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スーパーやコンビニが増え、一般小売店が減る…25年にわたる単身世帯の買い物生活の変化

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 今では一人暮らしの買い物先は、スーパーやコンビニが主流。(写真:アフロ)

自分ですべてを決めねばならない一人暮らしにおける買い物。その買い物はどこで行われているのか、昔と今の違いを、総務省統計局が2021年5月までに発表した全国家計構造調査(※)の結果から検証する。

次以降に示すのは単身世帯における消費支出(税金や社会保険料をのぞいた「世帯を維持していくために必要な支出」)のうち、消費先が調査票上で明記されている金額のルート別金額比率。「その他」は具体的な事例として挙げられている店舗以外の店、例えば美容院、クリーニング店、問屋、市場、露店、行商およびリサイクルショップ、飲食店(レストラン、ファーストフード、居酒屋など)や自動販売機も含まれる。だが2014年分以降の調査では「その他」の値が不自然に高く、それ以前の調査結果とは異なる動きを示しているため、経年変化の確認が難しくなっている。そこで今回は全調査分において「その他」を除外して再算出をした結果で検証する。

また年齢階層別の区分だが、本来は30歳未満・30~59歳・60歳以上の3区分で検証するべきなのだが、2019年分について30~59歳の区分が非公開となっているため、経年推移の検証が可能な30歳未満と60歳以上のみに絞って検証する。

まずは30歳未満。

↑ 費目別支出金額の購入先別割合推移(単身世帯、30歳未満)
↑ 費目別支出金額の購入先別割合推移(単身世帯、30歳未満)

まず目にとまるのが「一般小売店や百貨店の減少と、スーパーの増加」。大型スーパーやコンビニ、昨今ではディスカウントストアや100円ショップの進出と、消費性向の減少で、普通の小売店がビジネス的に立ち行かなくなり、近所の店がシャッターを閉じる場面が増えてきたのが一因。そしてそれらの店と比べて大型店などの方が安く、短い移動距離でまとめて買物が行えるので手間もかからない。メリットが多く、そちらに足を運ぶようになったのも大きな要因。

一方で同じまとめ買いが可能であるにもかかわらず百貨店の割合が減っているのは、価格的な問題が大きいと思われる。また百貨店そのものの絶対数が減っている、容易に足を運べるような近場に無いのも原因だろう。

気になるのはコンビニに関する動き。世間一般には「若者はコンビニを積極活用している」とのイメージがある。しかし今グラフを見る限り、利用金額の割合の面では、昔も今もさほど変わらないことが確認できる。

またネット通販の利用が大きく拡大し、代わりに量販店が減っている。購入時の利便性や品揃えの豊富さなど、ネット通販のメリットはいくらでも見出すことができる。もっともネット通販がシェアを奪った対象は商品構成から考察するに、ディスカウントストアだけでなく、百貨店なども含まれているのだろう。

続いて60歳以上の単身世帯。多くは定年退職前後に配偶者と離別・死別した一人暮らしの人が該当する。勤労者世帯か否か、無職か否か(勤労者はあくまでも被雇用者を意味し、会社役員や自営業者などは勤労者に該当しない)までは問われておらず、それらの属性がすべて混じっている。

↑ 費目別支出金額の購入先別割合(単身世帯、60歳以上、「その他」をのぞいて再計算)
↑ 費目別支出金額の購入先別割合(単身世帯、60歳以上、「その他」をのぞいて再計算)

「一般小売店の減少とスーパーの伸長」の点では30歳未満と変わりはないが、この2系統だけで2/3近い支出を占めているのが特徴的。高齢者は移動の難儀さなどから多店舗での買物を苦手とし、可能ならば少数か所・自宅から短い距離にある場所で生活必需品を調達したいと考えているからだろう。一般小売店は近所の商店街(=短い距離で済む)を意味するが、商品の値引きがされにくいことに加え、閉店が相次ぎ通えない店が増えてきたことを考えれば納得がいく。個々の用品を販売する店が集まった商店街の利便性が低下し、何でもそろうスーパーが近場に登場すれば、そちらを日常生活品の調達先のメインとして選ぶようになるのは理解できる。

「長距離の移動が苦手なら、ネット通販を利用すればよいのでは」との考えもある。しかし高齢者は一般的に他世代と比べると、インターネットを用いたサービスの利用が苦手なのは他の多数の調査結果から明らかになっている通り。今件でも計測項目がはじめて用意された2004年・2009年ともに0.4%でしかなく、直近の2019年でも4.9%にとどまっている。

他方、コンビニの利用がほんのわずかずつではあるが増加している点にも注目したい。価格がスーパーなどよりは高く、商品ラインアップもデパートやスーパーほどではないものの、日用生活品の取り扱い範囲も増えており、何より店舗数の拡大で「身近」さは増している。深夜営業などのメリットを享受する部分は無いが(高齢者は得てして早寝早起き)、単身高齢者の間にも、コンビニは少しずつその存在意義を高めつつある。

概要を世代別にまとめると、単身世帯の消費生活上の買物先としては次の通りとなる。

●30歳未満

・一般小売店とスーパーで約半分。スーパーの利用は増加中。

・量販店の利用も増加だったが、2014年以降は減少に。

・コンビニ利用率は大きな変化なし。

・ネット通販は確実に増加し、百貨店を超えている。

●60歳以上

・一般小売店とスーパーで2/3近く。スーパーの利用は大きな割合で増加中。

・百貨店は漸減。

・コンビニは少しずつ、確実に増加。

・ネット通販はわずかなものでしかない。

繰り返しになるが、若年層のコンビニ利用額比率に増加の傾向が見られないのは興味深い。この点に関して食料の観点で見ると、その動きが顕著に表れており、厳密には食費の上でコンビニ経由の調達をひかえつつあるのが分かる次第ではある。

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※全国家計構造調査

家計における消費、所得、資産および負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布および消費の水準、構造などを全国的および地域別に明らかにすることを目的としている。調査間隔は5年おきで、直近となる2019年は10月から11月にかけて実施されている。対象世帯数は全国から無作為に選定した約9万世帯。調査票は調査員から渡され、その回答は調査票に記述・調査員に提出か、電子調査票でオンライン回答をするか、郵送提出か、調査票ごとに調査世帯が選択できるようになっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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