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ラジオはいつ聴かれているのだろうか、時間での推移(2021年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ ラジオはいつ聴かれているのだろうか。(写真:AFRC_284/イメージマート)

民放AMラジオ局のFM局への転換話で話題を集めているラジオ放送。そのラジオはいつ聴かれているのだろうか。NHK放送文化研究所が2021年5月に発表した2020年国民生活時間調査(※)の報告書を基に、男女別・年齢階層別で確認する。

報告書や公開データベースでは、15分単位で各種行動の行為者率が属性別の形で公開されている。今回はこの値を用い、ラジオの聴取動向を確認する。なお今件のラジオ聴取では、据置型のラジオ機器による聴取に限らず、カーラジオ、さらにはらじる★らじる、radiko(ラジコ)経由からの聴取も該当する。

まずは男性の平日。ちなみに今回のグラフはすべて縦軸の区切りを揃えてあるので、属性別の違いも把握しやすいものとなっている。また年齢階層ではおおよそ青系統色が高年齢層、赤系統色が若年層に色分けしている。

↑ ラジオ行為者率(平日、男性、年齢階層別)(2020年)
↑ ラジオ行為者率(平日、男性、年齢階層別)(2020年)

平日のラジオの聴取は高年齢層ほど多く行われており、若年層、特に20代まではほとんど聴いていない実態が確認できる。30代に入るとやや増えるが、それでも2%前後。60代以降は朝食時間帯と夕食時間帯に多めの人が聴取している。また高年齢層においては同年齢層で多くの人が就寝している時間帯でもそれなりの人が聴取しており、ラジオ好きが高年齢層に一定率いることが分かる。とはいえ、多くてもせいぜい2~3%程度で、テレビなどの他メディアと比べれば、利用している人が少ないことに変わりはない。

なお30代の値が比較的多め、特に午後の夕方から夕食時間帯にかけて大きな値となる傾向が確認できるが、これは新型コロナウイルスの流行により在宅勤務をするようになった人によるBGM的なラジオの使い方の結果が表れているのかもしれない(少なくとも前回調査の2015年ではこのような動きは見られなかった)。

これが日曜になると、いくぶん動きが粗めになるものの、年齢階層別の傾向が際立つ形となる。

↑ ラジオ行為者率(日曜、男性、年齢階層別)(2020年)
↑ ラジオ行為者率(日曜、男性、年齢階層別)(2020年)

60代までは平日より聴取率が下がる。30代までの赤系統色はほとんどゼロ付近の低空飛行。平日では30代で見られた午後の夕方から夕食時間帯にかけての大きな値の動きもない。40代以降はようやく離陸する形だが、それでも朝食時間帯の後から夕方ぐらいまでがメインで、60代にて何とか一定の値を維持するようになる。平日と比べて行為者率が高いのは70歳以上の朝食から午前中ぐらいまで。10~20代の昼食時間帯以降も平日よりは高い値だが、元々平日はゼロかそれに近い値だったので、少しでも聴く人がいれば高くなるのも当然の話。

ラジオ聴取の内容の多くが、少なくとも男性においてはカーラジオによるものであることが、改めて認識できる動きではある。つまり日曜は仕事で自動車を走らせることはないから、自動車を運転する人自身が少なくなり、当然カーラジオを聴く人も少なくなる次第。

女性は中年層以降の年齢階層において、行為者率が男性よりも高めで、かつ日中で比較的一定した値を維持している。

↑ ラジオ行為者率(平日、女性、年齢階層別)(2020年)
↑ ラジオ行為者率(平日、女性、年齢階層別)(2020年)

昼食時間帯に減少、夕食時間帯にかけて失速している動きを見ると、昼間の家事の時間帯に「ながら聴取」をしているようすがうかがえる。また、男性同様、むしろ男性以上に高年齢層における深夜聴取率が高い動きを示しているのには注目したい。高年齢層では2~3%とそれなりの割合の人が、夜更かしをしながらラジオを平日から聴いていることになる。

女性の日曜の動向は次の通り。

↑ ラジオ行為者率(日曜、女性、年齢階層別)(2020年)
↑ ラジオ行為者率(日曜、女性、年齢階層別)(2020年)

日曜は家族が自宅にいるケースも多々あることからか、中年層までの行為者率は平日と比べるとやや少なめ。ただし60代以降はさほど変わらず高い値を示している。70歳以上はむしろ平日より高い時間帯も多々あるほどだ。

ラジオはおおよそ高年齢層、男性よりは女性がよく聴く傾向にあることは、他のラジオ関係の調査でも明らかにされていたが、今回その動きがより細かい形で確認できたことになる。無論、どのようなスタイルでラジオを聴いているのか、どのような種類の番組を対象としているかまでは不明だが、ラジオ(放送)を聴いているか否かの動向を知るのには、大いに役立つ資料となるに違いない。

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※2020年国民生活時間調査

住民基本台帳から層化無作為二段抽出法によって選ばれた10歳以上の日本国民7200人を対象に、2020年10月13日から18日にかけて郵送法によるプリコード方式で行われたもので、有効回答数は4247人分。過去の調査もほぼ同様に行われているが、2015年以前は配布回収法によって実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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