諸外国の人たちがどのような組織・制度に信頼を寄せているかをさぐる…日本編(2017~2020年分)
諸国の人たちはどのような組織や制度に信頼を寄せているのだろうか。日本における実情を、国単位の価値観を中長期的に定点観測の形で調査報告している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)から確認する。
今回信頼に関する精査対象となる組織・制度は「宗教団体」「自衛隊(国軍)」「新聞・雑誌」「テレビ」「労働組合」「警察」「裁判所」「政府」「政党」「国会」「行政」「大学」「大企業」「銀行」「環境保護団体」「女性団体」「慈善団体」「国連」。
それぞれの組織・制度に対して選択項目に「非常に信頼する」「やや信頼する」(以上肯定派)「あまり信頼しない」「まったく信頼しない」(以上否定派)「分からない」「無回答」が用意されているが、このうち「非常に信頼する」「やや信頼する」を足して、そこから「あまり信頼しない」「まったく信頼しない」を引き、各組織・制度の信頼度(DI値)を算出する。要はこの値が大きいほど、その国では対象の組織・制度が信頼されていることを意味する。
次に示すのはその算出方法で結果を導き出した、日本における各組織・制度に対する信頼度DI。もっとも信頼されているのは選択肢中では「自衛隊」という結果となった。
トップの「自衛隊」以外では「裁判所」や「警察」の信頼度も高い。これら「公的実力行使組織」への信頼度の高さは世界共通だが、自衛隊・警察ともに日本は諸外国と比べても比較的高いポジションにある。
また「宗教団体」への信頼度が異様なまでに低いのも注目に値する。これは日本では無宗教者が多いこと(行事参加的にはむしろ多宗教者が多いとも考えられるが)、影響力が限定されていることなどが要因。むしろ日本人は「日本人教」という名の宗教観の中で生活している、と見てもよいかもしれない。また悪質な新興宗教団体が引き起こした事件が相次ぎ発生し、報じられるのも小さからぬ要因だろう。
行政機関(行政、政府、国会、政党)などの信頼度が押し並べて低いのも日本の特徴。これは不祥事が相次いでいるのはもちろんだが(不祥事は世界各国の行政機関共通の出来事)、それ以上に「異常値ともいえるほど信頼度の高いマスコミ」が反復する形で反体制的な(公明正大な視点とは異なる、理不尽とも受け止められる)主張を繰り返してきたのが、少なからぬ影響を与えていると考えられる。
なお今件調査は直近分は2017~2020年分のデータとして公開されているが、日本の場合は厳密には2019年に調査が行われ取得されたもの。先の震災で日本人の価値観が小さからぬ変化を示したのは周知の事実で、その変化が反映されている。自衛隊の信頼度はプラス68.6%だが、元々今世紀に入ってから大きく値をプラスに転じている中でのもので、震災がさらにけん引したものと考えられる。時系列での比較は誤差が大きくなる可能性を考慮し、値の表記は整数値までに留めている。
世紀の変わり目で調査様式の変更が行われた可能性はゼロではないが、他国の軍関連の値や、日本の警察関連の値を見る限り、その可能性は低く、前世紀から今世紀に変わるタイミングで評価が大きく好転したと見るのが自然である。そして震災が大きなプラス影響を与えたのだろう。
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※World Values Survey(世界価値観調査)
世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。
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(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。