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貯蓄率男性82.9%・841万円、女性91.0%・719万円…単身勤労者の貯蓄の実情

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
一人暮らしの勤労者における貯蓄の実情は(写真:GYRO_PHOTOGRAPHY/イメージマート)

お金は物品やサービスなどの価値を数量化して保存できる道具で、そのまま手元に置く他に、多様な形で専用の機関に預け入れ、財として積み増していける。これを蓄財や貯蓄と呼んでいるが、一人暮らしの人は二人以上の家族生活をしている人と比べ、貯蓄により懸命にならねばならないとの話もある。何らかのトラブルが生じた際、頼りになる人、金銭面で生活を支えてくれる人がいないからだ。今回は総務省統計局が2021年5月までに発表した全国家計構造調査(※)の結果を基に、一人暮らしのうち勤労者の立場にある人における、貯蓄動向の詳細を確認する。

今件における貯蓄とは金融資産を意味し、持家などは該当しない。貯蓄内容のうち「生命保険など」は養老保険をはじめとした積立型の保険を意味し、掛け捨ての保険は該当しない。「有価証券」は株式が主なものとなるが、他に投資信託、各種公社債も該当する。

まずは貯蓄、具体的には通貨性預貯金(普通預貯金)、定期性預貯金、生命保険など、有価証券、その他(金投資口座や共済組合など。内包されている要素が雑多になりすぎるので、今件では細部は取り扱わない)のうち、その他以外の主要区分別に、保有状況を確認する。貯蓄保有率は、具体的な区分のいずれか最低1つでも保有している人の値。

↑ 貯蓄保有率(単身勤労者世帯、男性、種類別)(2019年)
↑ 貯蓄保有率(単身勤労者世帯、男性、種類別)(2019年)

↑ 貯蓄保有率(単身勤労者世帯、女性、種類別)(2019年)
↑ 貯蓄保有率(単身勤労者世帯、女性、種類別)(2019年)

通貨性預貯金はどの属性も保有率が高く6割から8割台。ただし高齢層はいくぶん減少する傾向にある。それ以外の項目では男女別の差が出ており、例えば定期性預貯金では男性がおおよそ年齢とともに増加していく一方、女性は60代をピークに減少していく。また全般的に有価証券は男性、定期性預貯金や生命保険は女性の方が高い値を示す。

リスク性が高い有価証券は、男性の方が概して高い値を示している。ただし女性も高齢層では高め、むしろ男性よりも高い値を示す年齢階層もある。男女間の貯蓄に対するスタンスの違いが見えてきて興味深い。

なお種類別の分散傾向だが、男性よりも女性、若年層よりも高齢層の方が分散度合いが大きい(種類ごとの保有率を単純合算した値について、大きい方が分散度合いが大きくなる。グラフ化は略)。余力、貯蓄できる余裕が出てくると、色々と分散できるようになるのが原因。

以上は各貯蓄の保有割合。1円でも1億円でも該当する貯蓄を所有していれば所有者としてカウントされる。一方、公開値では保有していない人も含めた平均額が提示されている。そこで保有者率と平均金額から、「保有者の」平均保有額を概算で算出したのが次のグラフ。男性は841万円、女性は719万円となっている。

↑ 保有者による貯蓄保有高(単身勤労者世帯、男性、種類別、万円)(2019年)
↑ 保有者による貯蓄保有高(単身勤労者世帯、男性、種類別、万円)(2019年)

↑ 保有者による貯蓄保有高(単身勤労者世帯、女性、種類別、万円)(2019年)
↑ 保有者による貯蓄保有高(単身勤労者世帯、女性、種類別、万円)(2019年)

男女とも29歳以下の貯蓄が非常に少ない。30代でもさほど多くはない。男性は通貨性預貯金の金額が年齢階層で大きく変化するが、女性は40代以降はほぼ一定金額になる、男性は50代で有価証券を大きな金額で持つようになる、女性の方がバランスの取れた配分をしている雰囲気がある(各種類別の金額の差異は男性の方が大きい)など、さまざまな傾向が見て取れる。また勤労者に限ればだが、70歳以上では男性よりも女性の方が貯蓄金額は大きく、その大部分は定期性預貯金であることもうかがえる。

今件はあくまでも単身者のうち勤労者による平均値で、無職の人などは含まれていない。とはいえ、単身世帯の貯蓄動向、とりわけ若年層や高齢層の懐事情の一端を知る上では大いに役立つに違いない。

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※全国家計構造調査

家計における消費、所得、資産および負債の実態を総合的に把握し、世帯の所得分布および消費の水準、構造などを全国的および地域別に明らかにすることを目的としている。調査間隔は5年おきで、直近となる2019年は10月から11月にかけて実施されている。対象世帯数は全国から無作為に選定した約9万世帯。調査票は調査員から渡され、その回答は調査票に記述・調査員に提出か、電子調査票でオンライン回答をするか、郵送提出か、調査票ごとに調査世帯が選択できるようになっている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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