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テレビの視聴時間は平日3時間強・休日3時間半(2021年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 高齢者からは特に高い支持を集めているテレビだが。(写真:アフロ)

テレビ(番組)の視聴はメディアの多様化とともに減少していく一方で、利用の手軽さを背景に高齢者からは相変わらず高い支持を集めている。その実情は年齢階層別に区分した上での平均視聴時間にも表れている。今回はNHK放送文化研究所が2021年5月に発表した2020年国民生活時間調査(※)の報告書の内容から、その実態を確認していくことにする。

今件ではテレビを見ている人をテレビ行為者と呼んでいるが、これは1日15分以上連続してテレビ(据置型テレビの他にワンセグによる視聴も組む。録画視聴や購入・レンタルソフトの視聴は除く)を見ている人を意味する。要は実質的に回答者が「テレビを見ている」と自認できるほどの視聴をしている人のことを指す。

↑ テレビ行為者率(全体)
↑ テレビ行為者率(全体)

「それではテレビの一日あたりの視聴時間はどれくらいなのか」が今件記事での主題。公開値は「全回答者における平均」であり、視聴していない人(上記グラフにもあるように2割強)も含めた平均値。

まずは全体的な平均時間。当然平日よりも土曜・日曜の方が長い。

↑ テレビの平均視聴時間(テレビ非視聴者も含めた全体、時間:分)(2020年)
↑ テレビの平均視聴時間(テレビ非視聴者も含めた全体、時間:分)(2020年)

平日の昼間は学生・生徒は授業に出ており、勤め人は会社で就業しているのでテレビを見ることはできない。しかし土曜、日曜ともなれば、視聴できる機会を得られる人は格段に増える。行為者率が上がれば、全体における平均時間が上昇するのも当然の話。

これを年齢階層別に見ると、当然ながら高齢者の方が長い傾向が確認できる。こちらもテレビ非視聴者も含めた全体の平均。

↑ テレビの平均視聴時間(男性、時間:分)(2020年)
↑ テレビの平均視聴時間(男性、時間:分)(2020年)

↑ テレビの平均視聴時間(女性、時間:分)(2020年)
↑ テレビの平均視聴時間(女性、時間:分)(2020年)

・平日より土曜、土曜より日曜の方が視聴時間は長い。女性の20~40代でむしろ平日の方が長い傾向が生じているのは在宅の専業主婦による視聴が影響している可能性

・男性は50代以降、特に60代以降は急激に視聴時間が長くなる(定年退職で自宅にいる時間が増える)

・男女とも高齢層、特に50代以降は長時間をテレビ視聴に費やしている

・男性は高齢層でも平日と土日に差異が生じるが、女性は60歳以上ではほとんど違いが出なくなる

興味深いのは男性の動きで、特に60代以降に視聴時間が急増している。これは定年退職や時短による再就職で在宅時間が増え、時間を費やす娯楽としてテレビを頼る動きの結果であることが容易に想像できる。

男女の差異を確認するため、平日と日曜に関して数字を再編集し、グラフにしたのが次の図。

↑ テレビの平均視聴時間(平日、時間:分)(2020年)
↑ テレビの平均視聴時間(平日、時間:分)(2020年)

↑ テレビの平均視聴時間(日曜、時間:分)(2020年)
↑ テレビの平均視聴時間(日曜、時間:分)(2020年)

平日は男性が会社勤めの人の比率が高いため、自然と女性の方が視聴時間が長くなる(未行為者も含めた平均値であることも影響している)。しかし退職者が多数になる70歳以降になると、男性と女性の時間はほぼ同じとなり、差はほとんど無くなる。元々会社勤めでも自宅にいる機会が多い日曜ともなれば、30代以降においては男性の方が視聴時間は長くなるという結果が出ている。

テレビは「ながら視聴」の視聴スタイルに代表されるように、受け手の娯楽として楽しむ際のハードルが極めて低いメディアであることが特徴であり長所の一つ。入院などにより体の身動きが取りにくい環境下では、その特性を大いに体感できる。その点ではラジオも同じだが、多様な情報が得られる点で、テレビはラジオをはるかに凌駕する。

心身ともに色々と無理がきかなくなる高齢者ほど、手軽な娯楽としてテレビを選択して楽しむ。結果として視聴時間が長くなるのも、納得のいく結果に違いない。

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※2020年国民生活時間調査

住民基本台帳から層化無作為二段抽出法によって選ばれた10歳以上の日本国民7200人を対象に、2020年10月13日から18日にかけて郵送法によるプリコード方式で行われたもので、有効回答数は4247人分。過去の調査もほぼ同様に行われているが、2015年以前は配布回収法によって実施されている。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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