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4マスそれぞれの業種別広告費前年比から広告主の姿勢をさぐる(2021年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 紙媒体は公知力の減少に伴い、広告費も減少中との話だが。(写真:Paylessimages/イメージマート)

電通は2021年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2020年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に4大従来型メディア(テレビ、雑誌、新聞、ラジオ。4マス)へ広告を出稿した業種別企業の広告費の前年比を確認する。各業種がそれぞれの媒体に与えている・認識している公知力、ウェイトの変化などが把握できよう。

直近となる2020年における媒体別広告費前年比は次の通り。インターネット広告が堅調、4大従来型メディアとプロモーションメディア広告はすべてマイナスとの結果が出ている。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2020年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2020年)

今調査報告書では広告出稿元(クライアント)を21業種に区分し、4大従来型メディア(テレビメディアにおいては衛星メディア関連は除く。グラフでは地上波テレビと表記)それぞれに対する出稿広告費、各メディアが受領している出稿額全体に対する構成比、そして前年比の一覧が掲載されている。

まずは新聞についてその動きに関するグラフを作成し、状況を確認する。なお次以降4媒体のグラフは、すべて縦軸の区分を同じものとし、状況の比較がし易いようにしている。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(新聞、前年比)(2020年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(新聞、前年比)(2020年)

雑誌とともに軟調さが際立つ新聞だが、その内情としてほとんどの業種でマイナスを示しているのが要因であることが把握できる。最大のマイナス幅を示したのは交通・レジャーで5割近い下げ幅。他にも精密機器・事務用品と自動車・関連品が3割台の下げ幅を示している。新型コロナウイルス流行で景気が悪くなった業種が広告を差し控えた実情がよく分かる動きとなっている。プラスなのは情報・通信のプラス7.9%のみ。

続いて雑誌。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(雑誌、前年比)(2020年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(雑誌、前年比)(2020年)

全体の下げ幅が新聞よりも大きいこともあり、業種別でも一層の状況の悪さが印象的。最大の下げ幅を示しているのは交通・レジャーでマイナス42.2%。他にも3割台の下げ幅の業種が複数見受けられる。家電・AV機器のみがプラスというのも寂しい形。

紙媒体との観点では親和性が高いはずの出版(新聞、雑誌、書籍、語学教材、他の刊行物)ですらマイナス15.1%と大きく下げているのは、何とも皮肉な結果ではある。無論一部は同一コンテンツを用いたインターネット媒体上に流れているのだろうが、それでも紙媒体としての雑誌上の広告が減ったことに違いはない。

次はラジオ。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(ラジオ、前年比)(2020年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(ラジオ、前年比)(2020年)

中には出版のように4割を超す下げ幅を示している業種もあるが、プラスの業種も多い。家電・AV機器のプラス11.4%が最大の上げ幅の業種。他に化粧品・トイレタリー、情報・通信、金融・保険がプラス。

最後は地上波テレビ。

↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(地上波テレビ、前年比)(2020年)
↑ 4大従来型メディアにおける業種別広告費(地上波テレビ、前年比)(2020年)

プラス業種数はラジオよりも少ない3つ。しかし上げ幅は官公庁・団体のプラス36.1%や案内・その他のプラス30.4%と大きなものが目立つ。他方最大の下げ幅を示したのは精密機器・事務用品のマイナス59.8%。ほぼ6割も減っていることになる。他にも交通・レジャーがマイナス43.4%と大きな下げ幅を示し、全体でもマイナス11.3%となってしまうのも仕方がないかな、という感はある。

4マスの中では一番広範囲への媒体力・告知効果が高いのが地上波テレビ。各商品・サービスとの相性のよし悪しもあるが、各業種の勢いが多分に表れているのが興味深い。精密機器・事務用品と交通・レジャーが大きな下げ幅を示しているのは、他のメディア同様に新型コロナウイルス流行の影響だろう。

今回の各グラフとそれぞれの媒体における各種業種への報道姿勢を比較すると、色々と面白い連動性が見えてくる、かもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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