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メディアの信頼度を日本国内の政治や経済問題の情報源としての観点からさぐる(2020年公開版)

不破雷蔵「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者
↑ 色々なメディアがあるが、そのメディア単位での信頼度は。(写真:Panther Media/アフロイメージマート)

4マスでは雑誌のみが信頼できない判定

実際には情報の正確さはどこが伝えるかによるものだが、メディアベースでも信頼が多分に割り振られている。今回は総務省が2020年9月に情報通信政策研究所の調査結果として公式サイトで発表した「令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査」(※)の公開値を基に、日本国内の政治や経済問題の情報源としての観点から、各メディア単位での信頼の度合いを確認する。

まずは調査対象母集団全体の平均値。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(政治・経済問題(国内))(2019年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(政治・経済問題(国内))(2019年)

新聞の信頼度が一番高く、ついでテレビとラジオがほぼ同率、雑誌は4マスの中では一番低い値となる。雑誌が低いのはネタ系、ゴシップ系の雑誌も合わせてイメージされるのが原因だろう。

インターネット系の選択肢ではインターネットニュースサイトが一番高く1.71となり、雑誌を上回っている。一方でソーシャルメディアや動画共有サイト、ブログなどは低め。信頼できる・できないの境界線は1.50と考えることができるので、雑誌とともにソーシャルメディアや動画共有サイト、ブログなどは一般的に信頼できない範ちゅうに入ることになる。

属性別の実情確認

これについて回答者を多様な属性に区分し確認していく。まずは男女別。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(政治・経済問題(国内)、男女別)(2019年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(政治・経済問題(国内)、男女別)(2019年)

男女で大きな違いは無いが、ほとんどのメディアで女性がやや高い値を示しているのが興味深い。男性が国内の政治・経済問題にかかわる情報そのものへ不信感を抱いているのか、あるいは女性が広い心で情報を受け止めているのか。

続いて年齢階層別。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(政治・経済問題(国内)、年齢階層別)(2019年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(政治・経済問題(国内)、年齢階層別)(2019年)

いくつかの凸凹が生じているが、おおよそ低年齢ほど信頼度が低く、年が上になるに連れて信頼度が高くなる傾向がある。ただしソーシャルメディア、動画配信・共有サイト、ブログ・その他サイトに限れば真逆の動きを示している。インターネットニュースサイトはインターネットによるものにもかかわらず低年齢ほど信頼度が低い結果が出ているのは、情報の発信元が多分に新聞やテレビなどの4マスだからだろう。

就業形態別ではどうだろうか。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(政治・経済問題(国内)、就業形態別)(2019年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(政治・経済問題(国内)、就業形態別)(2019年)

フルタイムの就業者は全体的に他の就業形態の人と比べ、信頼度が低めに出ることが多い。他方、パート・アルバイトや専業主婦(夫)は他の属性よりもやや高めの値が出るケースが多いが、これは多分に女性が占めているからだろう。無職で高い値が出ているのは多分に定年退職後の60代が占めるからに他ならない。

最後は世帯年収別。

↑ 普段利用している情報源における信頼度(政治・経済問題(国内)、世帯年収別)(2019年)
↑ 普段利用している情報源における信頼度(政治・経済問題(国内)、世帯年収別)(2019年)

4マスへの信頼度は雑誌以外では、高世帯年収ほど信頼度が高くなる傾向がある。雑誌も一部で生じているイレギュラーを除いて見ればその傾向に合致する。他方インターネット系メディアはインターネットニュースサイトを除けば高世帯年収ほど信頼度が低くなる傾向がある(1000万円以上で大きく跳ねているが)。インターネットニュースサイトはインターネット経由だが、情報の大元が4マスであることから、同じような傾向を示しているのだろう。多分に高年齢層ほど高世帯年収であり、その連動性が数字となって表れていると考えられる。

いくつかの属性別に、国内の政治経済問題に係わる各情報源の信頼度の確認をしたが、おおよそ年齢階層で大きな差異が生じており、他の属性はそれに引きずられている感が強い。年齢階層別で大きな差が生じてしまうのは、それぞれの人生経験で、どの程度の期間にわたり、そのメディアと接していた、利用していたかが多分に影響しているのだろう。

例外的にインターネットニュースサイトで高齢層の値が高く出るのは、配信元が新聞社やテレビ局など、4マスが配信元であるからと考えれば道理は通る。要はツールとしてのメディアよりも、配信元そのものの信頼に大きなウェイトがあるわけだ。

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※令和元年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査

2020年1月14日から1月19日にかけて、全国125地点をランダムロケーションクォータサンプリング(調査地点を無作為に抽出、地点ごとにサンプル数を割り当て、該当地域で調査対象者を抽出する方法)によって抽出し、訪問留置調査方式により、13~69歳の1500サンプルを対象としたもの。アンケート調査と日記式調査を同時並行で実施し、後者は平日2日・休日1日で行われている。よってグラフの表記上は「10代」だが、厳密には13~19歳を意味する。

調査のタイミングにより一部調査結果においてイレギュラー的な動きが確認できるが、これについて報告書では「調査時期の違いによる影響や単年の一時的な傾向である可能性も否定できず、継続的な傾向の把握については今後の調査などの結果も踏まえる必要がある」と但し書きをしている。

今件項目では主要メディア、具体的にはテレビ、ラジオ、新聞、雑誌、そしてインターネットに関してはインターネットニュースサイト、ソーシャルメディア、動画配信・共有サイト、ブログ・その他サイトに細分化した上で、日本国内の政治や経済に関する情報源として、どの程度信頼できるかを「非常に信頼できる(3)」「ある程度信頼できる(2)」「あまり信頼できない(1)」「まったく信頼できない(0)」「そもそもその情報源を使わない、知らない」のいずれかから回答者自身の考えにもっとも近い選択肢を一つ、選んでもらっている。その上で、「そもそもその情報源を使わない、知らない」以外の回答に関して割り当てられた数字の平均を信頼度として算出している。全員が「非常に信頼できる」と答えれば3.00、「まったく信頼できない」なら0.00となり、値が大きいほど大きな信頼が寄せられていることになる。

一方この方法では「そもそもその情報源を使わない、知らない」の回答者は信頼度算出の際には除外されている。この回答者の中には「信頼がおけないので使っていない人」がいる可能性も否定できず、現実の信頼度は算出値よりもいくぶん低いと見た方が無難ではある。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

「グラフ化してみる」「さぐる」ジャーナブロガー 検証・解説者

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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