Yahoo!ニュース

NHKテレビが1番、新聞2番…メディアへの信頼度をさぐる(2021年度版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
新聞やテレビに寄せられる信頼の度合いは?(写真:アフロ)

多様なメディアに囲まれた日常生活。各メディアからの情報を人々はどこまで信頼しているのか。主要メディアへの信頼度の実情を財団法人新聞通信調査会が2021年11月に発表した「メディアに関する世論調査」(※)の報告書から確認する。

主要メディアとしてNHKテレビ、新聞、民放テレビ、ラジオ、インターネット、雑誌を提示し、それぞれのメディアの情報をどの程度信頼しているかについて、「全面的に信頼…100点」「まったく信頼していない…0点」「普通…50点」の基準のもとに点数をつけてもらったところ、平均点がもっとも高かったのはNHKテレビで、69.0点となった。

↑ 各メディアの信頼度(100点満点)(2021年度)
↑ 各メディアの信頼度(100点満点)(2021年度)

情報に関して信頼されているか否かの点では、NHKテレビが今なお高い信頼を受けているのが分かる。

NHKテレビに続く新聞は67.7点とおおよそ同じ値。そして民放テレビが61.3点と続く。同じテレビでも民放テレビはNHKテレビと比べて7.7点も低い値にとどまっており、情報の信頼性における両者の違いを改めて実感させられる。

NHKテレビ、新聞、民放テレビの後にはラジオ、インターネット、雑誌と続くが、インターネットと雑誌は50点未満。50点が「普通」の基準なので、インターネットと雑誌は情報全般に関して信頼されていないことになる。

これを属性別に見たのが次のグラフ。おおよそ順位に違いはないが、各属性における特徴が表れる形となった。

↑ 各メディアの信頼度(100点満点、属性別)(2021年度)
↑ 各メディアの信頼度(100点満点、属性別)(2021年度)

年が上になるに連れて各メディアへの信頼度もおおよそ増加するが、雑誌やインターネットは逆に減少する。そのため、テレビや新聞との差が大きく開くことになる。高齢層はテレビや新聞を「信奉」と表現してよいほどに信頼し、インターネットや雑誌を軽んじる傾向があることが複数の調査結果から知られているが、それが裏付けられる形となっている。

他方若年層はNHK・民放問わずテレビの値がいくぶん低めで(18~19歳は逆に高いが)、インターネットへの信頼度が高い。

最後に経年別。今調査は2008年度から開始されているため、都合14回分の動向が確認できる。

↑ 各メディアの信頼度(100点満点)
↑ 各メディアの信頼度(100点満点)

東日本大震災が発生した2011年3月以降初となる調査は2011年度分(2011年9月実施)だが、その際のラジオの値が有意に増加しており、震災報道でラジオが権威を回復したことが分かる。またNHKテレビも同様の動きを示している。他方民放テレビ、インターネット、雑誌は大きな減少が見受けられ、震災報道により信頼度を落としてしまっていることが分かる。

中期的な動きを見ると、いずれのメディアも信頼度が漸減しているが、2016年度以降は新聞がほぼ横ばいの動きになったようにも見える。ただし直近年度では落ち込んでしまっているが。NHKテレビは同じようなタイミングで似た動きを示していたが、2019年度で大きく減少し、記録の限りでは初めて新聞と順位が入れ替わる事態となった。直近の2021年度では再び新聞を上回り、NHKテレビがもっとも信頼度の高いメディアとなっている。

民放テレビは2018年度年で大きく持ち直したがそこで息切れ。直近年度では前年度比で落ちる。もっとも、かつて競っていたラジオとの差は大きなまま。

インターネットと雑誌は大きな減少の動きの中にあった。インターネットに関しては一連の「フェイクニュース」報道がインターネットの責にあるとの印象が強かったことを思わせる動きではある。もっとも両者ともここ数年では底打ちの気配が感じられる。

今件の信頼度のうちインターネットや雑誌は、玉石混淆な全体の状態を評価したものと考えられる。インターネットの情報すべてが信頼度の上で低いとの認識は、実態とはズレがあることを指摘しておく。ある特定の車種の自動車に大きな欠陥が見つかったとしても、自動車全体が欠陥品ではないのと同じである。

何しろ信頼度の高いNHKテレビや新聞社ですら、それぞれの媒体で提供している内容と同じ情報を、インターネット経由でも配信しているのだから。

■関連記事:

【「本震」から半年、緊急時のマスメディアへの信頼性はどのように変化したか】

【震災時のデマ情報の浸透とその打ち消し情報の広まりをグラフ化してみる(2011年版情報通信白書より)】

※メディアに関する世論調査

直近分となる第14回は2021年8月27日から9月14日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもので、有効回答数は3047人。有効回答者の属性は男性1460人・女性1587人、18~19歳63人・20代237人・30代377人・40代519人・50代512人・60代531人・70代以上808人。過去の調査もほぼ同じ条件で行われている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事