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政府への要望の最上位は社会保障、次いで新型コロナウイルス感染症への対応

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
できるなら直接政府に自分の声を届けたい。誰にでも要望はあるはず(写真:miya227/イメージマート)

立場や生活環境、心情によって違いはあるが、人は誰でも政府への要望を抱いている。その実情を内閣府の定点観測調査「国民生活に関する世論調査」(※)の結果から確認する。

調査時点において、今後日本国政府はどのようなことに力を入れるべきか、複数回答形式で尋ねたところ、最上位の回答値を示したのは「医療・年金などの社会保障の整備」だった。全体では67.4%の人が望んでいる。

↑ 政府に対する要望(上位抜粋)
↑ 政府に対する要望(上位抜粋)

↑ 政府に対する要望(上位抜粋、前回調査比、ppt)(2021年)
↑ 政府に対する要望(上位抜粋、前回調査比、ppt)(2021年)

最上位の「医療・年金などの社会保障の整備」は前回調査(2020年は新型コロナウイルス感染症の影響で調査が中止されており、2019年調査分が前回調査となっている)と比べると0.7%ポイントのプラス、第2位の「新型コロナウイルス感染症への対応」は65.8%ポイントのプラスだが、これは前回調査時点では新型コロナウイルスが流行しておらず選択肢そのものが無かったことによるもの。次いで「景気対策」が3.0%ポイントのプラス。「新型コロナウイルス感染症への対応」以外では「防衛・安全保障」がもっとも大きな増加となる9.9%ポイントものプラスを示しており、防衛や安全保障問題への関心の高まりがうかがえる。

これを男女別に見たのが次のグラフ。

↑ 政府に対する要望(上位抜粋、男女別)(2021年)
↑ 政府に対する要望(上位抜粋、男女別)(2021年)

男性の方が高い値なのは「景気対策」「防衛・安全保障」「少子化対策」「税制改革」「外交・国際協力」「資源・エネルギー対策」。「防衛・安全保障」などはともかく、「景気対策」でも男性の方が上の値が出ているのは、いくぶんの意外感を覚えさせる。

女性が男性比で大きく伸びているのは「医療・年金などの社会保障の整備」「新型コロナウイルス感染症への対応」「雇用・労働問題への対応」「物価対策」。どちらかといえば男性よりもより日常生活に身近な話題についての要望であり、見方を変えれば現状への不満を抱いているのが分かる。

これを年齢階層別に見ると、各項目の年齢別関心事項が透けて見える。

↑ 政府に対する要望(上位抜粋、年齢階層別)(2021年)
↑ 政府に対する要望(上位抜粋、年齢階層別)(2021年)

「景気対策」「雇用・労働問題への対応」は若年層から中年層までに高い関心が寄せられているが、高齢層では急速に値が低下する。一方で「医療・年金などの社会保障の整備」「高齢社会対策」「自然環境保護・地球環境保全・公害対策」は高齢層の方が高い値となる。回答者自身にとって何が一番望まれるのかを第一に考えてしまい、それがそのまま値に反映されているのが分かる(「我が身恋しや」である)。全体的に要望への関心が低い高齢層でも、「高齢社会対策」以外に「物価対策」において他年齢階層とさほど変わらない、むしろ若年層より高い値を見せているのが好例といえる。

また、「少子化対策」など、一見若年層が無関心な姿勢を見せているように伝えられている問題も、概して若い年齢階層ほど要望への値が高い。「若者は政治や社会に無関心だ」との印象は実情とは異なることを把握できる次第である。無論「雇用・労働問題への対応」は若年層ほど高い値を示し、18~29歳と30代では「高齢社会対策」よりも上の値となっている。切実な問題であることをうかがわせる。

なお今件はそれぞれ独立した項目で「要望のある・無し」を尋ねているが、本来政策は多数項目が連動して行われる(べき)もの。どれか一つの政策のみに焦点を絞って注力しても、他の項目が足を引っ張られることになり(リソースは有限)、結局マイナスの影響を受けた項目が注力した部分にも悪影響を及ぼし、全体的な環境も悪化してしまう。それぞれの項目の連鎖性・波及効果を思慮深く考慮した上で、政策方針が決定され、具体的施策が打たれるべきであることは言うまでもない。

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※国民生活に関する世論調査

直近分は2021年9月16日から10月24日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を持つ人の中から層化2段階無作為抽出法で3000人を選んだ上で、郵送法によって行われたもので、有効回答数は1895人。男女比は906対989、年齢階層別構成比は18~19歳が32人・20代171人・30代209人・40代306人・50代333人・60代312人・70歳以上532人。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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