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正規社員と非正規社員の賃金差の実情をさぐる(2021年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 正規・非正規問題で一番分かりやすいのは賃金格差。その実情は。(写真:アフロ)

社会現象としてクローズアップされている非正規社員の増加問題。正規・非正規間のもっとも分かりやすい違いは賃金(あらかじめ定められている支給条件・算定方法によって支給された現金給与額から、超過労働給与額(要は残業代)やボーナスなどを除き、所得税などを控除する前の額)にある。その実情を厚生労働省が2021年3月に発表した、賃金構造基本統計調査の報告書から確認する。

今回見ていくのは雇用形態別の賃金の実情。区分を正規社員に該当する「正社員・正職員」と、非正規社員に該当する「正社員・正職員以外」で行う。男女で大きな差異が生じているので、男女それぞれの実情を確認する。また、対象はフルタイム勤務の人が該当する一般労働者であり、パートやアルバイトに代表される、短時間、あるいは限定日数での就労タイプ(短時間労働者)は該当しない。

まずは2020年における雇用形態別・男女別の平均賃金。

↑ 雇用形態別平均賃金(男女別、千円)(2020年)
↑ 雇用形態別平均賃金(男女別、千円)(2020年)

当然の結果ではあるが、正規社員の方が賃金は高い。非正規社員の賃金は正規社員に比して7割前後。

全体として失業率の面では前回年となる2019年と比べて悪化が見られたのが労働市場。

↑ 完全失業率(前年比、学歴別・年齢階層別、ppt)(2020年)(労働力調査から筆者作成)
↑ 完全失業率(前年比、学歴別・年齢階層別、ppt)(2020年)(労働力調査から筆者作成)

賃金の上では雇用形態で大きな差が生じている。もっとも大きな上昇率を示したのは男性の非正規社員で、前年比3.4%の上昇となる。色塗りの都合によりやや見え難いものとなっているが、左側・太枠表示が正規社員、右側・枠線無し表示が非正規社員である。

↑ 雇用形態別平均賃金(男女別、前年比)(2020年)
↑ 雇用形態別平均賃金(男女別、前年比)(2020年)

2020年においては男女で差異はさほどなく、正規社員と非正規社員との間で明暗が分かれる形になっている。正規社員はほとんど上昇していないが、非正規社員は男女とも小さからぬ上げ幅。賃金の上昇は労働力の需要と連動性が高いことから、非正規社員需要が大きかったものと考えられる。

ただし労働力調査で確認した限りでは、2020年における非正規社員の解雇事例が多々生じていることから、新型コロナウイルス流行による雇用市場の変化によって賃金の低い非正規社員が多数解雇され、結果として非正規社員の賃金の平均値が底上げされた可能性は否定できない。

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(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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