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直近年は13万2440人…老衰による死亡者の実情

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
病気や事故によるものでなければ、皆行き着く先の、自然死と呼ばれる老衰での死(写真:Paylessimages/イメージマート)

老衰による死亡者数の現状

寿命によって亡くなる、自然死とも呼ばれている老衰(死)(※)。高齢化社会の到来に伴い、確実に件数は増えている。日本における実情を厚生労働省の人口動態調査による人口動態統計から確認する。

最新値となる2020年分の老衰による死亡者は次の通り。

↑ 老衰による死亡者(年齢階層別、人)(2020年)
↑ 老衰による死亡者(年齢階層別、人)(2020年)

女性の方が圧倒的に多いのは、ひとえに男性よりも女性の方が長生き(病気などで死ぬことがなく生きながらえる)するからに他ならない。老衰死亡者の動向をよく見ると、79歳までは男性の方が多く、80歳以降は女性の方が多くなる。その歳で老衰にて亡くなるには、それまで存命している、そして他の病症で亡くならない前提があるわけで、それだけ女性が長命であることの裏付けにもなる。

無論、法的、医療設備的に女性を優遇しているわけではない。また今件データのみから生物学上の特定要素を原因として、女性が長生きであることを裏付けたことにもならない。

老衰死の推移をたどる

全体としての老衰死の動向は次の通り。医療技術の発展とともに低下を見せた後、高齢化社会の到来と他の病症による死亡ケースが少なくなったことから、最近では人口10万人対の値は再び上昇に転じている。

↑ 主要死因別にみた死亡率(人口10万対、老衰、人)
↑ 主要死因別にみた死亡率(人口10万対、老衰、人)

次に示すのは、具体的データが取得可能な1999年以降における、年齢階層別の老衰を死因とする死亡者数の動向。「不詳」あるいは60歳未満の老衰死亡者もごく少数確認できるが、今回においてはイレギュラー的ケースとして無視している。また、男女で縦軸の区切りが異なることに注意。

↑ 老衰による死亡者(男性、年齢階層別、人)
↑ 老衰による死亡者(男性、年齢階層別、人)

↑ 老衰による死亡者(女性、年齢階層別、人)
↑ 老衰による死亡者(女性、年齢階層別、人)

今世紀に入ってからは男女ともに老衰死亡者が増加している。特に青系統色(85歳以上)と一番薄い赤色(80~84歳)が大きく伸びており、高齢化に伴い老衰に至って亡くなっている人が増えていることが分かる。

老衰死はある意味自然死と同義であり、生物としての耐久性・長期間の生存性が伸びている感はある。その歳まで他の病態で亡くなることなく、細胞などの劣化・再生寿命で命の火が潰えたからだ。また同時に、医学や社会衛生環境の進歩整備に伴い、病気などで亡くなる人が少なくなったのも大きな要因。

男女別では女性の方が人数が多いのに加え、各年齢階層別の老衰死者数の動向でも、女性の方が高齢層による値が大きいのが分かる。つまりそれだけ女性が長生きをし、自然死により亡くなっていることになる。

ある一定の歳で老衰を死因として亡くなるためには、その歳まで他の病気をはじめとした死因に遭遇しない(事故や事件に巻き込まれる事例も含む)ことに加え、その歳まで細胞や組織の老化が死に至るまでに進んでいないことが必要不可欠となる。例えば90歳で老衰で亡くなるには、75歳の時点で脳卒中で命を落としてもいけないし、80歳の際に交通事故で亡くなっても条件から外れるし、85歳の時点で老衰で亡くなってもいけない。

老衰者の増加、年齢の高齢化はさまざまな理由があるが、その一つに身体自身の機能の向上もあるのかもしれない。過去から現在における経年的な、高齢者を対象とした、肉体面での身体測定結果があれば、その裏付けとなるに違いない。

■関連記事:

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※老衰(死)

歳をとるにしたがって体を構成する細胞や組織の機能が低下することを老化と呼んでいるが、その老化現象により生命活動能力が衰退し、生命維持が困難となり、多臓器不全で死に至った場合、それを老衰死と呼ぶことになる。厚生労働省が発行している【最新版の死亡診断書(死体検案書)記入マニュアル】によると、死因として「老衰」が当てはまるのは「高齢者で他に記載すべき死亡の原因が無い、いわゆる自然死の場合のみ用います」とある。ただし老衰から他の病気を併発しての死亡の場合は、直接死因はその病気、その病気の原因として老衰を記入することとなる。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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