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20~40代は実質的にほぼ全員がスマートフォン利用者…ガラケーとスマートフォンの利用率推移

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
ガラケーからスマートフォンへ。その実情は(写真:Paylessimages/イメージマート)

この数年で携帯電話のメインとなる利用機種はガラケー(従来型携帯電話)からスマートフォンへとシフトし、勢力図も多様な変化を見せている。その実情を総務省情報通信政策研究所が2021年8月に発表した「令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)などの調査結果を基に確認する。

次以降に示すのは主要なモバイル端末である従来型携帯電話、スマートフォン、そしてその両機種の動向と密接な関係があるタブレット型端末における利用率に関して、「情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」においてさかのぼれる過去のデータとなる2012年分以降、都合9年分の推移を記したもの。

まずは従来型携帯電話。なお調査票には「携帯電話(スマートフォンを除く。 PHSを含む)」とあり、厳密にはPHSも含まれる。また、スマートフォンやタブレット型端末とは別個選択肢で質問されており、複数回答形式であることから、複数種類の端末利用者の場合は、それぞれに対して「利用している」と回答するため、全項目を合わせると100%を超える属性は当然存在する。

↑ 従来型携帯電話利用状況(属性別)
↑ 従来型携帯電話利用状況(属性別)

2012年の時点では約7割の利用率を示した従来型携帯電話だが、その翌年には51.0%に急落。それ以降も漸次利用率は減少しつつある。男性よりは女性の方が、高齢層よりは若年層の方が下げ幅が大きい。また、学生・生徒や10代から30代では2012年から2013年にかけて著しい減退(前年比でほぼ半減)が生じており、従来型携帯電話からスマートフォンへのシフトが(両用からスマホ限定も合わせ)一気に生じたことがうかがえる。

他方50~60代、特に60代の利用率減少は緩やかではあったが、2017年以降は小さからぬ下げ幅を示している。中年層まで加速度的に進んでいたスマートフォン化の波が、50代以降にも到来した感はある。それでも60代ではまだ23.8%の人が利用している。

続いてスマートフォン。

↑ スマートフォン利用状況(属性別)
↑ スマートフォン利用状況(属性別)

2012年の時点では32.0%でしかなかった利用率も、直近の2020年では92.7%と9割強にまで達している。男女の差はほとんど無く、年齢階層別では20代はもともと高く、2012年の時点ですでに7割近く。また10~50代は2012~2013年に大きな利用率の上昇が生じており、上記の従来型携帯電話の減少と合わせ、この1年間で大移動が生じたことが分かる。

興味深いのは学生・生徒における上昇率の変化。10代や20代では2012~2013年に大きな上昇が見られたが、学生・生徒では2013年から2014年において24.6%ポイントもの上昇が確認できる。同時期において爆発的な普及を示したコミュニケーション系アプリLINEが、この伸びの一翼を担ったものと推測できる。

直近年では40代で大きな伸びが確認できる。この伸びにより、「20~40代は実質的にほぼ全員がスマートフォン利用者」と表現できるようになったことは注目に値する。

最後にタブレット型端末。こちらは上記2種端末とは縦軸の区切りを異にしている。調査票では「タブレット端末(iPad、 Nexus9、 GalaxyTab など)」とあり、また別項目では「電子書籍リーダー(Amazon の Kindle など)」の表記もあるため、回答者が誤認識しない限りは電子書籍リーダーの類は該当しない。

↑ タブレット型端末利用状況(属性別)
↑ タブレット型端末利用状況(属性別)

スマートフォンほど急速な伸び方ではないが(縦軸の区分が異なることに注意)、少しずつ増加の動きを示している。女性よりは男性の方が伸び方が大きかったが、2017年では女性が大きく伸び、男性を上回ってしまったのが興味深い。ただし2018年以降は男性の方が伸び、再び男性の方が大きな値となっている。直近の2020年では10~50代が1/3を超える利用率。60代でも2割を超えている。40代の大きな伸びは注目に値するが、単なるイレギュラーによる動きかもしれない。

今回精査した3種端末に関する値は、現時点では9年分しか公開値が蓄積されていない。この9年間は該当端末の周辺環境が大きな変化を見せたため、非常に有意義なデータを取得できた次第ではあるが、同時に、9年分ではやや動向を推し量るのには不足している感もある。

来年以降も継続して調査が成され、各端末の値が取得されることを願いたいものだ。

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※令和2年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2021年1月12日から1月18日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォーターサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳を対象とする1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」「令和2年度調査は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴う、11都府県を対象とした緊急事態宣言下で行われたものであることにも留意が必要」と但し書きを入れている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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