感染者数の増加傾向で先行きに不安…2021年3月景気ウォッチャー調査の実情をさぐる

↑ 新型コロナウイルスのワクチン接種への期待は大きい。(写真:ロイター/アフロ)

現状は上昇、先行きは下落

内閣府は2021年4月8日付で2021年3月時点における景気動向の調査「景気ウォッチャー調査」(※)の結果を発表した。その内容によれば現状判断DI(※)は前回月比で上昇、先行き判断DIは下落した。結果報告書によると基調判断は「景気は、新型コロナウイルス感染症の影響による厳しさは残るものの、持ち直している。先行きについては、感染症の動向を懸念しつつも、持ち直しが続くとみている」と示された。

2021年3月分の調査結果をまとめると次の通り。

・現状判断DIは前回月比プラス7.7ポイントの49.0。

 →原数値では「よくなっている」「ややよくなっている」「変わらない」が増加、「やや悪くなっている」「悪くなっている」が減少。原数値DIは49.5。

 →詳細項目はすべての項目が上昇。「住宅関連」のプラス2.0ポイントが最小の上げ幅。基準値の50.0を超えている詳細項目は「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

・先行き判断DIは前回月比でマイナス1.5ポイントの49.8。

 →原数値では「変わらない」「やや悪くなる」「悪くなる」が増加、「よくなる」「ややよくなる」が減少。原数値DIは48.6。

 →詳細項目は「住宅関連」「雇用関連」が上昇。「小売関連」のマイナス2.9ポイントが最大の下げ幅。基準値の50.0を超えている項目は「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

現状判断DI・先行き判断DIの推移は次の通り。

↑ 景気の現状判断DI(全体)
↑ 景気の現状判断DI(全体)

↑ 景気の先行き判断DI(全体)
↑ 景気の先行き判断DI(全体)

現状判断DIは昨今では海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化を受け、基準値の50.0以下を示して低迷中だった。2020年10月では新型コロナウイルスの流行による落ち込みから持ち直しを続け、ついに基準値を超える値を示したものの、流行第三波の影響を受けて11月では再び失速し基準値割れし、以降2021年1月までは下落を継続していた。直近月となる2021年3月では緊急事態宣言の解除から人の流れが戻りつつあることを受け、上昇を示している。

先行き判断DIは海外情勢や消費税率引き上げによる景況感の悪化から、昨今では急速に下落していたが、2019年10月以降は消費税率引き上げ後の景況感の悪化からの立ち直りが早期に生じるとの思惑を持つ人の多さにより、前回月比でプラスを示していた。もっとも12月は前回月比でわずかながらもマイナスとなり、早くも失速。2020年2月以降は新型コロナウイルスの影響拡大懸念で大きく下落し、4月を底に5月では大きく持ち直したものの、6月では新型コロナウイルスの感染再拡大の懸念から再び下落、7月以降は持ち直しを見せて10月では基準値までもう少しのところまで戻していた。ところが現状判断DI同様に11月は大きく下落。12月以降は上昇に転じたが、直近の2021年3月では感染者数の増加傾向への懸念の強まりから下落を示す形となった。

DIの動きの中身

次に、現状・先行きそれぞれのDIについて、その状況を確認していく。まずは現状判断DI。

↑ 景気の現状判断DI(~2021年3月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の現状判断DI(~2021年3月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

昨今では新型コロナウイルスの影響による景況感の悪化からの回復期待で少しずつ盛り返しを示していたが、2020年11月以降は流行の第三波到来が数字の上で明確化されるに従い景況感は大幅に悪化。今回月の2021年2月は緊急事態宣言の解除が景況感に貢献したようで、「家計動向関連」を中心に前回月比で大きなプラスを示している。

なお今回月で基準値を超えている現状判断DIの詳細項目は「製造業」「非製造業」「雇用関連」。

続いて先行き判断DI。

↑ 景気の先行き判断DI(~2021年3月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)
↑ 景気の先行き判断DI(~2021年3月)(景気ウォッチャー調査報告書より抜粋)

今回月で基準値を超えている先行き判断DIの詳細項目は「サービス関連」「製造業」「非製造業」「雇用関連」の4つ。多くの項目で小幅ながらも下落の動きを見せている。新型コロナウイルスの感染者数の増加が、先行きへの不安感をあおり立てているようだ。

すべては新型コロナウイルス流行の行く末次第

報告書では現状・先行きそれぞれの景気判断を行うにあたって用いられた、その判断理由の詳細内容「景気判断理由の概況」も全国での統括的な内容、そして地域ごとに細分化した内容を公開している。その中から、世間一般で一番身近な項目となる「全国」に関して、現状と先行きの家計動向に関する事例を抽出し、その内容についてチェックを入れる。

■現状

・緊急事態宣言は継続中であるが、1月と比べて若干改善傾向にある。売上が前年比で7割程度に戻っている。その傾向は、都市中心部よりそれ以外の店舗の方が強い(コンビニ)。

・家の中や近場でできる娯楽が主となっており、食を中心とした需要がある。食品の物産催事やバレンタインの企画などは高額品から品薄となり、自分への御褒美需要が顕著にみられる(百貨店)。

