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ぐいぐい増える中国やインド…主要国の電力消費量をさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 日常生活に欠かせない電気。その消費量は。(写真:アフロ)

日常生活に欠かせない電気。その消費量は国によってどのような違いがあるのだろうか。国際エネルギー機関(IEA:International Energy Agency)の公開資料「Key World Energy Statistics」を基に、主要国の実情を確認する。

まずは各国一人あたりの電力消費量を確認する。次のグラフを見て「日本の8010kWh/人・年ってどれくらいなのだろうか?」と思う人も多いかもしれない。これは通常の世帯が一年間で消費する電力を、世帯人数分で割った電力量と考えればほぼ間違いがない(ちなみにこれは年ベースなので、約21.9kWh/人・日となる。単純に人口で割っただけなので、実際には民間・企業・工場などの消費電力まですべてまとめて平均化してあることに注意)。

↑ 主要国の一人あたりの電力消費量(kWh/人)(2014~2018年)
↑ 主要国の一人あたりの電力消費量(kWh/人)(2014~2018年)

カナダの電力消費量が多いのは、同国が自然資源に恵まれており、電力料金が極めて安価なため。特に水資源に恵まれ、発電量全体のうち水力発電が占める割合が半数を超えている。余剰エネルギーを他国に輸出できる余裕があるほどだ。そのお隣のアメリカ合衆国の電力消費量が多いのはいわずもがな(工業の発展を電力消費が支えている。「エネルギーは国力」を体現した国といえる)。逆に中国やインドは人口そのものが極めて多いのと、都市化・電化エリアの国全体に占める割合が「他国と比べて」少なく、必然的に「一人あたりの」電力消費量も小さなものとなる。

また直近数年における経年変化をみると、新興国における増加が著しい。これはそれらの国の経済・生活水準が向上することで、必然的に消費電力が増加したのが原因。カナダやアメリカ合衆国で直近年で大きく伸びているのは景況感の回復によるものだろうか。

これを国単位で見ると、様相は一変する。国の並びをあえて一つ目のグラフと同じにし、国全体の電力消費量を直近3年間となる2016年から2018年、そして20年近く前の1999年分とを併記した上で作成したのが次のグラフ。1999年の値は一部の国では空白となっている。

↑ 主要国の国別電力消費量(億kWh)(1999年、2016~2018年)
↑ 主要国の国別電力消費量(億kWh)(1999年、2016~2018年)

主な特徴は次の通り。

・直近では電力消費大「国」は中国、アメリカ合衆国、インド、日本、ロシア。

・電力消費量は中期的には伸びる傾向にある。1999年との比較では多くの国で増加。しかし伸び率は国それぞれで、カナダや日本、イギリスなどのようにほとんど動きが無い国もある。景気動向の横ばい化に加え、省エネ化などの技術革新も大きな要因。

・中国の伸びは極めて著しい(19年で約6倍、直近年の前年比でも8.4%増)。インドがそれに続く伸び。

最後に、さらに一部の国に関して過去10年分の動きを追ったのが次のグラフ。

↑ 主要国の国別電力消費量(億kWh)(2009~2018年)
↑ 主要国の国別電力消費量(億kWh)(2009~2018年)

中国やインドにおいて近代化に伴う電力消費量の増加が著しい。他国がほぼ横ばいなのに対し、インドが上昇、中国がそれ以上に急カーブを描いて上昇しているのがはっきりとつかみ取れる。

これらの実情を見るに、「国単位で電力消費量を考えるのはナンセンス。人口が多いから消費量も多いのは仕方がない」と考えるべきなのか、それとも「世界規模で電力問題を考える場合には、結局電力をどれだけ使うかが問題。同じ施策が適用される範囲である、国単位の消費で考察すべき」とすべきなのかが頭に思い浮かぶ。難しい問題には違いない。

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「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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