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50年近くにわたる学校給食費の推移をさぐる(2022年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
楽しい学校給食。その給食費は?(写真:アフロ)

学校給食費は47年で2倍強ほどの上昇

子供達にとって楽しみの一つが学校給食。その学校給食の給食費の実情を、総務省の小売物価統計調査(※)の公開調査結果から確認する。

総務省統計局の小売物価統計調査では、学校給食に関して1975年以降の値が確認できるので、それ以降、年次ベースで数字を取得できる2021年分までのもの(東京都区部小売価格)を逐次抽出していく。さらに2022年分は月次で3月分まで確認できるので、その3月分を暫定的に2022年分として取り扱う。

なお小学校の低学年に関しては2016年12月分をもって調査が終了してしまっている(総務省に確認済み)。よって今件記事では小学校低学年の値は2016年の値が最新のものとなる。

↑ 公立小中学校の給食費(東京都区部、月額、円)(2022年は直近月)
↑ 公立小中学校の給食費(東京都区部、月額、円)(2022年は直近月)

学校給食が戦後再開されたのは1946年であるとされている。しかし法律で正式に制定された(学校給食法)のは1954年。小売物価統計調査の公開値として取得できるのは、給食開始(再開)から20年あまり後をスタートとしているため、給食費の全ぼうを確認するのには、不完全な感は否めない。しかし今回取得できた範囲内で見ても、急激な変化は無く、緩やかな上昇にとどまっていたようだ。

また2020年から急激な下落が生じているが、月次動向を確認すると(グラフ化は略)2020年6月から額面の下落が生じているため、新型コロナウイルス流行による学校の休校などが影響していると考えられる。

一番古い値の1975年当時は、月額で小学校低学年では約1800円、小学校高学年で約2000円強、中学校で2300円近く。これが直近の2022年(小学校低学年は上記の通り2016年)ではそれぞれ3694円・4457円・5036円。いずれも2倍強のプラスにとどまっている。消費者物価の動向もこれに近い動きであることを考えると、それなりに健闘しているといえよう。

消費者物価指数の動向を反映させると

学校給食の場合、単純に額面の移り変わりだけでなく、当時の物価を考慮して考えたほうがよい、とする意見もある。各家計への負担を考えると、単純な価格変動だけでは比較が難しいからだ(50年前の1000円と今の1000円とでは、家計の負担が違うのは言うまでも無い)。

そこで各年の給食費に、それぞれの年の消費者物価指数を考慮した値を反映させることにした。具体的には【1950年と比べて8.51倍…過去70年あまりにわたる消費者物価の推移(最新)】で取得したデータを基に、直近の2022年における消費者物価指数をベースとし、過去の各額面を修正していくことになる(いわゆるウェイトバックというもの)。

その計算の上で作成したのが次のグラフ。よい機会でもあり、最古のデータ1975年から直近の2022年に至る変化率も算出して、別途グラフにした。

↑ 公立小中学校の給食費(東京都区部、月額、2022年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2022年は直近月)
↑ 公立小中学校の給食費(東京都区部、月額、2022年の値を基に消費者物価指数を考慮、円)(2022年は直近月)

↑ 公立小中学校の給食費上昇率(東京都区部)(1975年→2021年(小学校低学年は2016年))
↑ 公立小中学校の給食費上昇率(東京都区部)(1975年→2021年(小学校低学年は2016年))

消費者物価指数を考慮すると給食費は1975年以降むしろ漸減、1990年前後からようやく上昇しはじめるも、その上昇幅はゆるやかであることが分かる。1975年からの上昇率は、小学校低学年でプラス13.4%だが、小学校高学年ではプラス16.3%、中学校ではプラス17.6%となる次第。給食の内容まで精査すれば、値上げの範ちゅうにすら入らない値上げ幅。給食費がいかに「物価の優等生」であるかがうかがいしれよう。

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※小売物価統計調査

国民の消費生活上重要な財の小売価格、サービス料金および家賃を全国的規模で小売店舗、サービス事業所、関係機関および世帯から毎月調査し、消費者物価指数(CPI)やその他物価に関する基礎資料を得ることを目的として実施されている調査。

一般の財の小売価格またはサービスの料金を調査する「価格調査」、家賃を調査する「家賃調査」および宿泊施設の宿泊料金を調査する「宿泊料調査」に大別。価格調査および家賃調査については、全国の167市町村を調査市町村とし、調査市町村ごとに、財の価格およびサービス料金を調査する価格調査地区(約28000の店舗・事業所)と、民営借家の家賃を調査する家賃調査地区(約7000事務所)を設けている。

価格調査および家賃調査の調査市町村は、都道府県庁所在市、川崎市、相模原市、浜松市、堺市および北九州市をそれぞれ調査市とするほか、それ以外の全国の市町村を人口規模、地理的位置、産業的特色などによって115層に分け、各層から一つずつ総務省統計局が抽出し167の調査市町村を設定している。

価格調査については、調査員が毎月担当する調査地区内の調査店舗などに出かけ、代表者から商品の小売価格、サービス料金などを聞き取り、その結果を調査員端末に入力する。家賃調査については、原則として調査員が調査事業所を訪問し、事業主から家賃、延べ面積などを聞き取り、調査員端末に入力する。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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