・時短営業が解除となり、僅かではあるが、客は戻りつつある。しかし、これまで外出自粛が続いたことにより、外出を控える傾向が強くなっている(一般レストラン)。

■先行き

・前年のどん底に比べたら、入学、卒業需要といったモチベーション需要が回復してきている。また、ふだん着需要も緩やかに以前のような状況に戻りつつある(衣料品専門店)。

・新型コロナウイルスの影響の外出自粛などにより客の買物需要が高まっており、緊急事態宣言の解除をきっかけに少しずつ外出や買物が増えてくると予想される(百貨店)。

・新型コロナウイルスの感染者数の増加傾向に歯止めが掛からず、ワクチンの接種もどのように進むかがみえない。特に、大阪の感染者数の増加が顕著であり、緊急事態宣言の発出も考えられるなど、先行きが不安な状況である(一般レストラン)。

・首都圏で緊急事態宣言が解除されたが、当県での感染者数激増により県独自の緊急事態宣言が発出され、飲食店に向け営業時間短縮の協力要請がなされており、先がみえない(タクシー運転手)。

緊急事態宣言が解除されたことで人の動きが戻り始め、消費性向が改善しつつあるのが確認できる。春休みが重なったのも幸いしたようだ。一方で独自の緊急事態宣言が発出され、それによるマイナスの影響を受けた地域もある。

先行きでは感染者数の増加傾向か今後さらに進み、再び緊急事態宣言の発出もあるのではないかとの懸念が見受けられる。「先行きが不安」「先がみえない」との声が痛々しい。

企業動向でも新型コロナウイルス流行の影響が多々見受けられる。

■現状

・データセンターやIoTに関する引き合いが以前と比べ明らかに増加してきている。年度末という理由もあるかもしれないが、販売量は確実に増加している(通信業)。

・受注量が軒並み前年割れであった。飲食店からの受注減少が大きく響いている(食料品製造業)。

■先行き

・取引先から更に増産を依頼される状況であり、今後は設備投資や雇用も増やす計画である(電気機械器具製造業)。

・新型コロナウイルスの感染拡大第4波が現実味を増しているなか、イベント、観光、飲食、婚礼など、依然として厳しい状況が続く(広告代理店)。

新型コロナウイルス流行でリモートワークによる就業スタイルが急激に進んだことで、IoT関連は特需状態が続いているようだ。他方、人の流れがさえぎられたことでビジネスの停滞が生じた業種は数多く、連鎖的なダメージを受けているところもある。

雇用関連でも新型コロナウイルスの影響がうかがえる。

■現状

・2022年卒業求人は、例年どおり動いている。企業の採用活動は活発に動いている。既に内定を得ている学生も見受けられる(学校[大学])。

■先行き

・弱含みながらも、求人掲載件数に若干の増加傾向がみられる(求人情報誌製作会社)。

雇用市場は景況感を先読みする傾向があるため、「例年どおり」「若干の増加傾向」との表現は喜ばしいものに違いない。

今件のコメントで消費税率引き上げに関するコメントを「消費税」のキーワードで確認すると、現状のコメントでゼロ件(前回月1件)、先行きのコメントで1件(前回月ゼロ件)の言及がある。新型コロナウイルス流行の影響が気になり、消費税の話など二の次になっている感はある。消費税に関する総額表示の義務付けについて先行きコメントで「消費税込みの価格表示になり値上がり感が強いため、皆買い控えるのではないかと考える」とあるのみだ。

他方新型コロナウイルスに関しては現状で433件(前回月364件)、先行きで797件(前回月725件)。凄まじいまでの言及数で、現状・先行きともに前回月から増えている。一方で「ワクチン」に関しては現状で19件(前回月25件)、先行きで230件(前回月379件)の言及がある。今後の状況好転の鍵として大いに期待されているようだが、早期接種への声も大きい。

リーマンショックや東日本大震災の時以上に景況感の足を引っ張る形となった新型コロナウイルスだが、結局のところ警戒すべき流行の沈静化とならない限り、経済そのもの、そして景況感に大きな足かせとなるのには違いない。恐らくは通常のインフルエンザと同等の扱われ方がされるレベルの環境に落ち着くのが終息点として判断されるのだろう。あるいは社会様式そのものを大きく変えたまま、強引な形で沈静化という様式を取ることになるかもしれない。世界的な規模の疫病なだけに、まずはワクチンの接種浸透による平常化への動きを願いたいものだが。

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※景気ウォッチャー調査

※DI

内閣府が毎月発表している、毎月月末に調査が行われ、翌月に統計値や各種分析が発表される、日本全体および地域毎の景気動向を的確・迅速に把握するための調査。北海道、東北、北関東、南関東、甲信越、東海、北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄の12地域を対象とし、経済活動の動向を敏感に反映する傾向が強い業種などから2050人を選定し、調査の対象としている。分析と解説には主にDI(diffusion index・景気動向指数。3か月前との比較を用いて指数的に計算される。50%が「悪化」「回復」の境目・基準値で、例えば全員が「(3か月前と比べて)回復している」と答えれば100%、全員が「悪化」と答えれば0%となる。本文中に用いられている値は原則として、季節動向の修正が加えられた季節調整済みの値である)が用いられている。現場の声を反映しているため、市場心理・マインドが確認しやすい統計である。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。