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2021年1月度外食産業売上は前年同月比でマイナス21.0%

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 緊急事態宣言の再発出で居酒屋業態は大打撃。(写真:西村尚己/アフロ)

日本フードサービス協会は2021年2月25日付で、同協会の会員会社で構成される外食産業の市場動向調査における最新値となる、2021年1月度の調査結果を公開した。それによると同月の総合売上は前年同月比でマイナス21.0%を示した。新型コロナウイルスの感染状況に関して再拡大の動きが強まり、さらに一部地域での緊急事態宣言の再発出で客足が遠のきを見せている。業態間の格差も広がり、中でも緊急事態宣言の対象地域では酒類の提供が11時から19時までに制限されたことで飲酒業態は壊滅的な状態に陥っている。

全業態すべてを合わせた2021年1月度売上状況は、前年同月比で79.0%となり、21.0%の減少を記録した。これは前回月から続く形で11か月連続の減少。前年同月と比べると日取り(休日や土曜日の日数)の上では休日は1日多く、土曜日も1日多く、売上にはプラスの影響。気象環境では雨天日は東京・大阪ともに少なく、平均気温は東京・大阪ともに低めのため、客足への影響判断はプラスマイナスゼロと解釈できる。

他方、新型コロナウイルスの流行による外出自粛や多人数が集まる場所への忌避感は強い。感染者数の増加による第三波の認識がされ、さらに一部地域で緊急事態宣言の再発出が行われたことから、客数の大幅減が継続する状況となっている。また就業者の在宅勤務も継続されており、就業者相手の業態では苦戦が続いている。

結果として客数は全体では前年同月比でマイナス21.8%を示した。一方で客単価はプラス1.1%となり、結果として売上はマイナス21.0%に。前回月の売上高マイナス15.5%より悪化してしまっている。

業態別に詳しく動向を見ると、ファストフードは全体では前回月から継続する形で2か月連続のマイナス(マイナス1.4%)。ハンバーガーチェーン店がメインの洋風だが、そのメイン企業となるマクドナルドは、2014年夏からの相次ぐトラブルをきっかけとした多様な問題点の露呈による低迷から復活の動きを見せている。今回月では「ドライブスルー、テイクアウト、デリバリーが宣言下で伸び、まとめ買いによる客単価上昇も相まって、売上は大幅増加」とあり、テイクアウトやデリバリーの選択肢を持つことへの奏功の影響が大きく、また他業態とは異なり緊急事態宣言すらもプラスに作用し、売上はプラス12.2%と詳細業態区分では唯一のプラスに。

なおマクドナルド単体の2021年1月における営業成績はプラス18.7%(売上、既存店、前年同月比)と大幅なプラスを示している。客数はマイナス3.2%だったが客単価がプラス22.7%と大きく伸びていることから、持ち帰り需要を上手くこなしたようだ(マクドナルドの月次報告書にも「安全で利便性の高いお持ち帰りやドライブスルー、デリバリーを、ご家族など複数で利用される機会が増えた」との表記がある)。

牛丼チェーン店を含む和風は、客数はマイナス12.1%、客単価はプラス5.3%と成し、売上はマイナス7.5%。麺類は客数マイナス24.9%、客単価はプラス1.3%と成し、売上はマイナス24.0%。和風は「高単価の季節メニューがテイクアウトでも好調も、店内飲食の客数減」とあり、冬定番のすき鍋定食が健闘したものの、新型コロナウイルスの感染拡大や緊急事態宣言の再発出で勢いが打ち消されてしまったようだ。持ち帰り米飯/回転寿司は売上がマイナス4.6%。

ファミリーレストラン部門は客数ではマイナス36.7%、客単価はプラス3.3%、売上はマイナス34.6%。全体として「継続して取り組んでいるテイクアウト・デリバリーが伸びたところもあったが、宣言後の全体客数は63.3%」とあり、特に緊急事態宣言の再発出後における客の入りの落ち込みが打撃となったようだ。焼き肉は「夕方からの営業が多い焼き肉(業態店)は休業した店舗もあり」との言及があり(売上はマイナス32.0%)、緊急事態宣言の再発出が大きく響いたようだ。

パブ/居酒屋部門では、パブ・ビアホールの売上はマイナス79.0%、居酒屋の売上はマイナス73.5%。部門全体では売上はマイナス74.9%を示した。「宣言の直撃を受け、営業時間・酒類販売時間などが制限される中、やむなく休業する店舗も多く」と説明されており、新型コロナウイルスの流行と業界の体質との相性の悪さに加え、緊急事態宣言の再発出が大ダメージとなっていることがうかがえる。

ディナーレストラン(高級レストランに代表されるリッチスタイルな専門飲食店)は客数はマイナス50.3%、客単価はマイナス8.4%で売上はマイナス54.5%を示した。「主体となる夜の営業時間制限により、宣言後の売上は急減」との説明がある。

↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2021年1月分)(日本フードサービス協会報告書より抜粋)
↑ 外食産業前年同月比・全店データ(2021年1月分)(日本フードサービス協会報告書より抜粋)

↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2021年1月)
↑ 外食産業売上前年同月比(業態別)(2021年1月)

現在は可処分所得の減少、中食へのシフト、お酒を飲む機会の変化など、居酒屋にはマイナスとなる環境の変化の真っただ中にある。もっとも居酒屋の業態そのものが時代に取り残されたわけではない。牛丼チェーン店の吉野家が運用している「吉呑み」が堅調さを示し、適用店舗数を続々と増やしている。

牛丼業界の動きやディナーレストランの動向を併せ見ると、外食産業でも消費の二極化が進んでおり、中庸的なポジションの市場が縮小している感は否めない。また消費者の中食志向の拡大や高齢化により、客の一部が奪われている・遠のいている雰囲気も見受けられる(特に持ち帰りができないファミリーレストラン)。吉野家やマクドナルドが夕食メニューに力を入れているのも、高齢化に合わせた動きの可能性も否定できない。さらにこれらの動きは総じて、客単価の引き上げという戦略目標にもつながっているとの解釈もできる。客単価の引き上げはファミリーレストランにも生じており、こちらも結果としては売上維持、さらには売上増につながる成果を示している。

新型コロナウイルス流行の影響だが、そもそも論として店舗が自主休業していれば客が来るはずもなく、営業しても時短や販売品の制限を行うところも多く、イートインは客同士の距離を取るために収容効率が悪化、さらに来店客数そのものが三密忌避気運で少ないことから、客数は激減する形となった。企業も従業員のリスク回避で集団での外食をひかえたり、リモートワークの浸透で出社する人が少ないため催しで外食を使う機会が無くなり、これも大きなマイナスの影響を与えている。疫病の影響である以上、仕方がないとはいえ、衝撃的な値には違いない。特にその店舗スタイルや就業者向けのビジネスの色合いが強いパブや居酒屋は大きな痛手が継続している。

次回月の2021年2月分では、新型コロナウイルスの流行第三波の実情を受け、さらに緊急事態宣言が再発出地域のほとんどで継続していることから、今回月同様の悪い値が出てしまうことだろう。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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