子育て世代の男性の就労と家事・育児手伝い事情を時間の観点からさぐる(2021年公開版)

↑ 子供がいる世帯での夫の家事・育児分担の現状は。(写真:アフロ)

兼業世帯の増加や育児休業が話題として取り上げられるに連れ、男性の家事・育児手伝いにも注目が寄せられている。そこで「子育て世代における男性の就労時間」と「子供を含む世帯を持つ男性の家事・育児手伝い事情」について、いくつかの指標を算出し、確認していく。

単純に総時間だけでなく、インターバル的な面でも手間がかかる子育てでは、夫婦間の連携・協力が欠かせないものとなる。例えば乳児の夜泣きに関して、場合によっては夜中でも数十分の間隔で起きて、あやす必要が出てくる。多くの世帯は「夫が世帯を収入面で支える就労を行い」「女性は専業(専業主婦)で、あるいはパート・アルバイトをしながら(兼業主婦)家事や育児を行う」。しかし、今世紀に入ってからはやや減少傾向を見せるものの、乳幼児の育児と重なる場合が多い30代で、少なからずの男性は残業を強いられ、週60時間以上の就労状態にあるのが実情。

次に示すのは総務省統計局の労働力調査から必要な値を抽出した、男性の長時間就業の状況推移グラフ。よい機会でもあるので、直近となる2020年分に関してはより詳細な値を併記しておく。なお今件は男性雇用者のうち非農林業就業者で、休業者を除いた人における比率。

↑ 就業時間が週60時間以上の男性雇用者の割合(年齢階層別)
↑ 就業時間が週60時間以上の男性雇用者の割合(年齢階層別)

↑ 就業時間が週60時間以上の男性雇用者の割合(年齢階層別)(2011~2020年)
↑ 就業時間が週60時間以上の男性雇用者の割合(年齢階層別)(2011~2020年)

↑ 就業時間が週60時間以上の男性雇用者の割合(積み上げ式グラフ、年齢階層別)(2020年)
↑ 就業時間が週60時間以上の男性雇用者の割合(積み上げ式グラフ、年齢階層別)(2020年)

2020年時点では例えば男性30代の9.8%、約1/10が週60時間以上労働。60時間未満の90.2%の人も全員が法定労働時間の40時間/週きっかりではなく、その多くが相当量の残業をさせられている。30代から40代の長時間労働理由について資料では具体的説明は無いが、「会社から与えられる仕事量(残業が必要な作業)が増える一方、それを上手にこなす経験の蓄積が不足しており、時間がかかる」「部下を持ち始めるなどで、立場的に残業が多くなる役職にいる人が多い」「積極的に残業をこなして手取りを増やし、家計を支えようとしている」など多数の可能性(しかも恐らくは重複する形)が想定される。

最新の2020年分では、全年齢階層で前年から長時間労働者の比率は小さからぬ減少を示している。2020年に限れば新型コロナウイルス流行による業務時間の短縮要請などが大きく影響しているのだろう。もっとも、例えばリモートワークの場合仕事とプライベートの区別がしにくくなるため、実質的な就業時間は伸びている可能性もある。ともあれ今件「男性の家事・育児への参加」の観点では好ましい傾向ではある。

1日は24時間しか無い。就労時間が長くなることで、必然的に帰宅時間も遅くなり、結果として家事や育児の「機会」は減る。国際的な比較でも、日本は主要先進国と比べて夫の家事・育児時間は少ない。次に示すのは日本と欧米各国における、幼い子供を持つ男性に関する家事や育児の時間を確認したもの。

これらの値は調査時期が国によって大きく異なり、さらに家事内容に関して国によって概念や区分が異なり、社会環境や生活習慣も違い、その上、対象国によっては夫婦世帯以外(父子世帯など)も対象としていることから、あくまでも概算的な比較に留めるレベルの値であることを記しておく。

↑ 幼い子供を持つ夫の家事・育児時間(1日あたり、週全体平均、時間:分)(2021年時点での最新値)
↑ 幼い子供を持つ夫の家事・育児時間(1日あたり、週全体平均、時間:分)(2021年時点での最新値)

育児や家事、さらにそこから連なり婚姻・少子化に関する問題を生み出す一要因として、「妻の家事や育児の手伝いに夫が消極的。その結果、妻の家事育児負担が大きくなる」との意見がある。主要他国との時間の比較を見る限り、比較論としては否定できない。

しかし一方で、「なぜ短時間と成らざるを得ないのか」にもスポットライトを当てなければ、問題の根本的な解決には至らない。「夫の家事育児への参加機会が少ない」原因は今件説明したように「夫の残業が多い」のが一因なのも間違い無い。ただしそれだけでは無く、社会習慣的なものをはじめ他にも多様な要素が考えられる。「子育て世代における夫の就労時間が長い」との事象・現実を見据えるとともに、夫婦を取り巻く環境を包括的な視点から見つめ、夫婦としての子育てを見定めていかねばならないだろう。

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