テレビ視聴スタイル「ながら」と「専念」どちらが多いか(2021年公開版)
テレビは便利で利用が容易なメディアであることから、新聞や雑誌と異なり他の行動をしながら視聴されることも少なくない。食事や読書、新聞の閲読、スマートフォンの操作、さらには勉強をしながらテレビを見た経験は誰にもあるはずだ。今回はNHK放送文化研究所が2021年5月に発表した2020年国民生活時間調査(※)の報告書をベースに、平日におけるテレビ視聴動向に関して、「専念した上での視聴」と「他の行動をしながらのながら視聴」の二つの区分から確認していく。
今調査ではテレビ視聴のスタイルについて「ながら」と「専念」それぞれの値を確認しているが、全体平均(テレビ非行為者も含めた)としてはそれぞれの平均視聴時間は次の通りとなる。
全年齢階層を対象としていることもあり、専念の方が多いが、それでも全テレビ視聴時間のうち平日では4割強、休日では約1/3が「ながら視聴」との計算になる。
時間帯によって「ながら」「専念」の視聴傾向に違いはあるのだろうか。世間一般的には食事をしながらテレビを見るというスタイルが容易に想像できるが、その通りならば当然夕食時間帯に「ながら」視聴が増えるはず。まずは平日の夕飯時以降をクローズアップしたのが次のグラフ。
19時までは「ながら」視聴の方が多い。この時間帯は食事を取りながらテレビを見ているものと考えられる。そして19時30分以降になると「専念」視聴が増え、「ながら」視聴を大きく上回っているのが分かる。遅く食事をとったり、パソコンやスマートフォンの操作など他の行動をしながら見る人もいるだろうが、多くはテレビ視聴に専念しているようすが想像できる。
一日単位で「ながら」「専念」の行為者率推移を確認すると、さらに多くのことが見えてくる。
まず「専念」視聴は朝食時間帯に増えた後、昼間においてはほぼ横ばいで、むしろ昼食時間帯は減る動きすら見られる。そして夕食時間帯の「ながら」視聴のピークの後に急激に増加し、夜のテレビ視聴が「夕食時にながら視聴」「夕食を食べ終えて専念視聴」との順で見られているようすが確認できる。
一方「ながら」視聴ははっきりと朝昼夕食時間帯の時に大きくせり上がっており、「食事をしながらテレビを見る」とのライフスタイルが定着している実態が分かる。また、平日は昼食時の行為者率が朝食時や夕食時と比べると減っているが、日曜は朝食時と昼食時の値はさほど変わらずとなっており、昼食時の「ながら」視聴は会社勤め・学生には不可能なようすをうかがわせる(実態をイメージすれば容易に理解はできる。就業中や就学中にテレビを見ながら食事をする状況はあまり考えられない)。
さらに細かい部分だが、例えば「ながら」視聴の朝食時間帯のピークは7時~7時30分、日曜は8時で、日曜の方が遅い。食事との連動性を考えれば、日曜は遅めに起きて睡眠不足を補い、その分朝食時間も遅くなる生活様式が推測できよう。
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※2020年国民生活時間調査
住民基本台帳から層化無作為二段抽出法によって選ばれた10歳以上の日本国民7200人を対象に、2020年10月13日から18日にかけて郵送法によるプリコード方式で行われたもので、有効回答数は4247人分。過去の調査もほぼ同様に行われているが、2015年以前は配布回収法によって実施されている。
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