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SNSは日本では12.6%だが米国は44.0%…高齢者における情報機器の利用実態

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
子供にパソコンの操作を教わる高齢者。教えてくれる人がいればいいのだが(写真:アフロ)

総合的な情報機器の利用実態

新しい情報機器は非常に便利なものだが、既存の仕組みを使い慣れた、新しいものを覚えるのを敬遠しがちな高齢者では、情報機器の利用を避ける傾向があるとも言われている。その実態を内閣府が2021年6月に発表した「高齢者の生活と意識に関する国際比較調査」(※)の最新版から確認する。

次に示すのは調査各国の高齢者における、情報機器の利用実態について複数回答で尋ねた結果。「ファックスで家族などと連絡」「パソコンの電子メールで家族などと連絡」「携帯電話で家族などと連絡(メール含む)」「インターネットで情報収集・ショッピング」「SNS利用」「ウェブサイトやブログの書き込み・開設・更新」「ネットバンキングや金融取引」「インターネットで公的手続き」「いずれも使わず」それぞれの選択肢で当てはまるものを答えてもらっている。携帯電話は従来型携帯電話とスマートフォンの双方を指す。なお項目の並びは調査結果の報告書に準じている。

↑ 情報機器の利用状況(60歳以上、複数回答、国別)(2020年)
↑ 情報機器の利用状況(60歳以上、複数回答、国別)(2020年)

「携帯電話で家族などと連絡(メール含む)」はどの国でも多用されており、7割台から8割台と高い値を示している。それに多くの国では「インターネットで情報収集・ショッピング」が続く形。ただしスウェーデンでは「ネットバンキングや金融取引」の方が高い値を示している。

国別の動向を見ると、スウェーデンにおける各項目での値の高さが目にとまる。「携帯電話で家族などと連絡(メール含む)」では9割近く、「ネットバンキングや金融取引」では7割を超えている。同国のインターネット技術の浸透ぶりは高齢層にまで深く及んでいる、高齢層も積極的に活用しているようすがよく分かる。

ドイツはイメージとは逆の動き。複数の項目で調査国中最低の値を示している。むしろ技術を駆使したシニア層が大勢いる雰囲気があるのだが。「いずれも使わず」の値も一番高い。

日本の「いずれも使わず」はドイツに次ぐ低い値。特にパソコンが関係する項目で値が低い。「パソコンの電子メールで家族などと連絡」「ネットバンキングや金融取引」「インターネットで公的手続き」などでは他国の値の高さを眺め見るような状態となっている。

注目すべきは「ファックスで家族などと連絡」の値。日本よりむしろアメリカ合衆国の方が高い結果が出ている。日本のファックス好きはよく知られているところなのだが。

日本の詳細を確認

続いて日本の詳細を見ていく。まずは男女別。

↑ 情報機器の利用状況(日本、60歳以上、複数回答、男女別)(2020年)
↑ 情報機器の利用状況(日本、60歳以上、複数回答、男女別)(2020年)

「ファックスで家族などと連絡」「携帯電話で家族などと連絡(メール含む)」「SNS利用」などは男女で大きな差異は無い。パソコンを用いる項目では男性が女性の倍ほどの値を示しているが、これは現役時代に就業上利用していた、あるいは趣味などで使っていた習性・環境がそのまま継続しているものと考えられる。女性はむしろ同じような発想で携帯電話の利用率が高そうだが、ウェイトバックの実施の結果、女性はより高齢層で人数比率が高くなる、そして高齢層では身体の衰えから使えない・使わない人が多くなるのが、男女で差異があまり無い要因だろう。

続いて年齢階層別。

↑ 情報機器の利用状況(日本、60歳以上、複数回答、年齢階層別)(2020年)
↑ 情報機器の利用状況(日本、60歳以上、複数回答、年齢階層別)(2020年)

年を取るに従い身体の衰えで情報機器が使いにくくなる、さらに情報機器の普及が今世紀に入ってから、特にこの10年ほどで急速に進んだこともあり、現役世代に触れていなかった人、過去の蓄積が多く新たに仕組みを覚えるのを苦手とする、年が上の人ほど、利用率は低いものとなる。

ただし見方を変えると、現時点で70代でも8割近くは携帯電話で家族などと連絡を取り合っていることになる。音声通話によるものがほとんどと推測されるが、携帯電話が高齢層にとっては欠かせない存在となっていることがうかがえる。

ファックスはパソコンや携帯電話と比べると古くから使われていたことに加え、操作が楽なこともあり、歳を経ても利用率の減少はほとんど見られない、むしろ増えている感すらある。

買い物弱者、過疎化、自動車運転の際の判断ミスや発症による事故、一人暮らし世帯問題など、高齢者と生活用品に係わる問題では、情報機器を用いてサポートすべきだとの意見がある。要は、自らが買い物におもむくのが困難、ハイリスクであるのなら、商品を届けてもらえるインターネット通販を活用してもらうべきとするもの。

この考えは一理あるものの、仕組みを利用するのには情報機器の利便性を理解し、利用方法を習得してもらう必要がある。行政や関連業界による積極的な施策、特に利用によりどれだけ便利になるかの啓蒙が求められよう。

■関連記事:

【高齢者はインターネットやスマホをどの程度活用したいと考えているのだろうか(最新)】

【年齢階層別にパソコンの世帯普及率の実情をさぐる(2019年版)】

※高齢者の生活と意識に関する国際比較調査

5年毎に行われている調査で、最新分は2020年12月から2021年1月にかけて日本、アメリカ合衆国、ドイツ、スウェーデンにおいて、60歳以上の男女(老人ホームなどの施設入所者は除く)に対して調査員による個別面接聴取方式や郵送調査法、電話調査法、訪問依頼・電話聴取法によって行われたもので、有効回答数は各国とも1000件強。それぞれ男女別・年齢階層別・地域・都市規模などを元にウェイトバックが行われている。過去の調査もほぼ同様の様式で実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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