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世界の平均健康寿命の実態をさぐる(2021年分析版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 健康な生活を送れる年齢が健康寿命。(写真:アフロ)

平均健康寿命は日本がトップ

日本は平均寿命が長い国として知られている。一方、寿命の概念には生存していればカウントされる「寿命」の他に、健康的な状態でいる年齢を意味する「健康寿命」も存在する。今回はWHO(世界保健機関)の公開データを元に、健康寿命(Healthy life expectancy (HALE))の実情を確認する。

WHOでは健康余命について「病気やけがなどで完全な健康状態に満たない年数を考慮した、『完全な健康状態』で生活することが期待できる平均年数」と定義している。調査時点でゼロ歳における健康余命が健康寿命となることは、寿命の概念と同じ。WHOではこの概念を2000年に提唱したため、データベースでは2000年当時の値と直近値としては2019年の値が収録されている。

そこでその値を用い、2019年時点の平均健康寿命の上位国を精査した結果が次のグラフ。

↑ 国別平均健康寿命(上位国、WHO公開値より、年)(2019年)
↑ 国別平均健康寿命(上位国、WHO公開値より、年)(2019年)

日本は平均寿命ではトップレベルにあることはよく知られているが、平均健康寿命は低いのではとの話も多々見聞きする。しかし実際には平均健康寿命でも他国から群を抜く形で上位にあることが分かる。直近の2019年ではシンガポールに次ぐ73.55年。

健康寿命は日常的に医療や介護に依存せずに、自分自身で生命を維持でき、自立生活が可能な状態の生存期間を意味する。従って平均寿命に対して平均健康寿命の比率が高いほど、健康に暮らしている期間の割合が高くなり、医療費や介護費が少なく済むことになる(もっとも同時に医療費や介護費が多々必要になる高齢者数も増えるので、国全体としての金額の話は別問題となる)。

2019年の平均健康寿命のトップはシンガポールで74.09年、次いで日本の73.55年、韓国の73.06年と続く。上位陣はおおよそ単純な平均寿命上位国と変わらないのが特徴だが、ある意味当然の結果でもある。なおイギリスは70.13年、アメリカ合衆国は66.12年、中国は68.53年となっている。

いくつかの指標を算出

よい機会でもあるのでいくつか関連する値を確認していく。まずは2000年から2019年にわたり、平均健康寿命がどのような変化をしたかについて。2019年時点の上位国を対象に計算した結果が次のグラフ。2019年時点の順位をそのままにして並べている。

↑ 平均健康寿命上位国における変化(2019年の上位国における2000年の値との差異、WHO公開値より、年)
↑ 平均健康寿命上位国における変化(2019年の上位国における2000年の値との差異、WHO公開値より、年)

韓国の伸びが一番高い値で5.70年。続いてシンガポール、そして少々低めでポルトガルやアイルランドが続く。日本は1.97年のプラスと伸びが低いが、これは元々の値が高めで伸びしろが少ないのが要因。

もう一つは平均健康余命。ゼロ歳時の平均健康余命が平均健康寿命となるが、今件では60歳における平均健康余命を算出したもの。例えば日本では20.39年とあるので、2019年時点で60歳の人は、あと20年ほどは健康な状態を維持できるであろうと試算されている。

↑ 国別平均健康余命(上位国、60歳時、WHO公開値より、年)(2019年)
↑ 国別平均健康余命(上位国、60歳時、WHO公開値より、年)(2019年)

60歳時の平均健康余命では日本がトップ。次いでシンガポール、韓国と続く。随分と差が出ているように見えるが、縦軸の最下部分が18年なので、実のところ上位20カ国でも差異は2年足らず。とはいえ、日本が高い値を示しているのも、また事実ではある。

なお健康余命の定義にある「完全な健康状態」に関する注意点を。「完全な健康状態」を判断するためにいくつかの方法が提起されているが、国によって採用するものが異なり、さらに同じ方法でも国により判断基準が異なっているのが実情ではある。よって今件の平均健康寿命の値は、同一国内における経年変化はともあれ、国ごとの比較に関しては、あくまでも指標値の一つとして参考程度に見ておいた方が無難かもしれない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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