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現状維持派が6割強、積極参加派は2割強…日本のPKO参加への思惑をさぐる(2020年調査版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 南スーダンでPKO活動に携わる自衛隊員。(写真:ロイター/アフロ)

日本の国連PKOへの参加は賛否両論があり、双方の意見が均衡しているように報じられている。実情としてはどのような状況なのか。内閣府の「外交に関する世論調査」(※)から確認する。

現時点で世界の100以上の国が国連平和維持活動(国連PKO)に要員を派遣しており、日本も他国同様、国際平和協力法に基づき、東ティモール、ハイチなどの国連PKOや、イラク難民支援などのための人道的な国際救援活動、東ティモールやネパールなどでの国際的な選挙監視活動に参加していた。現時点では南スーダンに司令部要員や施設部隊、連絡調整要員を、シナイ半島に司令部要員や連絡調整要員を派遣し、同国の国づくりを支えている。

これらの行動について、日本はこれからも国際社会への人的貢献として、こうした活動に参加すべきと考えるか聞いたところ、現状規模の参加継続を望む人が61.8%となり、6割強の値を示すこととなった。なお2020年分の調査は郵送調査で行われたため、「その他」「分からない」の回答が無く、「無回答」のみが主要選択肢以外の選択となっている(グラフでは便宜上「その他」で表記している)。

↑ 国連平和維持活動への参加について
↑ 国連平和維持活動への参加について

これまで以上の積極参加を望む人は20.2%。言い換えればこの2つを足して「現状を肯定的にとらえている人は8割強」となる。一方、現状よりも消極参加を望む人は11.2%、不参加を望む人は1.7%と「現状を否定的にとらえている人は1割台」と認識できる。少なくとも現時点では日本のPKO活動への参加は肯定的意見が多数と見てよい。

1994年以降の同等調査の結果による、各項目回答率推移を折れ線グラフにしたのが次の図。

↑ 国連平和維持活動への参加について(経年推移)
↑ 国連平和維持活動への参加について(経年推移)

2003年のイラク戦争と、その後の日本による各種PKO活動、そしてそれに関する報道姿勢なども影響し、2003年から数年間はPKOに関する反発が強くなっているのが確認できる。しかしそれも数年で鎮静化。

2013年以降は積極参加派が減り、現状維持・消極参加派が増える動きを示している。2016年で消極参加派が大きく増えたのは、派遣先における南スーダンにおいて2016年7月から内戦が激化し、それに伴い派遣団内部で混乱や意思決定上の問題が露呈したことに起因した動き。2017年以降に値が戻ったのは、その突発的な動きが沈静しつつあるものと考えられる。

中長期的には非参加派は減り、現状維持派が漸増する流れにある。国際情勢や国内世論の変化の表れとみるべきだろう。ただし2003年や2016年のように情勢の変化やその報じられ方によって、世論が大きく揺らぐこともまた事実ではある。

今後日本の国際的な立ち位置の変化(特に日本周辺国の動向の情勢の変動)に伴い、国内のPKO活動への認識がどのように変わるのか、それとも維持されるのか。引き続き注意を払いたいところだ。

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※外交に関する世論調査

2020年10月22日から12月6日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人の中から層化2段無作為抽出法によって選ばれた人に対し、郵送法によって行われたもので、有効回答数は1865人。男女比は909対956、年齢階層別構成比は10代27人・20代186人・30代216人・40代337人・50代312人・60代319人・70歳以上468人。

調査方法について2019年調査までは調査員による個別面接聴取法が用いられていたが、2020年調査では新型コロナウイルス流行という特殊事情により、郵送法が用いられている。調査方法の変更で一部設問の選択肢や回答傾向に違いが生じていることに注意が必要となる(「分からない」が無くなり回答がなかった結果分が「無回答」になっている、回答の意思が明確化されたために一部設問で「無回答」の値が2019年調査結果と比べて有意に少なくなっているなど)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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