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電通推定の日本の広告費を詳しくさぐる(2021年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 需要減少中の電話帳、広告費も減少中。(写真:アフロ)

電通は2021年2月に日本の広告費に関する調査報告書「20120年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に2020年の広告費の実情を確認する。

まずは2020年の広告費における前年比から、直近の広告費の動向を見ていく。2019年から2020年における広告費の変化を示したものだが、各媒体の広告に関する影響力、クライアントからの評価の変化の度合いがよく分かる結果となっている。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2020年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2020年)

もっとも大きな下げ幅を示したのはプロモーション広告費のうちイベント・展示・映像ほかの区分でマイナス38.8%、次いで同じくプロモーション広告費のうち折込(広告)のマイナス29.1%、さら続いて雑誌のマイナス27.0%。単純に紙媒体など従来スタイルのメディアの軟調さ、相対的な影響力の減少に加え、商品の直接的な売りとなるコンテンツのインターネット媒体へのシフトが、広告費のマイナス化に拍車をかけている。また2020年においては新型コロナウイルス流行の影響でイベントの多くが中止され、人の動きも制限されたことによる影響が大きく出た結果とも解釈できる動きではある(雑誌はイベントなどの告知のための広告掲載減に加え、通勤・通学機会が減ったことによる雑誌そのものの需要減が大きく影響しているのだろう)。

他方インターネット広告費の区分は幅こそ違えどすべてがプラス。新型コロナウイルス流行という特殊な状況が、むしろ広告業界の変化を加速化させた感はある。調査報告書では「通年でEC(Eコマースやネット通販)などが堅調」「インターネットサービスにおける広告費や物販系ECプラットフォーム広告費の成長が押し上げ」などと説明している。

続いてこれを前年比ではなく、単純に金額ベースで示したのが次のグラフ。

↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2020年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2020年)

従来型大手媒体(4マス)、中でもテレビメディアが単体で大きな広告費を占めているのが一目瞭然。個別項目では太刀打ちできず、プロモーションメディア広告費を全部合わせてようやく追い抜くことができる状態。また、インターネット広告費全体がテレビメディアを追い抜いている実情も確認できる。これは2019年で初めて生じたもので、継続した状態ということになる。この勢いならもうすぐインターネット広告費全体が、マスコミ四媒体全体を追い抜くことになるだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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