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アメリカ合衆国でも共働き(希望)の夫婦は多い。では子供がいると?(2021年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 親の働きぶりを見て子供は育つ。共働きの場合は?(写真:アフロ)

労働への価値観や男女観の変化に伴い、日本では夫婦における共働き世帯が増加している。アメリカ合衆国ではどうなのか、世話が欠かせない子供が夫婦にいる場合における実情を同国の国勢調査局(Census Bureau)の公開値から確認する。

まず示すのは、アメリカ合衆国における夫婦の労働意欲状況を示したもの。具体的には夫と妻それぞれについて、労働力人口(就労中か、労働の意欲と能力があり就職先を探している人)に該当するか否かを示している。該当者全員が就業中ではない、失業者の場合もあることに注意。また、夫婦内に子供がいるか否かは問われていない。

↑ アメリカ合衆国における夫婦内の労働意欲状況(労働力人口であるか否か、対全夫婦組比率)
↑ アメリカ合衆国における夫婦内の労働意欲状況(労働力人口であるか否か、対全夫婦組比率)

おおよそ半数の夫婦は共働き、少なくともその状況を望んでおり、夫のみは2割台でしかない。また妻のみの就労状態を望む夫婦は1割にも満たない。

経年推移を見ると、夫のみの就労希望夫婦は漸減し、1990年代半ば以降はほぼ横ばい。共働きを望む夫婦は漸増していたが、今世紀に入ってからは漸減している。他方、妻のみは漸増しており、男女における夫婦間・就業観の変化を感じさせる。ともあれ、アメリカ合衆国でも夫婦の就業スタイルとしては、共働きがメインであることに変わりはない。

夫婦内に子供がいる場合、状況は大きく変わってくる。まず夫婦自身が高齢層である可能性は低くなり、同時に子供のお守りなどを考慮する必要が出てくる(もっともアメリカ合衆国の場合はベビーシッターが使われるケースが多々あるが)。

次に示すのは18歳未満の子供がいる夫婦の場合。共働きを望む夫婦率は2/3前後と高くなる一方、夫のみの値もやや高いものとなり、妻のみ、「双方非労働力人口」は数%の低い値が維持されている。

↑ アメリカ合衆国における夫婦内の労働意欲状況(労働力人口であるか否か、18歳未満の子供がいる夫婦限定、対全該当夫婦組比率)
↑ アメリカ合衆国における夫婦内の労働意欲状況(労働力人口であるか否か、18歳未満の子供がいる夫婦限定、対全該当夫婦組比率)

↑ アメリカ合衆国における夫婦内の労働意欲状況(労働力人口であるか否か、18歳未満の子供がいる夫婦限定、対全該当夫婦組比率)(2001年以降)
↑ アメリカ合衆国における夫婦内の労働意欲状況(労働力人口であるか否か、18歳未満の子供がいる夫婦限定、対全該当夫婦組比率)(2001年以降)

それでも少しずつ妻のみ就労意欲を持つ夫婦が前世紀末から漸増しており、子供に対する夫婦の接し方への価値観に変化が見えてきた感はある。

子供の年齢を6歳未満に区切り直すと、夫のみの値は増加する。

↑ アメリカ合衆国における夫婦内の労働意欲状況(労働力人口であるか否か、6歳未満の子供がいる夫婦限定、対全該当夫婦組比率)
↑ アメリカ合衆国における夫婦内の労働意欲状況(労働力人口であるか否か、6歳未満の子供がいる夫婦限定、対全該当夫婦組比率)

↑ アメリカ合衆国における夫婦内の労働意欲状況(労働力人口であるか否か、6歳未満の子供がいる夫婦限定、対全該当夫婦組比率)(2001年以降)
↑ アメリカ合衆国における夫婦内の労働意欲状況(労働力人口であるか否か、6歳未満の子供がいる夫婦限定、対全該当夫婦組比率)(2001年以降)

最近にいたり少しずつ「妻のみ」の値が増加しているのは18歳未満の場合と同じだが、それでも「夫のみ」の値が高めに維持されていることに違いは無い。やはり子供が幼い時分は、妻が子供の面倒を見るために家事を仕切ると判断している夫婦が多いのだろう。

繰り返しになるが今件はあくまでも労働力人口における比率推移であり、就業動向では無い。とはいえアメリカ合衆国の失業率が昨今では5%前後(2021年1月時点で6.3%)で推移している状況を見るに、「双方非労働力人口」を除けばおおよそ今件グラフと類似した動きを示していると認識しても問題は無い。

いずれにせよアメリカ合衆国もまた日本同様、むしろ比率動向を見れば日本以上に共働き化が進んでいることになる。環境整備の上で参考になる点があれば、日本も学ぶべき点が多分にあるかもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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