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世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度をさぐる(番外編)(2017~2020年分)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 信頼の度合いで重みをつけると結果は変わるのか。(写真:WavebreakMedia/イメージマート)

先行記事【世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度をさぐる(2017~2020年分)】などで国単位の価値観を中長期的に定点観測の形で調査報告している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)の結果を基に、各国の「新聞・雑誌」「テレビ」に対する信頼度を算出してグラフ化した。今回はその算出方法を少し変え、再計算を行うことにする。

先の記事での計算は、選択項目として用意されている「非常に信頼する」「やや信頼する」(以上肯定派)「あまり信頼しない」「まったく信頼しない」(以上否定派)「分からない」「無回答」のうち、「非常に信頼する」「やや信頼する」の肯定派を単純に加算して、その値から「あまり信頼しない」「まったく信頼しない」の否定派の値を引き、各メディアへの信頼度(DI値)を算出したもの。このDI値が大きいほど、その国では対象メディアが信頼されていることを意味する。

↑ 世界各国における新聞・雑誌への信頼度(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017~2020年)
↑ 世界各国における新聞・雑誌への信頼度(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・まったく信頼しない)(2017~2020年)

この計算方法は「加重計算はしない」という大原則に基づいたもの。言い換えればこの値はあくまでも「どれくらいの人数の人が信頼しているのか/いないのか」、つまり「信頼している・していない人の頭数(割合上の)の差」を示している。

↑ 先に算出したDI値では、「総量としてどれくらいの信頼度」ではなく「何人が信頼しているのか・していないのか」を確認している
↑ 先に算出したDI値では、「総量としてどれくらいの信頼度」ではなく「何人が信頼しているのか・していないのか」を確認している

上の図の事例で説明すると、気持ちの強さ、つまり信頼度の強さは肯定・否定とも同じ量の5になる(強い信頼・否定を2、弱い信頼・否定を1とした場合)。ところが頭数では、信頼している人は4人、していない人は3人となり、信頼している人の方が多くなる。

気持ちの強さを数量的に推し量ることは難しい。ましてや単純選択型で選択項目が少ない場合、その度合いを確認することなど不可能に近い。その困難さ、そして「強い思いであろうが弱い思いであろうが、方向性に違いはないのだから、人数としてカウントする時には一人に変わりはない」との考えは間違いではない。

そしてその重みを選択肢の表現のみで数量化することは困難。今回(も含め多くのDI値算出の場合)は単純に、加重計算をせずに回答数のみで算出している。例えるなら、男性ならば老いも若きも、既婚者も未婚者も男性には違いなく、男女比を計算する際には一人として数えるという次第。

一方で「強い意思にはそれなりの評価でDI値に反映させるべし」との意見も理解できる。そこで、「非常に信頼」「まったく信頼しない」という強度の回答における重みを「やや信頼」「あまり信頼しない」の弱度の回答の2倍とした上で、先の2つの算出結果の再計算を行った。その結果が次のグラフ。なお「テレビ」に関しては現在集計中の国が少なからずあるようで、「新聞・雑誌」と比べて国数が少なくなっている。

↑ 新聞・雑誌への信頼度(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・まったく信頼しない、「非常に」「まったく」に重点配分計算)(2017~2020年)
↑ 新聞・雑誌への信頼度(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・まったく信頼しない、「非常に」「まったく」に重点配分計算)(2017~2020年)

↑ テレビへの信頼度(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・まったく信頼しない、「非常に」「まったく」に重点配分計算)(2017~2020年)
↑ テレビへの信頼度(非常に信頼・やや信頼-あまり信頼しない・まったく信頼しない、「非常に」「まったく」に重点配分計算)(2017~2020年)

まず「新聞・雑誌」。プラス領域の国が少数で、マイナスが多勢との構造に変わりはない。また上位陣の国の顔ぶれに変化もない。順位でいくぶん変動が生じ、中国と日本の順位が入れ替わったのが目立つぐらい。また、フィリピンの値が群を抜く形となっている。

「テレビ」に至っては全体的な構成、上位陣の顔ぶれ、順位にもほとんど変わりはない。テレビへの信頼の厚さは日本をはじめとしたアジア圏によく見られるものであることが分かる。もっとも今回取り上げた国の中では、台湾や香港などがマイナス値を示しているが。

この類のグラフにおいては、「大勢を知る」ことが最優先事項。そもそも論として算出方法が(一応合理性のあるものだが)独自のものである以上、最初の算出方法でも特に問題はない。とはいえ、設問次第ではウェイトをかけた上での算出も併記した方が、より実情が分かるものもあるかもしれない。

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【主要国で比較する「ニュースはどこで手に入れるか」】

※World Values Survey(世界価値観調査)

世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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