Yahoo!ニュース

新型コロナウイルス流行によって賃貸住宅管理会社に生じた影響をさぐる(2020年12月発表版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ マスクをしながらの電話対応も大変(素材:ぱくたそ)。

現在もなお多方面に影響を与えている新型コロナウイルスの流行。その影響は当然賃貸住宅業界にも生じている。賃貸住宅管理会社側には具体的にどのような状況が生じているのだろうか。今回は賃貸住宅の管理会社による協会「日本賃貸住宅管理協会」の調査「賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)」(※)から、その実情を確認する。

初めに示すのは該当期間(2020年上期、具体的には2020年4月~9月)において、新型コロナウイルスの流行で経営・業務にどのような影響が生じたか、あらかじめ用意されている選択肢で該当するものすべてに答えてもらったもの。

↑ 新型コロナウイルス流行による経営・業務への影響(複数回答)(2020年上期)
↑ 新型コロナウイルス流行による経営・業務への影響(複数回答)(2020年上期)

もっとも多いには「賃料減額請求増加」で48.7%。これは新型コロナウイルスの流行により借主が経済的に困窮(会社の経営難、言及、解雇など)し、家賃の負担がきつい、さらには耐えられない状態となったためだと考えられる。「解約・退去増加」「滞納者増加」「保証会社の代位弁済増加」も原因は同じだろう。

次いで「クレーム・問い合わせ増加」だが、これは在宅勤務や外出自粛などで在宅時間が増えたことによる、騒音問題が顕著化したことや、賃貸住宅の設備などの不備に気が付きやすくなったことによるものと思われる。

「臨時業務増加」は実店舗での接客における感染防止策の実施、対人接触を避けるために電話や電子メールでの対応が増えることによる処理など、従来と比べて追加での人的リソースが求められることによるもの。これは何も賃貸住宅管理会社に限った話ではない。

これを地域別に区分して確認したのが次のグラフ。

↑ 新型コロナウイルス流行による経営・業務への影響(複数回答、地域別)(2020年上期)
↑ 新型コロナウイルス流行による経営・業務への影響(複数回答、地域別)(2020年上期)

「賃料減額請求増加」「クレーム・問い合わせ増加」などで関西圏が突出しているのが目に留まる。また「保証会社の代位弁済増加」は首都圏で少ない結果が出ている。

これらの傾向について報告書では

・首都圏では「解約(退去)が増加」の比率が、他のエリアよりも高い。

・関西圏では「賃料減額請求が増加」「クレーム・問い合わせが増加」「解約(退去)が減少」、「保証会社の代位弁済の増加」が、他のエリアよりも高い。

などと解説している。具体的になぜそうなるのかまでの説明は無いが、それぞれの地域の賃貸住宅の特性や居住者の生活様式が影響しているものと考えられよう。

■関連記事:

【独身働き人の賃貸生活、家賃はおいくら?】

【賃貸住宅の空き家率の推移をさぐる(2020年公開版)】

※賃貸住宅市場景況感調査(日管協短観)

日本賃貸住宅管理協会会員に対して半年ごとに定期的に行われている調査で、直近は2020年10~11月にインターネットを用いて実施。有効回答数は189社(回収率14.0%)。2020年4月1日から2020年9月30日に関する状況についての回答。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事