前倒しにする人もいただろう。前年比で0.3年の短縮はその影響が出ているのかもしれない。他方直近の2022年ではそのような動きはなく、むしろ2021年の反動もあってか、記録のある中では最長の7.4年を示すこととなった。

これを単身世帯の動向も含め、世帯種類別の動向を比較しやすいようにしたのが次のグラフ。

↑ パソコン買い替え年数(世帯種類別、年)
↑ パソコン買い替え年数(世帯種類別、年)

全般的に単身世帯の方が買い替え年数は短い。1年前後の差が生じている。これは単身世帯の方が使用しているパソコンのライフサイクルが短い事実を表している。

他方2013年から2014年にかけて、両世帯種類間の差は確実に縮まる、厳密には単身世帯の買い替え年数が延びている動きが見られ、2016年ではついに肩を並べるまでとなった。2017年以降も両世帯種類間での差はさほど生じなくなっている。両世帯種類間の差異は事実上無くなったと見てもよいのかもしれない。

駆け込み需要の実情を買い替え理由から

次に示すのは買い替え理由に関する結果。

↑ パソコン買い替え理由(二人以上世帯)
↑ パソコン買い替え理由(二人以上世帯)

↑ パソコン買い替え理由(単身世帯)
↑ パソコン買い替え理由(単身世帯)

両世帯種類とも年々「上位品目」が減り「故障」が増える流れ。これはパソコンが故障しやすくなったからではなく、「上位品目」の回答数が減ったため、相対的に回答率が上がったのがその理由。パソコンの高性能化やOSのサポート期間延長などから、上位機種への買い替えの必要性が低下したことによるもの。Windows3.1から95にシフトした時のような、「パソコンそのものを買い替えて実装しないと時代に乗り遅れる」的な雰囲気は今や無い。

単身世帯ではほぼ一貫して、「上位品目」の比率が落ちている。配偶者によるサポートのある無しに関係無く、パソコンそのものの買い替え必要性が薄れている(と判断されている)可能性が高い。「新OSが出たので必要性が高いとは言い切れないが、よい機会だから新しいパソコンを買って環境を整備しよう」との事例が少なくなっているのだろう。

2014年に限れば上記説明による2理由、消費税率改定と2014年4月9日付でサポートを終了したWindows XPに関する駆け込み需要的特需の影響で、「その他」の急増が生じている。これらはひとえに「消費税率引き上げ分を余計に払わされる前に、せっかくだから前倒しで買い替え」「XPがサポート切れになるし、OSを入れ替えるのも面倒だし、古めのパソコンなのでよい機会だから買い替え」的な回答と考えられる。

2019年の単身世帯で「その他」が大きく延びているのは、上記で挙げたWindows7のサポート終了に伴う先駆け的な買い替えではなく、単なる統計上のぶれの可能性が高い。あるいは某電子マネーのキャンペーンに乗る形で買い替えを決意したのかもしれない。

そして2020年では単身世帯・二人以上世帯ともに、「その他」の割合が4割を超え、過去最大値を示している。買い替え理由としてはもっとも大きなもの。これは上記でも触れたがWindows7が2020年1月14日に延長サポートを終了したため、OSを組み替えるぐらいならば本体を丸ごと買い替えようとする動機によるものと考えられる。さらには2019年10月からの消費税率引き上げを前に、駆け込み的なパソコンの買い替え需要が生じたのも要因にあるかもしれない。これらの理由は「上位品目」でも「故障」でも「住所変更」でもないのは言うまでもない。

他方2021年以降は2020年までと比べ、単身世帯・二人以上世帯ともに「上位品目」の割合が大きな増加を示している。これは上でも触れているが、新型コロナウイルス流行による在宅勤務機会の増加で、自宅パソコンの性能アップが求められたことによる買い替えというパターンが多々生じた結果だと考えられる。

最初のグラフで記されている通り、パソコン業界では高性能化や買い替え必然性の高い新技術・OSが登場しなくなり、買い替えサイクルは少しずつ延びる傾向にある。WindowsのOSにおいて新バージョンが登場するたびに、東京の秋葉原などで大規模イベントが開かれ、テレビ各局が特集を組むような騒ぎが起きることは、もう無いだろう。

今後スマートフォンやタブレット型端末のさらなる普及に伴い、パソコンのウェイトが下がり、ますます買い替え年数の延びが加速化するかもしれない。少なくとも「上位品目が登場したので買い替える必要性を覚える」事例はさらに減るに違いない。

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※内閣府の消費動向調査

今後の暮らし向きの見通しなどについての消費者の意識や各種サービスなどへの支出予定、主要耐久消費財などの保有状況を把握することで、景気動向判断の基礎資料を得ることを目的としている調査。調査世帯は、二人以上の世帯、単身世帯毎に三段抽出(市町村・調査単位区・世帯)により選ばれた8400世帯。調査は毎月1回実施され、その月の15日時点の状況が対象となる。毎月10日前後に調査対象世帯に調査票が届くよう郵送し、毎月20日頃までに届いた調査票を集計する。

毎月調査を実施しているが年1回、3月分において、他の月よりは細部にわたる内容を調査している。その中の項目の一つ「主要耐久消費財の買い替え状況」を今件精査では用いている。これは「対象品目を回答年度(今回の場合は2021年4月~2022年3月)に買い替えをしていた場合、買い替え前の商品はどれだけの期間使っていたか」を尋ねた結果。つまり直近の買い替え実施者における「買い替えまでの年数」が示されることになる。新規に購入した場合や、買い替えが該当時期でなかった場合は回答に加わらない。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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