日本国内の生乳生産量の推移をさぐる(2020年公開版)

↑ 酪農家での搾乳。日本国内全体ではどれほどの量になるのか。(写真:つのだよしお/アフロ)

国内生乳生産量は減少中

昨今では定期的に牛乳や乳製品不足、そしてその逆の過剰生産が問題視されている。それでは原材料となる生乳の国内生産量はどのような推移を見せているのだろうか。今回は農林水産省が発表している牛乳乳製品統計調査の結果を基に、その実情を確認していくことにする。

次に示すのは日本国内での生乳の生産量。縦軸の一番下がゼロではなく650万トンになっていることに注意。

↑ 国内生乳生産量(万トン)
↑ 国内生乳生産量(万トン)

いわゆる金融危機に伴う資源価格の高騰で、ランニングコストが上昇、乳製品不足が問題視されたのが2008年。しかしそれ以前から生乳の生産量は漸減していることが分かる。これは少子化や食生活の変化に伴い、牛乳や乳製品の需要が減少したこと、そしてコスト高・採算性の問題による生産業者の減少などが要因。昨今では(収益性を遠因とする)後継者不足も指摘されている。

文字通り牛乳や乳製品は多分に「生もの」であるだけに生産調整が難しい(長期保存が難しいため)。それゆえに株式市場の相場を見るようなもので、その推測が上手くいかないことが生じるのは仕方が無い。

また昨今ではエネルギーコストの増加と牛乳需要の低迷に伴い、かつての金融危機の時以上に、生産側のそろばん勘定は厳しいものとなっている。詳しくは別の機会に譲るが、中長期的に乳用の牛を飼う畜産農家は減少し続けており、それに伴い乳用の牛の数も減少。生産調整が難しい状況なのも事実ではある。

飲料用が減り、乳製品向けは漸増

よい機会なので、この生乳の利用方法別の生産動向を確認していく。要は日本国内で生産された生乳がどのような用途で使われていくかの推移を見たものだ。まず現時点でもっとも新しいデータとなる2019年分について。

↑ 生乳の用途別処理比率・量(万トン)(2019年)
↑ 生乳の用途別処理比率・量(万トン)(2019年)

半数強が飲料としての牛乳向け、残り半数近くが乳製品に加工される。乳製品向けのうちチーズやクリーム向けがおおよそ半数で、残りはそれ以外。例えばアイスクリームやカスタードプリン、練乳などがよい例である。また育児用粉ミルクもこちらに含まれる。

続いてデータが取得可能な1985年分以降の経年動向。

↑ 国内生乳生産量(積み上げグラフ、詳細種類別、万トン)
↑ 国内生乳生産量(積み上げグラフ、詳細種類別、万トン)

1990年初頭まで飲用牛乳などは漸増していたがその後横ばい、2005年以降は明確な形で減少をきたしている。一方で乳製品向けはほんのわずかずつではあるが漸増しているものの、飲用牛乳の減少分を補うまでには至らず、結果として生乳の生産量全体もまた減少し続ける形となっている。ここ数年では飲用牛乳がやや増加に転じているのが目に留まる。

直近2019年分の生産量は約730万トン。これは1980年台後半の水準とほぼ等しい、いやむしろそれより下回っている。だが需要は大きく変化しており、飲用の牛乳が30万トンほど減り、その分乳製品向けが増えている。食生活の様式が変わったことを示す一つの指標ともいえよう。

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