「出版不況」と呼ばれて久しいが、出版物を創生し市場に送り出す出版社と、その出版社による売上はどのような状況なのだろうか。その実情を日販による「出版物販売額の実態」最新版(2021年版)のデータを基に確認する。

最初は出版社総数と、それらの出版社全体の総売上高。

↑ 出版社数と総売上高
↑ 出版社数と総売上高

この19年間で総売上はほぼ半分に減少。出版社数も漸減しているが、それ以上のペースで売上が落ちているのが分かる。

詳しくは後述するが出版社は(他業界同様に)かなり企業規模・売上が少数大手に偏っているため、さほど大きな意味はないのだが、一応参考までに1社あたりの平均売上高を算出すると、売上の減り具合があらためて認識できる。

↑ 出版社1社あたりの平均売上高(億円)
↑ 出版社1社あたりの平均売上高(億円)

ただしこの5年ほどにおいては、底を打ったかのような動きをしているのが興味深い。

より有意義なのは次のグラフ。総売上高と企業数それぞれについて、前年比をグラフ化したものだが、企業数推移(赤線)がマイナス1%から2%にとどまっているのに対し、総売上高の推移(青線)がそれを超えたマイナス値で動いているのが確認できる。「企業数が減っているのだから総売上高も減って当然」との説明はそれほど大きな意味を持たない。もっともこの数年では企業数そのものも大きく減っている、さらには総売上高と同じような動きをしているのは注目に値する。

なお2019年でイレギュラー的な動きをしているのはデータの引用元変更のためであり(2018年までは経済産業省の特定サービス産業実態調査、2019年以降は経済産業省の経済構造実態調査)、出版業界に特需などが生じたわけではない。

↑ 出版社の総売上高と企業数(前年比)
↑ 出版社の総売上高と企業数(前年比)

要は全体的には企業数上での規模縮小以上のスピードで、総売上高の縮小が起きている次第である(ここ数年では逆に、企業数上での規模の縮小の方が大きな動きとなっているが)。

最後は出版社の売上高規模別に区切った上での、その企業数と出版社総売上高に対する構成比。寡占化がどこまで進んでいるのかを視認できる。

↑ 出版社年間売上高規模別出版社数と年間売上高構成比(2020年)
↑ 出版社年間売上高規模別出版社数と年間売上高構成比(2020年)

2020年においては計測対象の出版社は2907社。そのうち売上高が100億円以上の企業は全企業数の1.0%(29社)でしかないが、その1.0%の数の企業による売上高は総売上高の52.5%になる。10億円以上で区切れば企業数では7.4%だが、売上高では84.6%と4/5すら超える。売上高1億円未満の企業は企業数で70.3%とほぼ7割だが、それらの売上をすべて合わせても、総売上高の2.7%に過ぎない。

公開されている限りの決算を見比べると、売上上位の企業の方がそれより下の企業と比べ、業績はよい傾向にある(例:【出版関連業者の経営実態調査(帝国データバンク、2016年11月発表)】)。スケールメリットを活かし、リスクを取ることができ、マルチメディアな展開も容易なので、売上を伸ばせる可能性が飛躍的に高まるからに他ならない。このメリットが有効である以上、今後も寡占化は進行するものと考えられる。寡占化には賛否両論があるものの、出版業界全体の動向を推し量れば、規模の拡大化によって難局を押し切るのも一つの方法論といえよう。

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(C)日販 営業推進室 出版流通学院「出版物販売額の実態2021」

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

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